仕事と育児 比べる意味はあるのか
よく天秤にかけられる二つのワード、仕事と育児。どちらも大変だよ、と言いつつ、「やっぱり育児の方が」とか「いやいや仕事だってね・・・」と結論は出ない。ただこの二つを話に挙げる人は、少なくとも両方の経験者だ。そして様々な観点から仕事と育児の苦労を語る。
私は陰キャな性格だからこの両方の経験者として、って前提の話がまず気に入らない。仕事と育児の経験者はとにかく何かを言いたい語りたい。オブラートに包まず言えば、上から目線。失礼な話だけど、男も女も子どもがいない人にとっては「へぇ」くらいのことじゃない?私はそうだったから。その人たちに向かって「仕事の方が絶対楽だよ~」って、平気な顔して言う人がいる。いや、そういう人たちで実際溢れてるからげんなりする。子どもを持つまではあなたが、その楽だよ~ってことを毎日やってたわけですがね。
仕事とはまた全然違った大変さで!とか、もう一度やれって言われても無理です!みたいな発言を見ると、そりゃ育児ってそういうもんやしなという感想が湧いてくる。仕事ってよっぽど世界を飛び回るクリエイター職などでもない限り、ある程度繰り返しや似たような業務が多いと思う。子どもを相手にしていたら一分一秒先がどうなるか不明で、どんなに先回りしても計画がポシャることなんてザラ。でもその時間で賃金が発生しているわけではないから、気楽でいられることもある。仕事だったらそうはいかない。ミスした分の挽回を求められることもあるし、同僚に迷惑を掛けたらやっぱり気まずい。
大変と感じるか感じないかは人それぞれなので、と言ったらこの話はおしまいになってしまうのだけど、だったら全然ベクトルの違う話をいちいち比べなくていいのではないかな。ただ現在、私が子育てしている側の気持ちとしては
ただこの大変さを誰かに伝えたい
だけどその大変さって、まぁ言葉にするのが難しい。難しいから私は身内以外気軽に話さないんだけど、ついつい身近なものと比較しちゃうんだろうね。その一つが仕事なんだと思う。そして圧倒的に仕事の方が楽だという人の多いこと。
ただここで面白いのが、女性はいくら仕事の方が楽と言っても叩かれないが、男性が言うとものすごい非難を食らう。某相談サイトでそのような投稿がされていて、もうそれはそれは蜂の巣状態だった。それで育児している気になるな!というものから、奥さまが気の毒ですなどなど。世の中にイクメンという言葉こそ浸透してきたが、そのこと自体がある意味で日本の家族の在り方を強く映し出している。育児でイクウーメンもイクメンもないのに、言葉でくくらなきゃいけないほど「レアな存在」。イクメンだと偉いねと言われて、イクウーメンは当然だろの世界。平和じゃないね。
世の中上手に役割分担している家庭もあるとは思うけど、やっぱり女性が担いがちな育児。言葉もまだ喋らない幼児を観察したり、時には構ってみたり、抱っこしたりの日々は閉ざされた世界になりがち。周りが見えなくなって「仕事の方が楽だった」。ついポツリと呟いてしまう気持ちは分からなくもないが、それは心の中にとどめて欲しいかな。
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こう思うのには理由がある。私が里帰り出産で実家へ帰っていた頃、たまたま小・中学の同級生(女性、以下Aとする)に散歩していたら会った。Aはミュージカルで役者をしており、様々な舞台で歌ったり踊ったりしている。今ももちろん現役だ。素直にすごいと思って、同時に尊敬もした。小さい頃は違う教室だったが同じバレエを習っている友人の一人で、夢を追いかけ続けて役者になった。
仕事一筋な彼女の前で、私は育児が大変で・・・という話を、まずしようとも思わなかった。お互いの親もたまたまその場に居合わせて、Aの母は「未だに独り身でねぇ」と心配そうな顔をしているところ、私は食い気味に「いや全然いいじゃないですか!夢を追い続けるってすごいことですよ!」と言った。心の底から出た言葉だった。照れ笑いするAは、少し誇らしげだった。そうだ、胸を張っていい。結婚や出産など、本人だって悩んでいないわけじゃないだろう。でもAは今全力で仕事をしている。それは素晴らしいことだし、後ろめたさなんて何も感じる必要はない。
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ライフステージはみんな変化していく。特に30~40代は転換期の人も多い。大切なヒト、コト、モノ・・・他人からは計り知れないものだ。だからこそ気軽に「どちらの方が」と決めつけて欲しくはない。寄り添うまではいかなくていいから、相手の立場を想像して発言することは大切だと常々思う。