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最近良かったもの

①ひらりさ「それでも女をやっていく」
この本がここ数年読んだ書籍の中で断トツに素晴らしかった。あまりにも面白くて、届いた晩に一気に読んだ。

ひらりささんのことはTwitterでずっと見ていて、「すごい聡明で魅力的な文章を書かれるのに、『それ絶対Twitterに書かない方がいいですよ!!』ということをやたら書いちゃう方」という認識だった。そんな彼女が仕事や母や女友達との関係、そして女としての自意識について書いている。いずれも真摯な自己分析で、自分にとって相当しんどかったであろうことも淡々と書かれている。

わかりやすいイメージとしては私の敬愛する雨宮まみさんの「女子をこじらせて」や永田カビさんの「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」に近いかと思う。(どちらも大変な名著なので、未読の方はぜひ)

ただ、ひらりささんの本は前述の本とは読後感がかなり違う印象だ。『人生の切り売り』『曝け出してやった(曝け出してしまった)』みたいなものをあまり感じない。だから私は、ひらりささんの今回の本を読んだ後に清々しい気持ちになり、自分の生活をがんばろうと思えた。
その理由を私はうまく言語化できないのだが、恐らくはひらりささんが「自分の話をすること」を目指しているのではなく、「自分の話をすることで世界を変えること。女をやっていく他者に語りかけること」を目指していると、感じられたからではないだろうか。もちろん雨宮さん永田カビさんの本が、読み手がエンパワメントされる本でないことはないし、実際にたくさんの読者を救ったと思うのだが、ひらりささんの本の方が広い世界へ訴える目的で書いていた印象だった。だって、そうでなければ「あなたは、フェミニストですか?」と、ひらりささんは本文の最後に訊かないと思うし。

私の100倍良い出身校を履歴書に書けて、オタク界隈でも顔が広く、都会に住む彼女のことを、彼女より少し歳上で地味な医療従事職で、オタクとして華々しい記憶は超弱小カプで「神」と崇められたことくらいな地方在住の私は、多分ずっとちょっと妬ましかった。

でも、「それでも女をやっていく」はWEB連載の時からとても私にとって胸に響く内容で、ひらりささんの素敵さを完膚なきまでに認めざるを得なかった。

まだ私には私の物語を深く語る準備がない。このnoteにこれまで吐き出してきたことくらいが精一杯だ。
でもいつか、私もひらりささんのように話をしたいと思う。ひらりささんのこの本は、現在進行形でヤバい国のヤバい時代を生きているたくさんの女に響いたはずだ。
この本は絶対に、この国の女性を救う一助となり得る勇気ある発言だった。

この本を書いてくれて、本当にありがとう。
私もひらりささんと同じくらい真面目にフェミニズムに向き合おうと思います。

②フランツ・グランツ監督「対峙」
とある事件の被害者両親と加害者両親の対話の物語。

どんな展開になるのかがわからないからこわくて、上映開始と共に凄まじい緊張感に襲われた。
冒頭、対話の場を準備する女性の振る舞いからもうリアル過ぎて、ずっとドキドキしていた。

いざ、被害者両親と加害者両親が揃ってからはもう「その言動は控えた方が良いと思うけど、でもそうしちゃう気持ちはすごくわかる」の連続だった。
被害者側の気持ちも、加害者側の気持ちもわかる。生きていれば、そのどちらにもなり得るのだから、どちらの叫びも他人事ではない。
でも、私は基本的に「幼少期に人にとても酷いことをされたけど、がんばってその刻みつけられた傷を見ないようにして生きている」というスタンスの人間なので、物語の最終的な着地点が『被害者側が乗り越えることしか前を向いて生きていく術がない』(少なくとも私にはそう見えた)だったのが、ガッカリした。つまり、私も私に植えられた暗い過去をそういう風にすることでしか浄化されないと言われた気がしたのだ。それは真理だと思うけれど、納得はいかない。
被害に遭った時点で人間はもうやり直せない。取り返しがつかない。もう瑕疵のない幸福な人生とは縁がなくなるのだ。

それは置いておくことにして、ラストの一悶着(ネタバレになるから、こう書く)における被害者両親の気持ちの推測を、誰かと語り合いたい。
Twitterで誰かが『同情』と書いていた。私は被害者側の母にはそういう気持ちが起こったであろうことは否定しないが、大ラスの被害者側の父の表情は『後悔』『絶望』に見えた。

「一番重要な話をなんで今まで黙っていたんだ」
「それなら『赦し』など与えなかった」
「そんな人間が居るなんて、この世界を信用できない」

劇場で一度観ただけなので、2回目の鑑賞を果たしたら違う推測になるのかもしれない。
でも、語りたくなる良い映画だったことは間違いない。

③鈴木亮平・宮沢氷魚主演「エゴイスト」
多分、観たらすごく好きになる映画なような予感がしているんだけど、開始15分で気分が悪くなり、退席…。後日公式から画面酔いするとアナウンスが出ていると聞いて納得。再チャレンジに期待。

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