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恐山で生と死を考える

下北半島の恐山を訪ねました。恐山は比叡山・高野山とともに日本三大霊山のひとつとされていて、慈覚大師円仁によって開山された曹洞宗のお寺「菩提寺」があります。寺の創建は862年で、円仁は夢のお告げに導かれて諸国で教えを説く旅を続け、最後にこの恐山で地蔵菩薩を彫って「菩提寺」を開山したと伝えられています。地元では「人は死ねば恐山に行く」と言い伝えられているそうですが、現地に行くとその言葉の意味がよく分かります。

「三途の川」にかけられた太鼓橋を渡って霊場に入ると荒涼とした地獄のような風景が広がっています。その一方でカルデラ湖である「宇曽利湖」(「宇曽利山湖」ということもあります)周辺は穏やかで美しく、「極楽浜」に立つと極楽浄土ってこんなところなのかなと思わされます。亡くなった人を弔うために積み重ねた石や、子どものための風車があちこちでくるくる回っている風景にも、死後の世界に足を踏み入れたような気持にさせられます。

菩提寺の総門

総門の脇に立つ「来迎の像」

山門。奥にあるのが「地蔵殿」

本堂。とても古いです。


恐山は1万年以上前に噴火した休火山です。今も強い硫黄のにおいが立ち込め、あちこちでガスが噴き出しています。温泉も湧き出ています。

境内には共同浴場が4カ所あり、参拝者はだれでも無料で入浴できます。混浴や男女入替もあるので注意が必要です。
乳白色の硫黄泉ですが酸性の濃度が高いので顔を洗ったり、頭からかけたりしないように注意しなければなりません。特に目に入れるのは危険です。

男性用浴場

女性用浴場


宇曽利湖と極楽浜

今回は宿坊「吉祥閣」に宿泊しました。法話を聴いたり、朝のお勤めに参加したり貴重な体験ができました。館内は撮影が禁止されていたのでここでは外観と入り口付近の写真だけです。部屋にはテレビはなく、インターネットも通じませんが広々としたきれいな部屋で快適です。お風呂は大浴場でゆっくり入れます。

宿坊の入り口

玄関

納骨堂(?)のような靴箱

宿泊棟

食事の前後に箸袋の裏に書かれた「食前の偈(げ)」と「食後の偈」を唱和します。

法話は長い廊下を行った「地蔵殿」で行われました。院代(住職代理)の南直哉さんが1時間お話されました。有意義なお話でした。翌朝のお勤めは地蔵堂と本堂の2カ所で行われました。興味深い体験でした。

夜の境内

水子を供養する風車はあちこちにあります。子を亡くした家族の哀しさが伝わってきて胸が絞めつけられるような思いがします。

恐山は「イタコ」でも有名です。「イタコ」とは死者の霊を呼ぶ巫女のこと7月に行われる例大祭には亡くなった人との対話を望む人たちがたくさん集まるそうです。

私が恐山を訪れるのは今回が2度目です。前回は15年ほど前でした。自分が年を重ねたこともあるのだと思いますが、生と死について前回よりずっと深く考えさせられました。恐山を訪れた人の多くが「生まれ変わったような気持になる」と言っていますが、私もそれを実感しました。死を考えることは同時に生を考えることでもありのだと思いました。

ところで、今回は陸奥湾をフェリーで渡りました。津軽半島の蟹田から下北半島の脇野沢まで1時間の船旅です。初夏には運が良ければイルカの群れに出会うこともあるそうです。

蟹田のフェリーターミナル

下北半島の脇野沢が近づくと「鯛島」が見えました。無人島です。

なるほど鯛に見えます。

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