砂の岬から見えるインド料理の海は絶景でした(砂の岬)
こんにちは!大好きな印度亜大陸料理&カレー屋のお店紹介。今回は 桜新町の「砂の岬」です!カレーはもちろん、デザートにパン(因みにナンやチャパティではないですよ)まで美味しくて、更にお店の内装やメニューのビジュアルデザインまで隅々に美意識が詰まっていて、全てが美しいお店なんです!!!!(ヲタク特有の早口になっています)
ここでくどくど言っても仕方ないので、お店紹介します!
桜新町っていいとこですよね。世田谷だけど、そんなに高級住宅!って感じもなく、三茶とか下北みたいな雑多さもなく、商店街とかも適度にあって。美味しいバームクーヘンのお店やハム屋さんもあります。天才ポップミュージシャンCorneliusが住んでいる街でもあります
artisticな内装と外観
さぁ、そんな丁度イイカンジの街(超主観)にある、大好きなインド料理屋「砂の岬」はこちら
おぉ、なんかもっさり…
と思ったそこのあなた!これは所謂、「古着屋や喫茶店で見る髭もじゃだけどお洒落な人」というヤツです。植物もどれも手入れしてあります。無精髭でだらしのないヤツとは大違いですからね!
持ち帰り専用の窓口の文字を見てください。take outではなく、take away。聞き慣れない熟語だと思いますが、インドでは「持ち帰り」と言う時はtake awayというのが一般的なのです。日本人への分かりやすさではなく、インドの言語感覚を大事にする。お店のこだわりがこんな些細なところからも伝わってきます。
内装
こちらが砂の岬の店内!どうでしょう…?雑多なのにめっちゃお洒落じゃないですか?なんと言うか、ジャン・リュック・ゴダールやアキ・カウリスマキの映画の中にいる気分になります。
何気ない小物まで全て素敵…すごい…。
因みに二階席はもっとすごいんです…。
ちょっと急な階段を登っていくとそこには…
うっ…
美しすぎるやろ〜〜〜!!(惚れてまうやろ的な)
どこ?!ここは。本当に桜新町ですか…
深みのあるターコイズブルー、ベリー色のカーペット、宙に吊るされたドライフラワー。
なんだろう…どんな高級店よりも洒落た雑貨屋よりも美しいと思ってしまう。まるで絵画の世界の中に入ったような…なんで描いても陳腐になってしまいます。
いや、こんなに内装の写真をバシバシ撮ってしまう(そしてそのどれもが絵になる)飲食店は他にありません。好きすぎる空間。インド料理を提供してなくても好きなお店になりそう…しかし、「好きなお店」ではなく、「大好きなお店」なのは、もちろん料理が素晴らしいから。正直。内装は凝ってるけど料理があんまりな店って多いじゃないですか?(悪意)
でも、砂の岬は違います。なんなら、この内装を凌駕するような料理がたくさんあります!
さぁ、砂の岬からインド料理の海を見渡してみましょう
洗練さと素朴さを兼ね揃えた料理
砂の岬の料理は、西インド〜南インドを軸に置きつつ、ご主人がインドを巡る中で出会った思い出の料理を再現したものになっています。
それも、高級レストランやモダンインディアン(現代的に再構築されたインド料理)でなく、町で愛されている食堂や、家族で食卓を囲むときにできてくるような料理だったりします。そのようなローカル色を残しながらも、随所にシェフの腕が鳴るような巧みさがあるのが、この料理の凄みです。
では、早速(やっと)料理を紹介します!
ランチセットの構成
メインのカレー一種(マトンキーマ、チキンキーマ、サンバルから選ぶ)に、そこに副菜2品(アチャール等、ダール)、バスマティライスというのが1番シンプルな構成です。
オプションで追加カレー(選ばなかったカレー又は限定メニュー)やアイテムも追加できます。
写真は、マトンキーマをメインにして、カリフラワーのアチャールとダール、オプションでチキンマサラとフィッシュアチャール(激ウマ)をつけています。
代表作である2種のキーマ
様々なカレーがありますが、砂の岬の代表作であり、お店のシグネチャーを最も端的に表しているのが、マトンキーマです。
インド西岸の都市ムンバイのスタイルを踏襲しているキーマカレー。濃厚な肉の旨味とトマトの旨味をシンプルなスパイス使いで引き立てます。バスマティライスが止まらない味です。また、これをパイ生地で包んだパンもお店の代表作ですね。
それと対をなすのがチキンキーマ
ミントやグリーンチリの爽やかな香りを軸にした味わい。チキンはプリッと弾力があります。副菜の皿にのっている生玉葱やレモンをかけて食べるのがおすすめです。
濃厚で原理主義的なマトンキーマに対して、爽やかで独創性のあるチキンキーマ。この綺麗な対比の関係も良いんですよね。どちらも砂の岬のシグネチャーです。
サンバル
二つのキーマが看板と言いましたが、もう一つの定番・サンバルもかなりの美味さです。トロミのあるスープで、レンズ豆の風味と野菜の甘み、それを引き立てるマスタードシード使いが巧みです。インドのスーパーフードであるドラムスティック(オクラのような野菜)もドーンと入ってます。南インド好きなら絶対刺さるはず!
主役に劣らない副菜
カレーには2種の副菜がつきます。副菜とは言いながら、こちらも素晴らしいクオリティなんです。
ダールフライ
なんの変哲もない豆カレー…のように見えますが、これが凄いのです。ふんわりと淡い豆の甘みのあとに玉ねぎの旨味が時間差で広がり、ターメリックなどの風味が駆け抜けていく。シンプルなのに風味や味が口の中で変化していくのです。いや、凄い。個人的に日本で食べられるダールの中でも五本指に入る美味さです。
季節のアチャール
季節によって変わるアチャールも美味しいです。酸味は比較的まろやかで、野菜の味わいを引き立たせる方向です。野菜に合わせたスパイス使いなので、そのときによって全然印象が変わります。 私が特に印象に残ったのが、トマトのアチャール=タカリバンチャ。ふくよかなスパイスオイルの風味とクミンの香ばしさがトマトのフルーティな甘みを引き立てます。
フィッシュピクルス(オプション)
副菜の中でも特に好きなのがこのフィッシュピクルス。魚をスパイスやオイルでマリネして酸味をつけたもの。魚はサワラでした。フレッシュな酸味とニンニクが魚の味をどんどん引き出す。噛めば噛むほど口の中で広がる旨味が堪りません…
限定メニューでたまにしかありませんが、お店の名物の一つなので、あればマストでオーダーしましょう!
ローカルな味わいを再現した期間限定カレー
私が砂の岬通ってしまう最大の理由は、約1か月周期で変わる限定カレーを食べるためです。
インドのローカルすぎるマニアックな料理が楽しめます。ある意味、砂の岬の真骨頂かもしれません。
今回は限定カレーの中でも特に衝撃を受けた3皿を紹介します!!
カレーリーフチキン
夏のスペシャリティ!砂の岬の夏と言ったらカレーリーフです。
カレーリーフって、名前の割にはカレーのスパイスの中でも脇役というか、テンパリングしたものがちょこんとのってるイメージ。あくまで香りのフックのひとつというような感じ。
しかしこのカレーは見た目からもわかるように、(カレーリーフ特有の)ほろ苦く、爽やかな香りをチキンの旨みと共に口いっぱい楽しめる逸品!
玉葱やチキンの旨みが来た後にカレーリーフのアロマティックな香りがブワッと広がり、ほろ苦さが来て、最後には辛さがじんわり来る。香りや味のグラデーションを楽しめます。
ドラムスティックフィッシュ
公式Instagramによると、「チェンナイからティルチラッパリに向かうハイウェイ沿いのドライブインで何気なく出会い興奮して食べた思い出。」
…いや、ニッチすぎる!!
インドのドライブインの味を再現しようとしているお店はたぶんここだけです。
そして、この魚カレーがめちゃくちゃ美味い。ドラムスティックってサンバルとかベジアイテムに入ってるイメージだったが魚と相性が良いんですね。すごく風味というか、出汁感を感じます。サヤエンドウとかオクラみたいな風味で、酸味もしっかり効いたグレイビーがあと引きます。
セーラムピッチュポッタチキン
タミル州の西部で食べられているチキン料理。一度茹でたチキンを手で裂いて、それをスパイスやグレイビーと合わせた料理。
手で裂いたというチキンのふわふわした不思議な弾力。ちょっとイカっぽいかも?噛めば噛むほどに強めに効いたブラックペッパーのアロマティックな香りと辛さ、グリーンチリとカシチリの爽やかさとフルーティーな香り、カレーリーフの香ばしさなど、香りと風味のコンチェルト!!
インドのめちゃ美味な西洋パン
砂の岬のインドカレーとは違うもう一つの側面…それは超絶美味しいベーカリーでもあるということ。
…ん?どゆこと??
と思っている方に、先程内装の紹介に使った写真をお見せしましょう。
左を見てください!パンを焼くためのオーブンです。そう、ただのインテリアでなく、これでパンを焼いてるんです!
「でもインドのパンってナンやチャパティじゃないの?タンドールやタワで焼くんじゃないの?」
と思ったインド好きの方、いい質問ですね…
キーマの時にも書きましたが、この店のシグネチャーとなってるのが、インド西部にある都市ムンバイです。ムンバイでは、チャパティの他にも西洋パンを食べる文化が根強いです。
砂の岬では、カレーを作るスタッフとは別に、ベーカリー担当のスタッフがいて、ムンバイの街角で食べらようなパンが食べられるんです!
バンバタージャム
バンマスカという丸い西洋パンにジャムをたっぷり塗ったもの。生地にはドライフルーツが練り込まれている。可愛い見た目だが、かなり本格的な味。しっとりしていながら弾力があり、小麦の香りが実に豊か。
クリームロール
砂の岬で1番気に入ってるパン!薄いそうのパイ生地はサクッとしていて軽い。噛むとほんのりと甘みがあり、バターの香りがフワッと広がります。
中はカスタードクリームは定番のホワイトとピスタチオ&サフランの2種。
どちらもしっかり甘いのにすっと口の中で溶けて重みや怠さがない。特にサフランの甘い香りとピスタチオの香ばしさがある後者は堪りません…
今年の夏は限定で、マンゴー&レモンも登場しました(残念ながら今年はもう終わってしまいました)
マンゴーのこってりした甘みにレモンの爽やかな酸味が夏にぴったりでした!
今回紹介したバンマスカとクリームロールは甘い系ですが、マトンキーマを具材にしたキーマパヴ、ジャガイモとほうれん草が入ったアル・パラク・パティスなど、惣菜系のパンも揃っています。
カレーと一緒に食べるのはもちろん、パンをテイクアウェイして公園で食べたり、14:30〜16:30のカフェタイムでチャイやコーヒーと愉しむのもアリ!
魅惑のスイーツ
そしてそして、このお店はスイーツも美味しいんです!カレー、パン、スイーツ…三刀流です。オオタニさんもびっくり!!
ムッタイプティング
ムンバイ式のプリン!プルプルのプリンは卵感しっかりだけど甘みが抑えられていて、くどくない美味しさです。カラメルは甘みと苦味のバランスが絶妙で、プリンの上の方は塩味を感じます。しっかりスイーツなんだけど、大人も唸らせる味!
ココナッツチーズケーキ
チーズの濃厚な甘みとココナッツの爽やかな甘み、相反するような甘みを違和感なく堪能できます。透明なのはココナッツウォーターを使ったレモンのゼリーで、爽やかな酸味とココナッツの風味がをプラスされます。
ドライフルーツスクープ
インドの甘〜いミルクシャーベット。濃厚で滑らかな質感のアイスに、様々な種類のドライフルーツたっぷり混ざっています。オーガニックだから不自然な甘さもなくて、めっちゃ美味しいです!
ムンバイモーニング
ランチのカレーにパンにデザートなどなど、魅力がたくさんある砂の岬ですが、最後にどうしても紹介したいのが、ムンバイの朝ごはんが食べられるモーニングです!
どうでしょう、絶景でしょう?こんな至福の朝を迎えたいでしょう?
朝から砂の岬のカレーやパンを食べれるというだけで素敵なのですが、なんと朝はランチでは食べられない限定メニューが目白押しなのです。
もう、どれだけワクワクさせてくれるお店なんだ…
イラニチャイ&ムンバイパン
ムンバイの朝は濃厚なチャイから始まります。バタースコッチのような甘みのチャイで目が覚めます。続いてムンバイパン。シンプルですが、それ故に口腔内に広がる小麦とバターの香り。そしてパンにイラニチャイを少し浸すとこれまた美味い。小麦の香りの間を縫うように茶葉の香りがジワッと広がります。これだけでも十分満たされる…
チキンキーマ
ランチでも定番のチキンキーマですが、これがめちゃくちゃパンに合うのです!小麦の風味が強いからこそカレーの香りに負けないで受け止めてくれます。そして朝限定で目玉焼きがのってます!朝に食べる目玉焼きって本当に美味いですよね。半熟の黄身をキーマに混ぜるとムンバイ風親子丼に!?
マトン・サリ・ボティ
朝限定!
インドのポテトフライがのったマトンカレー。インド系ゾロアースター教(Queenのフレディマーキュリーもそうです)の料理です。
マトンの旨みと風味がガツンときて、その後にトマトや玉葱の甘み、ベイリーフなどの奥行きのある香りとチリの香りがそれを包み込みます。香り高くてスパイシーなのに辛すぎない、ら濃厚なのに朝からするする入る味です。マトンカレーの最高峰の一つであり、最強の朝カレーだと思います。
終わりに
如何でしたか?すごい情報量ですよね笑
これでも(コーヒーへのこだわり、メニューのグラフィックデザインなど)情報を絞って、6000字オーバー…読んでいただきありがとうございました。
お店の内装紹介の時に、「どこを切り取っても絵になる」と書きましたが、料理に関してもそうなんですよね。カレー、パン、スイーツ…様々な側面がごった煮のように混在してるのに、どこを切り取っても、「砂の岬」の味や佇まい。最高にかっこいいですよね。
それが実現できるのは、根底にあるコンセントのセンスとそれをスタッフがしっかり共有しているからなんでしょうね(自分はあまり気にするタイプではないですが、接客もとても丁寧です)。
このお店で食べる度に思い出すのが、Corneliusの音楽。桜新町に小山田圭吾が住んでいるというバイアスもありますが…
彼の音楽のスタイル、(とりわけ『ファンタズマ』というアルバムに顕著に表れていますが)ありとあらゆる音楽を吸収し、次々とアウトプットしていくのですが、決してカオスにならない。寧ろいつまでも揺られていたくなる音楽です。それはやはり、自分のアウトプットするものに対するシグネチャーのセンスと、その文化に対する愛着があるからなんです。砂の岬にもそれをヒシヒシと感じます。
(因みにCorneliusがユザーンさんの企画で砂の岬でカレーを食べる記事があるのでURLを貼っておきますね。https://u-zhaan.com/curry/vol04/ )
インド料理に対する愛着と、それをピックアップしてアウトプットするセンスと、表現するための確かな技術。インド料理マニアだけでなく、ものづくりや表現をすることが好きな人も是非訪れてください。目と鼻と口で愉しむ絶景が待っていますよ!