『野村ノート』は仕事に役立つのか
『野村ノート』(野村克也著 小学館)は、元プロ野球監督の故野村克也さんの書かれた本で、野村さんの著作の中で恐らく最も有名な一冊ではないかと思います。
団体スポーツは組織社会の縮図とされ、プロ野球だけでなくサッカーやラグビーなどの人気団体スポーツの監督の本がしきりに読まれた時期がありました。
こういう本は、少年や学生などのアマチュア選手には贔屓のチームの内情を知る手がかりとして、企業の管理職や管理職予備軍の人達には組織運営の参考書として読まれていたと思います。
私も、プロ野球は好きな方なので、有名監督や頭脳派と評された選手の本を何冊も買い、読みました。
その読書経験から思うに、団体スポーツの指導者の指導方法は一般社会の組織運営に応用することは困難だと思います。
プロスポーツは、一般の仕事よりは芸能の仕事に近いように思います。故野村監督もテレビで「プロ野球ってのは人気商売だから・・・。」と言われていたとおり、プロスポーツの仕事も収入もファンに支えられています。
でも、一般の仕事はそうではありません。ここに、プロスポーツと一般の仕事との決定的な性質の違いがあるように思います。
経済用語を使うなら、プロ野球とJリーグなどは代替財です。代替財というのは、コーヒーと紅茶みたいな関係で、どちらかの消費量が増えると片方の消費量が減ります。だから、プロ野球とJリーグとでファンの奪い合いということが起こりえます。
しかし、一般の仕事では、例えば書店と鉄道とでお客を奪い合うというおとはありません。経済用語でいえば独立財です。独立財は、上記のコーヒーと紅茶の例でいうと砂糖に当たります。コーヒーの消費量が増えても(このとき紅茶の消費量は減るはずです。)、紅茶の消費量が増えても(このときコーヒーの消費量は減るはずです。)、砂糖の消費量は変わらないでしょう。
ただ、書店間での顧客奪い合いとか、鉄道会社とバス会社とで利用者の奪い合いは起こりえますが、それら人気ではなく品揃えとか利便性や経済性によって決まって来るでしょう。
結局、『野村ノート』のような本は、野球好きが(そうでない人も)プロ野球の見聞を得るために、楽しく読むべき本なのだと思います。
実際「日本シリーズ9連覇した川上監督も、オーナーとの確執に苦労されたんだなぁ。」とか「かつては『海軍出身だから平和憲法下の日本には合わない管理野球を選手に押し付けている。』などと言われのない批判を浴びていた広岡達朗さんですが、元選手の本を読むと実際はそういうことじゃなかったんだなぁ。」ということを各々の選手の御本を通じて知ることはプロ野球ファンとして楽しいことです。
そこには、WBC優勝とはまた違った楽しさがあります。
日本の野球が世界的であることを改めて証明したWBC優勝。
日本国内で纏(まと)わり付いて来るオーナーやメディアをほどよく扱い、高成績を残すべく葛藤した記録。
どちらも、プロスポーツの醍醐味の一つなんだと思います。
以上
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