ソン・ウォンピョン 「他人の家」を読んで
休みの日に、天気がいいと、一日に何回も洗濯機をまわす。
家族からは、「ほんとうに洗濯が好きだね。」と言われるけれど、そんなことはない。
時間がある時に、普段できていないことをこなしているだけだ。
洗濯も掃除もできてなかったことを片付けられると自分の気持ちもなぜか落ち着く。別に大したことでなくてもいい。溜まったままの埃をきれいにするだけでも…
そんなわけで、今日はカーテンを洗う。合間にソン・ウォンピョンさんの「他人の家」を読んだ。
最初に本の装丁にとても惹かれた。
手にとってから、私の好きな「プリズム」を書いた人の作品だと気づいて、2回、うれしい気持ちになった。
8つの短編をあつめた作品。
ジャンルはいろいろあって、ミステリから、近未来SFまで。設定もいろいろだけれど、どの作品にも、人間心理が真正面から、描かれていて、時に、辛い気持ち、目を逸らしてしまいたくなる気持ちにもなってくる。
自分の中にも確かに存在しているものだから。
真正面から向き合うと、心が折れそうで、あるのは知っているけれど、気づかないようにしがちだから。
その中で、表題にもなっている「他人の家」は、どことなく、「三十の反撃」に出てくる主人公と重なったし、「箱の中の男」に出てくるあるシーンが「アーモンド」がオーバーラップしてきて、印象に残った。
(後で、知ったのだけれど、たしかに「箱の中の男」は、「アーモンド」の番外編でした。ブックカバーをかけていたので、気づかず。)
彼女の作品は、とても信頼できるという感じ。
とても正直だ。見たくない感情や、辛い現実も描いた上で、最後には少し希望がのぞいている。
文章は、軽やかなので、重たい気持ちになりながらも、読みやすいと思う。現実と、希望を描くバランスがいいのかもしれない。