「進撃の巨人」を読んだ
ネタバレを含む記事です。
今更ながら「進撃の巨人」の漫画を読んだ。
率直な感想としては、なんだかあんまりよくわからなかった。
何年か前にさかのぼる。実家に泊まりに行くと、妹も泊まりにきていた。
「アメトーーク録画したんだけど、一緒に見る?」
誘われ見た回が「進撃の巨人芸人」。そのうち手を出そうと思っての、今にようやく至る。
誰しもが口にする言葉「この世界は残酷だ」。
巨人さえ駆逐してしまえば、人間は食べられなくて済む。戦う必要がなくなる。でも力の差がありすぎる。巨人の生態系は不明、通用する武器もない、身を守るために人間は壁で街を囲い、壁の中で暮らしている。
壁の外に行かなければ、安全に暮らせるのか。暮らせていたが、巨人に壁が破られてしまう。外の世界に気を向けることはタブーとされていて、外に関する情報はない。
自由のなさと、目の前で母を食べられたことから、主人公のエレンは巨人を誰より強く憎み、駆逐するべく調査兵団に入り……安全に壁の中で暮らしたい同級生もなんやかんや影響を受けて外を目指し……なんとも少年漫画らしいパワーがありながら、ライナーやベルトルト、アニ、クリスタの生い立ちよ。置かれた立場よ。あまりに残酷じゃないか。なにがどうなれば救われるんだ。
物語が進むにつれて、壁の外からきたという者も増える。人間の男性に近い体つきの巨人は裸なのだが、なんだあのさるは? 毛むくじゃらの巨人が現れる。しかも強く賢く、しゃべる。しかしまあさるの正体よ。生い立ちよ。痛ましくて悲しくてつらい。残酷にもほどがある。
巨人の正体は人間だと判明。命懸けで戦ってきた相手は人間だった。しかも壁の外には海が広がる。エレンたちが住んでいたのは島国だったのだ。
ずっと外の世界に憧れていた。じゃあ行こうか、ってなるやん?
外の世界は、壁の内側を強く忌み嫌っていた。
先祖が外の世界で巨人の力を使い戦争や民族浄化をしてきたから、王が一部の民を連れて島に引っ込み、壁の内側へ引きこもったらしい。エレンたちは、わたしが今まで応援したり幸せを祈り続けてきたキャラクターたちは、世界中から「悪魔」「穢れた血」扱いをされ、迫害されている。この、この衝撃たるや。
島に引っ込まなかった民も世界的に差別を受け、収容区に集められひっそり暮らす。「償いながら生きる善良な民族」であるために、島の同族に激しい拒否反応を示す。
島にいた、ずっとずっと駆逐してきた巨人たちは、実はこうした島の外の脅威から壁の内側を守っていた。攻め込もうにも巨人に食べられてしまうから。
さらに言えば、収容区にて反逆者扱いされた人間が島に連れてこられ、注射を打たれ巨人にされていた。
どこまでも残酷な世界。
エレンは「島の外の人間すべてを駆逐する」と考える。さすれば島のみんなはもう誰にも脅かされない。しかしつまりは大虐殺。
さるの巨人は「安楽死計画」を持ちかける。この民族から生殖機能をなくし、滅ぶ道。
島の外の同族たちは、島の人間を消すことで世界に誠意を見せたい。
確認するまでもなく、読者が物語と一緒に追いかけてきたのは島の人間だ。成長や葛藤、微笑ましい場面も見てきた。そこまで残酷な目に合わなければいけないの? 作中の台詞にもあるが「昔の人がやったことだよね。エレンやアルミン、ミカサがなにをした? ただ島を島とも知らずに生まれて育っただけ」と思う。ひたすらひたすら思う。
どの道を選んでも解決するとは思えない。幼馴染みのミカサやアルミンはエレンに話し合いを求めるが、エレンは応じず。どころか後半はエレン不在で話が進んだり、エレンの心情がほとんど明かされない。だからこその置いてけぼり感があって、なんだかあんまりよくわからなかったという感想に至る。
読み終えて三日たった。
毎日少しずつ、読後の疑問が溶けていく。あんまりよくわからなかったのは、エレンの「自分の大虐殺を止めることで幼馴染みや同級生たちが英雄となれる」との思いに共感できなかったからだと気づいた。わたしは「ジョジョの奇妙な冒険」も好きなのだが、第一部を思い出す。敵の脅威から主人公が命と引き換えに愛する人を守って終わる。男性が自己犠牲の末に誰かを遺して終わるさまが、好かないのだ。勝手だなと思ってしまう。
プラス、進撃の巨人には、実際に現実に起こり続ける現象が描かれている。戦争や差別の当事者として。どうしようもない現実の中でどうあがいても幸せになりきれないやるせなさ、もっとどうにかならないか、いやしかしどうすれば? 答えのなさから、よくわからなかったとなってしまった。
時間を置けば、また新たに理解が深まる気がする。とりあえず読みながらずっと頭に浮かんだのは、海が見たいならうちにおいでよアルミン、海でも砂の雪原でも好きなだけどこにでも連れてったるでよぉ(;_;)という愛しさ。