月木人余論

長かった職業人生を、コロナの頃に卒業。親の介護が、昨日終わった。これまでの人生と職業経験から学んだこと、考えたことを中心に、何か役に立つことがあれば幸いと、記事を書くことにしました。海外の元部下から贈られた達筆の書画「徳必有隣」(徳があれば必ず理解者が現れる)が信条です。

月木人余論

長かった職業人生を、コロナの頃に卒業。親の介護が、昨日終わった。これまでの人生と職業経験から学んだこと、考えたことを中心に、何か役に立つことがあれば幸いと、記事を書くことにしました。海外の元部下から贈られた達筆の書画「徳必有隣」(徳があれば必ず理解者が現れる)が信条です。

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バナナが背負う荷

バナナは、話題の多い果物だ。  エンジェルスの大谷選手が、試合の中盤に、ベンチで一本のバナナの皮を剥いて頬張る場面がしばしば放映される。4枚の皮を途中まで丁寧に剥いて3口くらいで食べ、決して皮を床には捨てない。キャンデーの包み紙や紙コップを平気で床に捨てる選手が多い(大谷選手が時々「掃除」している姿も映る)なか、正しい作法です。  「バナナの叩き売り」は、昭和の時代を生きた人の記憶に残っているだろう。 叩き売りの発祥地は北九州の門司港で、1906年、初めてバナナ(台湾産)

    • きちんと「選択」しないと、道を誤る(2)

       今年の選挙ではないが、ドイツ、フランス、イタリアを取り上げる。共通項は、連立政権、右派政党の躍進だ。また、アルゼンチンを追加した。 ドイツ  シュルツ首相率いる連立政権は、2024年11月6日、実質的に崩壊し、2025年3月、任期満了を待たずに連邦議会総選挙が行われることになった。首相率いる中道左派「社会民主党(SPD)」、環境政党「緑の党」、リベラル政党「自由民主党(FDP)」の連立政権は2021年年から政権の座にあった。山積する問題に、有効な手立てを打てなかった。最

      • ちゃんと「選択」しないと、道を誤る(1) 

         昨2023年12月31日、米国のテレビ局CNNは、「世界は心の準備を。2024年が衝撃の選挙イヤーになる可能性」*というオピニオン記事をホームページに掲載した。ニューヨーク・タイムズやCBSニュースの特派員として、主に欧州とアジアで活動したジャーナリストのデービッド・A・アンデルマン氏(David A. Andelman、1944~)が寄稿した記事だ。*米国では同年12月18日付け、原題"Brace yourself. The elections of 2024 could

        • 思い出の日高本線

           2010年8月、北海道苫小牧から様似までの146.5キロを結ぶ、日高本線全線に乗った。太平洋と日高山脈の間に広がる細長い大地を、長い海岸線に沿ってひた走る。  景色が良く、「北海道らしさ」を存分に味わえる名勝地の一つだ。  途中には、静内や浦河など、日本を代表するサラブレッドの牧場が広がる。昆布の名産地で、シーズンには海岸が一面昆布で埋まる。終点様似は、襟裳岬ヘ連絡バスが走る。かつては、岬を回り込んで十勝へ抜ける、北海道周遊旅行の代表的コースの一つだった。  2015

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        バナナが背負う荷

          耳をすませば、目をとじれば ・・・ 

           NHKの「耳をすませば」は、年末の3日間、その年に亡くなった6人を取り上げ、それぞれの生き方や次代に向けたメッセージに耳を傾けると言う短編番組だ。姉妹版に「あの人に会いたい」と言う随時放送の番組があり、NHKが保存する膨大な映像・音声資料から、今は亡き著名人たちの人生と珠玉の名言を掘り起こす。見逃すことも多いが、放映日と私のテレビ視聴時間帯が合った時には見ている。  その生き方や言葉に共感を覚えた人物を偲ぶのが番組を見る第一の動機だが、じぶんが生きてきた時代の空気感を、改

          耳をすませば、目をとじれば ・・・ 

          「まっ、いっか」の先に待つのは ・・・ (2) 

           最近、「カスハラ」の報道が盛んに繰り返されている。特にテレビでは、「クレーマー」と称する人物の録音音声やぼかした映像など「カスハラの生々しい実例・実態」を繰り返し映し出すが、見たり聞いたりしているだけで、気分が悪くなる。 今どき、物申す「消費者」は、「カスハラ」予備軍なのかなあ?  「お客さまは神様です」と言ったのは演歌歌手の三波春夫だが、ひと頃までは、消費者を「お客さま」と呼びかえ、「神様」と持ち上げる経営者も結構いた。今や「物申す消費者」は、カスハラと見なされかねな

          「まっ、いっか」の先に待つのは ・・・ (2) 

          「まっ、いっか」の先に待つのは ・・・ (1)

           アームが動く電気スタンドを分解した。30年ほど前、子供の勉強机に取り付けるために買ったが、使わなくなり、不燃ゴミ袋に収めるための作業だ。  その造り込みの良さに驚いた。銅製ネジが25本、長さを長・中・短で使い分け、要所要所に薄い鉄板を挟んで締め付ける。部品と部品は隙間なくしっかり嵌る。電源コードは滑らかな塗装の鉄製円筒パイプの中に隠すように収納するが、太くて丈夫なものを使い、両端には蛇腹式のゴム製ストッパーがついていて、構造材にガタつきや抜けや緩みが出ないようになっている

          「まっ、いっか」の先に待つのは ・・・ (1)

          お墓を買った話

           この秋、お墓を買った。夫婦二人用で、お寺の境内の隅に併設された「樹木葬」の墓地である。  樹木葬とあるので、一本の木の下の草地に遺骨を撒くのかと思っていたら、細長い筒型の骨壷に遺骨を二柱分納め、名前を刻んだ円盤型の小さい石碑で蓋をするので、どこに埋骨されているか、一眼でわかるので、墓参りで迷わないそうだ。  この夏、市民霊園の樹木葬墓地の抽選に外れた。生存中の応募者の倍率は極めて高いので、民営は止むを得ずの選択だった。  市民霊園の方は、想像した樹木葬に近く、区画に集

          お墓を買った話

          電話は泣いているか?

           就職のために東京に出て、一番欲しかったものは、電話。大家が住んでいないアパートでは「呼び出し」ができず、近所のたばこ屋に置かれた赤電話に頼るしかなかった。急な連絡は、電報。電報は、ギョッとすることが多そうで、通常の連絡手段には向いていない。  相手も電話を持っていなかったら、どうやって、待ち合わせの連絡をしていたのだろう?会って別れる前に、次の約束の場所と日時を決める?そう言えば、駅には「伝言板」が掲げられ、「マー君、先に行ってる」とか、「一番亭で待ってる」とか伝言が残さ

          電話は泣いているか?

          地方都市の魅力〜長野

           9月の長野を訪れた。夏休みが終わり、紅葉の季節に入る前の、比較的空いている時期を選んだ。6月の盛岡に続く、二度目の地方都市の旅である。  温泉は魅力的だが、宿代が高く、豪華な夕食は要らない。ビジネスホテルに泊まり、夜は気軽な居酒屋で少量の酒食をとる。平日であれば、週末の2/3くらいの出費で済む。  さて、今回の長野。良かった点を挙げてみると・・・   ① 街並みが綺麗で落ち着いている   ② 道が広くて綺麗   ③ 「善光寺」という中心があり、周辺には古い街並みと家屋

          地方都市の魅力〜長野

          暑い夏、長編小説を読み終えて

           暑い夏がようやく出口に近づいてきた。前回投稿「苦行の読書」に顛末を書いたが、この暑さの中で、長編小説と悪戦苦闘した。3つ選んだ中でも、一番苦労したのがジェームス・ジョイスの「ユリシーズ」(丸谷才一他2名訳)。  何とか「読み終えた」が、果たしてこの小説の何を「理解」できたのかどうかは分からない。「理解」を難しくし、途中で投げ出したくなった3大箇所を記録しておく。作者(時に訳者)は、読者を苦しめるために書いたのか? 延々展開されるハムレット論(第2部・9「スキュレとカリブ

          暑い夏、長編小説を読み終えて

          難行の読書

           今年の夏は暑かった。冷房が嫌いなのだが、さすがに毎日毎夜、クーラーを点け放しにしないと凌げない日が続き、冷房の効いた部屋に閉じこもることになった。  そんな夏なので、長編小説を3冊読むことにした。選んだのは、ドフトエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」、トーマス・マンの「魔の山」、そしてジェームス・ジョイスの「ユリシーズ」。難解であることが条件で、相当厳選したつもりだ。  かなり物好きと自覚したが、いずれも高校生の時に「読んだはず」の小説でもある。高校生で、果たしてどこまで

          『臨時』の人 〜 ③完結篇

           運転手は、一番長く、4年に及んだ。 左を空けて走る  免許取立てなのに、社長付き運転手をやった。「君は随分左を空けて走るね?」と、書道教室チェーンの社長で70歳を超える老先生は、疑い深く聞いた。「大事なお車ですから」と答えたが、結構ヒヤヒヤで、仕事が終わるとぐったりした。  お昼は先生行きつけの老舗鰻屋で一番高い鰻重を一緒に食べていたが、日給より高くつく昼飯はまずいと思ったのか、途中から千円渡されて「若いから好きなものをお食べ」に変更された。当時でも高かったあのクラス

          『臨時』の人 〜 ③完結篇

          『臨時』の人 〜 ②

           家庭教師は、拘束時間の割に収入が良く、多少知的な香りもあって人気だった。私の一件目の家庭教師はそうだった。勉強があんまり好きで無いような女子中学生で、隙を見せると、男子中学生の話や悩みごとに脱線するので、団地の隣室に控える母親の耳に配慮して、英単語や数式を、わざと大きい声で復唱させた。  2件目は相当変わっていた。逃げ出した高彩色の熱帯鳥が渓谷を飛び回ることで有名な、都内高級住宅街のマンションに住む一人っ子の少年は、喘息気味で顔が青白く、いつも吸入スプレーを携帯して、苦し

          『臨時』の人 〜 ②

          『臨時』の人 〜 ①

           作家の野坂昭如(1930~2015)が、庭先の水栓に繋いだホースで子犬を洗う場面が映し出される。随分昔のアルバイト情報誌のテレビコマーシャルで、世の中にはさまざまな仕事があることを訴えていた。  「生き物(元を含む)を洗う仕事」と言うと、高校生の頃、「ベトナム戦争で倒れ、基地に輸送されて来る米兵の遺体を、棺に納めて母国の両親に返す前に洗う」アルバイトと言うのが密かに噂になった。大江健三郎((1935~2023)の小説にも出てきたように記憶する「伝説のバイト」の一つで、その

          『臨時』の人 〜 ①

          北東北温泉紀行 〜 岩手、秋田、青森

          《通過または訪問した地域の多くが集中豪雨に襲われました。甚大な被害が出なかったことを祈りながら、投稿をしばらく控えていました。是非再訪したい地域です。復旧と復興を願いつつ、ご紹介します。》 北東北の名湯  新緑の頃、岩手花巻温泉奥の大沢温泉、岩手山中腹の網張温泉、秋田乳頭温泉郷の突き当たりの蟹場温泉、八幡平の後生掛け温泉、日本海を望む不老ふ死温泉と、岩手・秋田・青森の北東北の5つの温泉を旅した。其々に特徴があり、いずれも、もう一度訪れたい名湯揃いだ。  大沢温泉は、30

          北東北温泉紀行 〜 岩手、秋田、青森