「君の軸足の置きどころはどこかね?」①
皆さんはどこですか?
この言葉は、私が教員を初めて2年目のときに、岩角先生(仮称)に言われた一生忘れない一言です。
子どもを思い通りに動かすことが、まるで「できる教員」のステータスのような、一種の様式美のような価値観が、学校の中にはあります。
駆け出しの私にも、そういう先生になりたいという気持ちが当時はありました。
一年生の担任をすることになり、ダメダメ教員だった私をなんとかするべく面倒を見てくださったのが岩角先生でした。岩角先生は、とても物腰が柔らかく、一年生の子ども達の成長を子どもの目線の高さで捉え、毎日学級通信を発行する方でした。
そんな岩角先生に憧れ、私も負けじと毎日学級通信を書き、岩角先生の真似をすることで自然と「子どもの目線の高さ」というものを会得できました。
そしてもう一つ、岩角先生と共に懸命に取り組んだのが、校内全体で取り組まれていた長縄跳びでした。日々記録が伸びていくことにが本当に楽しく、子ども達と喜びを分かち合いながら幸せな時間を過ごすことができていました。記録は、跳べた回数が更新される度に、校内の掲示板に書き込むことになっていました。クラスの子どもたちも、自分たちの頑張りがそこに表れているようで、「オレたちすげえ!」と言いながら誇らしそうでした。
そんな中で事件が起きました。
突然、その掲示板を外そうという話が出たのです。「一年生の子ども達が六年生の記録を超してしまったことが原因で、子ども達との関係が少しうまくいっていなかった六年生の1クラスが、更に荒れてしまうから掲示板を外す。」というのが理由でした。
私はびっくりして、思わず涙が溢れてしまいました。子ども達と共に作り上げてきたものを、突然奪われてしまうような気がしたからです。
しかし、校内の事情であれば協力しなければいけないなと、自分お気持ちに折り合いをつけようとしていた私に、岩角先生は「君の軸足の置きどころはどこかね?」と問いかけてきました。