人間・この劇的なるもの
福田恒存
自覚できる不幸や不満は、味わい、楽しむことができる。
自覚できない不幸や不満こそがその人にとって致命傷となりうる可能性を秘めている。
そしてその不満や不幸には本人は気づいていないのである。
人々は自由が欲しいと声をあげるが、真に欲しいものはなんなのか。
なんでもできる、なにをしてもよい。
これが欲しいわけではない。
必然性のうちに生きているという実感こそが人々にとっての生きがいになる。
自己表現と自分の内部が一致している時に、人は自己がそこにいる実感を得られるとも言える。
自己がそこに在らぬ人。
居るべきところに居る、内部と表現の一致、自己確認のために必要な観点。
理想主義者は理想と現実の乖離に対して、この乖離を埋めていく過程そのものに生きがいを感じている。
決してその理想を手にすることにではなく。
○読書記録