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一般学科卒デザイナーから見たデザイナーとは

私の大学での専攻は経済です。
マクロ・ミクロ経済の違いが「でっかい経済」「小さい経済」ぐらいの知識しかない経済学部卒です。
シューズデザイナー歴は10年。
今や周囲は美大・芸大・服飾卒の人たちばかり。

学生時代は人の基礎を作るのには重要らしく、個性的な人達に囲まれてセンスを磨き続けた彼女たちが一般社会にでると、ちょこっと浮いてることが多い。
あなたに自覚はないと思うけど、こんなところが違うのですよ、と声をかけたくなる。
一般社会に馴染め、と語っている訳ではなく、違いが解ればほんの少しだけ楽になると思う。

クリエイティブ系卒〜3年目ぐらいで、デザイナーが少ない現場で悶々としている人に届いて欲しいな。

*商業デザイナーさんに向けてなので、アーティストやクリエイターさんはまた別枠。



1, おしゃれな人は標準ではない

自己表現の一番わかり易い形は服飾よね。
美大や芸大に遊びに行くと服装にこだわりのある人達がたくさん。さすが〜クリエイティブ系!と関心した思い出あります。
長年オシャレな人達に囲まれていると、標準がオシャレさんになるみたいです。

でも一般社会はベーシックなスタイルで、服飾はとりあえず浮かない・間違わない方向でセレクトする人が実は大半だったりする。



2, 自分が「かわいい」と思うもの=みんなの「かわいい」、ではない

「私がかわいいと思うから、これが売れると思う!」
カラーコンビネーションやプリントモノの尖った目を惹くデザインを押して、そんなのばかりじゃ売れないと説得する営業さんと戦っているデザイナーさんを何人か見た。
学生時代はセンスを磨けと言われたのに、社会にでるとセンスを潰されるなんて悲しい、と泣いていたデザイナーさんもいたなぁ。


センスのマグマは絶対に必要だけど、マグマはスパイス的かスポット的な味付けにしないと重たくなる。
美容師さんも学校では派手な髪型やメイクを習うらしいけど、街を歩いているとモヒカンはいない。いても目立つ。
椎名林檎さんが何かの番組で「私のマグマを聴いて!なんて誰も聴きたくないでしょ、そこは商業バランス考えてます」と語っていたけど、マグマのバランスが大事。でも難しいよね。



3, 商業的にはわかりやすいものがうける

玄人的な技工や奥深い意味よりもわかりやすいテーマや訴求が受けやすい。
アーティストではなくてデザイナーなので、人に伝えやすいもの、わかりやすいものが広がっていく。



4, やりたいことがみんなにあるわけではない

私の周囲の就職活動は「事務で、営業で探してる」そんな友達が8割でした。
業界もなんとなく、この先も大丈夫そうな会社かな?ぐらいの決め方。
安定してそうな公務員は大人気。
大分昔の話なので今は違ってきているかもしれないけれど、大学時代この職業に就きたい!と燃えていた人は私の周囲にはいなかった。

クリエイティブ卒の人達の間では「なにがやりたいの?」の会話がよく出てくるけど、やりたいことがある人は実はそんなに多くない。
希望していた仕事に就いたデザイナーさんは同じ熱量で周囲も仕事をしていると勘違いしがちだけど、実は低温仕事の人も多い。



5, イメージ力、基礎ができているから肉付けに説得力がある

と、落胆系ばかり書いてきてしまったけど、これらを上回る強みもあるよ。

学生時代にデッサンや基礎をみっちり数年打ち込んだ経験はやっぱり強い!
イラストレーターなら基礎の骨格や肉付けのデッサンがしっかりできているからこそ、応用も強い。
ピカソは崩した絵が有名だけど、彼の幼少期〜青年期のしっかりとした画があるからこそ、後年のあの画が描ける。
デッサンで鍛えられているからか、デザイン画の習得速度も早い。


たくさんのモノを作り続けた基礎経験が次に生きてくる。
デザイナーはそれまでどれだけモノを作ってきたか、の蓄積が重要。
自分の向き不向き、好きなテイスト、趣向、それを理解していないと商業デザイナーも難しい。
商業デザイナーでもマグマはやっぱり必要。
芯がないと商業デザイナーとしてブランドを任されても、テイストにブレがでてくる。
この芯を社会にでてから作ることもできるけれど、結構大変…。


アートの理解や世界観の構築ができる。
アーティストになるとアートの文脈が理解できるかどうかは、作品の完成以前に大切だと思う。
アートもだし、カリスマ性のある尖った作品を作るには、作品の世界観が大切。
世界観から作品を生み出すことこそ、社会にでてからは習得困難。

芸大卒の友人と自分のブランドについて話をした時、私は自分の強みとニーズと掛け合わせて語るところを、彼女は海の底の話から始めた…。
イメージから連想してオブジェを作り出すことは私にはできない。
世界観から始まるブランドには強い魅力があると思う。




と、色々書いてみました。
私自身は学生時代より「変わっている」と周囲に言われ続け、『普通』ってどんなんだろう?と観察してるような若者でした。
それがデザイナー職に就くと、周囲となんだか馴染む!
でも一般社会では「変わっている人」であるという自覚もあったので、『一般』目線から見たデザイナーに伝えたいことを綴ってみました。

私はサカナクションの山口さんのこのインタビューが好き。
自分の中にあるマイノリティーとマジョリティの通訳になれるような人になりたいです。


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