トミカ増えすぎ問題に所有者自身も困っていた
乗り物命の息子、にっとはもうすぐ四歳。
特に消防車両や警察車両等のサイレンカーには並々ならぬ熱を注いでおり、子供向けの本や映像で、
🚒 これは「しょうぼうしゃ」だよ
なんと言おうものなら、
「違うでしょ!? ぐるぐるのホースがついてるからポンプ車でしょ!?」
と異議申立てをする。おかんにはもうわからない領域のツッコミを入れることも多々……。
ちょっとしたごほうびはもちろん、たまーにわたしの両親、親戚と出かければ、トミカを買ってもらうことも多い。
この調子だから緊急車両を中心に、トミカがものすごく増えてきた。専用のおもちゃ箱をいくつか用意していても、常に満車、片付けても片付けてもどこかしらに何台か必ず転がっている。ナントカカントカ車がない! と探していたり、探すのを手伝うよう言われたり、その度に使わないおもちゃを一旦押入に引っ込めておもちゃの総数を減らしてきた。
トミカが収納できるトミカの立体パーキングとか、そういう類いのおもちゃがタカラトミーから発売されているのは知っている。が、もっとおもちゃの総数を減らさないことには、その立体パーキングの置き場すらない。
トミカ増えすぎ問題に困っているのは大人だけで、にっと本人はウハウハでサイレンやら工事やらの音を口で真似て、ハッスルが止まらず熱心に遊んでいる。
と、思ったが。
「ママ、あのさぁ、ちょっとトミカ多すぎない?」
土曜日の昼食にレトルトカレーを食べながら、大量の車の所有者が持ちかけてきた。
「ぼく家畜運搬車を探したいのに、全然探せれないんだよね。ちょっと多すぎると邪魔だしさぁ。さっきカニクレーン踏んじゃった」
そうだねぇ、と言いながら閃いた。
トミカは残しながら他の使わないおもちゃを減らすだけではなく、
「使わないトミカがあったらママが預かるよ」
使用頻度の低いものも押入で預かればよいのでは。
というわけで。
リビングのおもちゃ箱、床、寝室に持ち込んでいたものをとりあえず並べた。わたしの実家に置いてきたものもまだあるし、この片付けのあとにソファの下からも四台出てきた。どこに行ったのか、あるはずなのに出てこなかったものもいくつかある。チョロQやらなんやらトミカでないものもあるが、今回はいまあるだけを仕分けすることにした。
「この中で使うものはこっちに入れてね」
「使わないのはママの箱に入れてね」
と口出しはしないで自分で選んでもらった。
「これは使う、使う、使う、使う、使う、使う、使う……」
ひたすらひたすら使う使うで、見守り握るこぶしに汗をかく。結果、
使わない箱に入ったのはこの一台。
もともとおもちゃ箱から溢れ返っていたのだ、当然途中で壺がパンパンになった。
「あー! この子たち入らない!」
しかも壺に行きそびれたのは数種類の救急車。絶対に手放したくないだろう。
「もう一回、ママと壺の中を見てみようか」
パンパンの壺をひっくり返す。
「この中で使わない車はある?」
改めて愛車と向き合うと、
「これは赤ちゃんみたいだからいらない。こっちはいる。これは……もういいかな」
冷静に選別できていた。これを四つの壺全部で繰り返した。いらないとしたものはアンパンマンのものだったり、外食時のお子様セットのおまけだったりするものがほとんどだった。
こうして最終的に、押入預かりとなった数は二十二台。
見事すべてのトミカが壺に収まった。
はーすっきりした! とにっとは伸びをする。やりきったような、さわやかな笑顔だった。自分で選んだお気に入りたちが入った壺を、自ら収納スペースに戻している。乗り物以外のおもちゃ箱まで漁り出し、いくつか持ってきて「これももう赤ちゃんのときからのだからいらないかな」と押入行きを申し出た。納得いく片付けができたから、もっともっとと意欲がわいたらしい。中には一昨日まで抱えて保育園に向かっていたぬいぐるみもある。これを片付けてしまって本当に大丈夫か? いやはや卒業しようと大人の階段をのぼっているのか? すごーく悩んだ。
「ぬいぐるみは一緒に寝たりとかしてたじゃん。とりあえず今日は出しとこう」
明日のにっとにまた尋ねてみることとした。
クリスマスも近い。サンタさんに頼むプレゼント候補には、例の立体パーキングも名を連ねていた。たぶん本当にほしいのは犬のお助け隊アニメ「パウパトロール」のなんやらかんやらなのだけど、いかんせんアニメを見ているとさまざまなおもちゃのコマーシャルが流れる。目につくすべてが全力でほしくなる。まだ立体パーキングと決定できず、サンタ役の両親は迂闊に用意ができない。けどせっかくトミカ整理に目覚めたのだ、立体パーキングでいいかな。いいよね。いいって言ってくれますように……。どうなるクリスマス。