ブータンで殺生について考えました
ブータンを旅行中にガイドをしてくれた男性の体験談です。
男性がインドに出かけた際にヤギが殺される場面に遭遇しました。かわいそうに思った男性はヤギを買い求め、ブータンまで連れて来てそのまま野に放したそうです。
仏教には殺生を禁じる戒律があります。輪廻転生の思想 により、身近な人が亡くなったあとも他の生き物 に転生すると考えるからです。チベット仏教を信仰するブータン人も動物の殺生を嫌います。 ハチでさえ殺すことをためらう人がいるそうです。
ガイドの男性は仏教の戒律に従っでヤギを「助けて」持ち帰ったのです。連れ帰って野に放したのは「放生」という善行のためです。「放生」は捕らえた魚や鳥などを野生に返す行為のことで、慈悲の実践と考えられています。食用のために殺される動物を助けることが善行になるのか、国外から持ち込んだ動物を野に放すことは生態系の破壊に繋がらないのか私は疑問に思いました。
殺生はいけないとされていますがブータン人は肉や魚を食べます。旅行者である私は旅行中に肉料理を食べましたし、ブータンの人が肉を食べているのをたびたび目にしました。ブータンの料理に肉は欠かせません。特に蛋白源が少ない農村部では肉の入ったおかずはご馳走とされています。肉の販売が禁止される月もあるそうですが、食べるのは自由です。
殺生を嫌うブータン人が肉や魚を食べる。何だか矛盾しているように感じますが、肉は多くがインドから輸入されているそうです。さらにブータン人の中にも屠畜を専門に行う人がおり、牛やヤクの解体が行われています。要するに多くのブータン人は自分では殺生を行わないけれど他の人が殺した動物の肉は食べるのです。
自分が殺したわけではないのだから殺生には当たらないと考えるのでしょうか。何となく都合のよい考え方のようにも思えますが、ブータンの人たちのことをとやかく言うつもりはありません。私だって自分の手は汚さず、他の人が屠畜してくれたお肉を美味しくいただいているのですから。