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米のとぎ汁が還元水となる仕組み スクチャイDIY日記010 2024.11.16


<序>

米のとぎ汁には乳酸菌と酵母が含まれ、これまで実験してきた松ぼっくりや松葉やその他植物と同様に、やろうと思えばヨーグルトが作れる。
(吾輩はまだ米のとぎ汁ではヨーグルトは作っていないが理屈では出来るはずだ)

乳酸菌の発酵で乳酸が生産され、牛乳あるいは豆乳がph4.6程度(酸度として2%程度)の酸性になると乳成分が固化(プリン状化)してヨーグルトとなるのであった。

ところで米のとぎ汁をそのまま放置して(乳酸)発酵させた液は「還元水」(俗称「水素水」)として知られる。

酸化還元電位、還元性、酸化性、還元水などの説明は別記事(リンク)をご参照。

この記事では還元水ができる仕組みを乳酸発酵の反応式から考えてみる。

1.乳酸発酵の図式

乳酸菌による乳酸発酵の反応式は以下のとおり。

<乳酸発酵反応式>

ブドウ糖(グルコース)→(1)→ピルビン酸→(2)→乳酸

この反応で(2)の乳酸が生産されている状態では液は還元性を示す。

このことから乳酸発酵を行っている液は「還元水」と言えそうだ。

その仕組みを以下に述べる。

2.ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)

反応式を再掲するが、

ブドウ糖(グルコース)→(1)→ピルビン酸→(2)→乳酸

の反応では、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)と呼ばれる電子伝達物質が酸化還元反応(電子のやりとり)に関与している。

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は多くの菌類が持つ物質の分解/合成に使う酵素のような電子伝達系物質で、電子のやりとりにより酸化型と還元型の2種が存在し、
酸化型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドをNAD+
還元型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチドをNADH
と表記する。

3.酸化型/還元型とは?

「酸化型」とは自分が酸化した(電子/水素を奪われた)状態なので相手を酸化させようとする(相手から電子/水素を奪おうとする)状態である。言い換えれば酸化型は自分が還元したがっている状態でもある。

「還元型」とは自分が還元した(電子/水素をもらった)状態なので相手を還元させようとする(相手に電子/水素を与えようとする)状態である。言い換えれば還元型は自分が酸化したがっている状態でもある。

NAD+とNADHの最後の1文字「+」と「H」は水素と電子を表した簡易記号であるが、これは酸化と還元の理屈による。前回の記述を参照されたし

4.NAD+とNADH

(NAD+)と(NADH)の関係をを水素(H+)と電子(e-)を入れて式で表現すると、

(NAD+)+ (H+)+2(e-) ←酸化・還元→ (NADH)

である。

これを見ると

(NADH)から水素と電子をはぎ取られて酸化した形が(NAD+)
(NAD+)に水素と電子を付加して還元した形が(NADH)

であることがわかるだろう。

※注意
酸化反応/還元反応や酸化型/還元型という表現は、自分が酸化/還元する(した)状態の意味か、または反対に、相手を酸化/還元させる(させた)状態の意味かをその都度正確に把握しておく必要がある。文献の書き手によってその表現が逆の場合があるので誤解すると正反対の意味になって混乱してしまう。ここが酸化還元の話のややこしいところなので要注意だ。

なお、(H+)は電子をはぎ取られた水素原子、つまり陽子で、(e-)は電子だ。(noteでは上付き文字が打てないので見やすいようにカッコ書きした。カッコ内の+と-の記号は上付き)

5.酸化型と還元型の再確認

酸化還元の話はややこしいので、くどいようだが再度まとめる。

NADH(還元型)が酸化する(電子/水素を相手に与える)とNAD+(酸化型)になり、NAD+(酸化型)が還元する(電子/水素をもらう)とNADH(還元型)になる。

つまり、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は物質の分解/合成において酸化型/還元型で相手に電子を受ける/離す役割を行う。

6.乳酸発酵反応式

乳酸発酵反応式を再掲して説明する。

<乳酸発酵反応式>
ブドウ糖(グルコース)→(1)→ピルビン酸→(2)→乳酸

この式の(1)では、
NAD+(酸化型)がブドウ糖から水素を奪い(=酸化させ)ピルビン酸を生成する。NAD+(酸化型)は還元してNADH(還元型)となる。

また、(2)では、NADH(還元型)がピルビン酸に水素を与え(=還元させ)乳酸を生成する。NADH(還元型)は還元してNAD+(酸化型)にもどる。

すなわち、この式の(2)で乳酸を生成するときにNADH(還元型)が水素を与える方向に動くので乳酸が出来ていく過程の液は還元性(電子/水素が与えられる電位)を示す。

ちなみにこの時の酸化還元電位は理論上-0.32V(-320mV)のようだ。(出典:Wikipedia)

※乳酸発酵液が還元性であることは発酵学者間ではまことしやかに語られているようだが、実は吾輩にはその理由がまだ確実にわかっていないのだ。乳酸発酵の分子式から想像してその理由をここに述べたが、もしかすると乳酸自体が還元性なのかもしれない。もしそうだとすればヨーグルト自体も還元性ということになりそうだ。そのうち真実を突きとめてみたい。

7.まとめ

乳酸発酵している液は「還元水」(俗称「水素水」)と言えそうだ。

研究室でない一般家庭での身近な方法では、米のとぎ汁をそのまま放置するだけという容易な方法でその乳酸発酵「還元水」を作ることができる。

実際にその方法で「還元水」を作り、酸化還元電位計で計測しつつその利用法などを次回以降の記事で考察していきたい。

酸化還元電位、還元性、酸化性、還元水などの説明は別記事(リンク)をご参照。

(おわり)

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