よくある質問、 FAQ、 想定問答集 ・・・・・
最近、企業の製品でもサービスでも、問い合わせをコールセンター対応にするところが多い。行政サービスを担う役所もその方向にある。
「わからないことは、ホームページで調べるか、コールセンターへお問い合わせください」という案内に従って、わからないことを聞こうとして・・・わかったと思えることは、実は少ない。
さらに、質問できるようになるまでに、関門が待っている。
先ず、ホームページにアクセスすると、「よくある質問」とか、外国企業では「FAQ (Frequently Asked Questionsの略語)」とかいうところに誘導される。
電気製品などでは、説明書を読んでも、そもそも説明が割愛されているか、不親切なので聞いているのに、「よくある質問」には、出てこないことが多い。
質問が載っていないので、コールセンターに電話すると、多くの場合、なかなか繋がらない。曰く、「ただいま電話が大変混み合っております。このままお待ちいただくか、後ほどお掛け直しください」の自動音声返答。
やっと繋がったと思うと、次の難関が待っている。質問の種類を列挙され、該当する番号を押すように求められる。中には種類が9番まであることもあり、どの質問が何番だったか、最初から聞き直してメモするしかない。さらに、途中で製品のシリアル番号や顧客番号など、手元に置いておかないと入力できない番号列の入力を求められることもある。
やっとオペレーターに繋がるのかと待っていると、「ただいま電話が大変混み合っております・・・」で振り出しに戻ることもある。それでもオペレーターに繋がって質問ができれば幸運な方で、中には、「その件は、別の電話になります。番号をお教えしますので、そちらにお掛け直しお願いします」ということもままある。
曲者は、「よくある質問」だろう。何回読み直しても、普通の消費者が聞くであろう質問とは無関係に作られたのでは無いかと疑われるものがある。その多くは、商品の「売り」を強調するための質問や、質問する人がいないだろうというような質問を並べる例が多く、別に聞く必要もない問答が載っている。
最近購入した商品は、ある有名なメーカー製だが、「よくある質問」は5つしかなく、「どうだ参ったか?我が社の自信作に質問するような奴はいないんだぞ」と言われたようだった。
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実は私は、企業の側で想定問答を作る、広報の仕事をしていたことがある。
記者やアナリスト向けに作成する想定問答集は、いわばマスター版だ。想定質問はできるだけ幅広く、深く取り入れ、答えは真摯に、且つ簡潔明瞭にする。どんな質問をどれだけ想定できるかは、実は大変重要なことで、企業であれば、その目や耳がどれだけ社会に向いているかを測る試金石とも言える。的中率=精度が高いほど、企業姿勢が伝わり、想定問答集としての実効性が上がる。
一方、消費者の関心は、実用的・即物的な疑問が中心なので、想定問答集をベースにしながらも、別にもっと分かりやすい「よくある質問」を作る。
その出来不出来には、広報としての力量や見識が問われると思っている。
但し、企業の部門ゆえに、いろいろな余波や抵抗もある。一番多いのは、多分、企業にとってあまり聞いてほしくない質問を「想定」することで、作成者である担当者が、まるでその企業に批判的であるかのように思われること。さらには、記者にそういう質問をするようにけしかけているのでは無いかと、あらぬ疑いをかけられることもある。
記者と親密な信頼関係を築き、まじめな想定問答集を作ったがために、信頼関係の薄かった上司に睨まれ、危うく命取りになりそうになった話を聞いたこともある。「『良い想定問答集』とは、お偉方が聞いてほしくない想定質問が載っていない=想定しない問答集だ」というのが教訓とのこと。
想定質問集は、多くの場合、法務担当者に見せて大きな問題のありそうなところは修正するが、最後は企業トップとだけ擦り合わせた。担当役員なんかに回すと、質問自体が削られてくることがあったからだ。そんな質問は、想定しないということだろう。でも、「そんな質問」は必ず出た。
最近目にする「よくある質問」も、どうも、「聞いてほしい質問」が多いように思う。内向きの質問だ。中には、この会社の人は、自分の会社の製品を使ったことがあるのだろうかと疑いたくなるものもある。
消費者に接するコールセンターや「よくある質問」の回答で、ChatGTPなど生成AIの活用がこれまで以上に進むだろう。その機会に、もっと消費者目線に沿った仕立てに改善する余地は大いにあると思う。
(了)
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