映画『孤立からつながりへ~ローズマリーの流儀』レビュー
第19回難民映画祭では、困難を生き抜く難民の力強さに光をあてた6作品(日本初公開4作品を含む)をオンラインと劇場で公開。
第19回難民映画祭・広報サポーター星有希が、上映される『孤立からつながりへ~ローズマリーの流儀』について紹介します!
あらすじ
オーストラリアに定住した難民や移民の中には、社会とのつながりをもてずに孤立した人生を過ごしている女性たちがいる。警察とコミュニティの橋渡し役を務めるローズマリーは、経験したことのない異文化を分かち合おうと、イラク、コンゴ、ペルーなど多様な文化圏からやってきた女性たちと、コミュニティで受け入れる地元の人たちの説得に奔走する。ローズマリーの手助けによって、孤立からつながりへと人生を変えた女性たちの輝かしい姿と勇気を称えたドキュメンタリー。
「多文化共生」って?
突然ですが、少し私の住む地域の話をさせてください。
東京近郊の、これといった特徴のない市区町村なのですが、自治体のウェブサイトを見ると、こんなことが書かれています。
「28人に1人が外国人」
多いのか少ないのかわかりませんが、隣近所が外国人であってもまったくおかしくないような数字です。
そして、こうも書いてあります。
「多文化共生社会の実現に向けて」
多文化共生。この言葉、はるか遠い昔に学校で勉強した気もしますが、今現在、この地域に住んでいて「多文化共生」を感じる瞬間は、ほぼありません。
この、外国人が身近に住んではいるけれど、心を通わせる機会がない状況。私個人の推察ですが、似たり寄ったりの地域も多いのではないか……と思います。
それって、もしかして、ものすご〜く、もったいないのでは???
そう思わせてくれるのが、このドキュメンタリー映画『孤立からつながりへ~ローズマリーの流儀』です。前置きが長くなりましたが、ここからレビューと感想を綴らせてください。
ローズマリーのパワフルな魅力
舞台はオーストラリア。主人公は、ローズマリーという名の、エネルギーに満ち溢れた超パワフルな女性。警察署で働く傍ら、ボランティアで地域に暮らす移民・難民の女性たちを繋ぎ合わせる活動をしています。
オーストラリアの美しい気候や街並みとは対照的に、移民・難民の女性たちの表情は、疲れていて不安げです。地域に知り合いがおらず孤立している上、祖国で紛争に巻き込まれた、家族からDVを受けたなど、つらい過去を抱えている人もいます。
そんな彼女たちにローズマリーは、電話をかけたり家を訪ねたりして、食事会や日帰り旅行に熱心に誘い出します。さらには、オーストラリア人家庭に、3泊4日ホームステイしてもらうという企画まで実行します。
正直私は「え、ホームステイ? さすがにそれは、ハードル高過ぎない……?」とちょっとハラハラしてしまいました。でも、参加者全員を集めたオリエンテーションの場で、あっという間に全員の心が一つになってしまいます。ローズマリーはこう呼びかけます。
「お互いを尊重しましょう。そして親切にし、怖がらないこと」
その後始まった自己紹介タイムで、女性たちはそれぞれのありのままの姿を見せ始めます。冗談を言って笑いをとる人、幸せだった故郷を思い出して泣き出してしまう人、そんな彼女の背中をやさしくさする人……。
なんだ、こんなに簡単に、出自を超えて、人って心を開くことができるんだ。そんな驚きがありました。
「国連の代表みたい」
イラク出身の女性とコンゴ出身の女性が「夫は家で家事をしない」「やってもらって当たり前だと思っている」と話しているときは「その会話私も混ぜて……!」と思わずにはいられませんでした。
映画の中で女性たちを「国連の代表みたい」と表現した人がいました。ジェンダー、政治、移民・難民など、さまざまな課題を共有し、どうあるべきかを語り合う姿は、本当に世界の代表者たちのようだと私も思いました。
ホームステイを終えた彼女たちの表情、語られる名言の数々は、ぜひとも映画で見ていただきたいです。
「多文化共生」
本気で実現する意義は、とてつもなく大きいのではないか。私に、自分の暮らす地域で何ができるのかはまだわかりませんが、少なくとも心のなかにローズマリーさんを住まわせておきたいと思ったのでした。
参加方法
⚫︎オンラインで参加
※外部サイト(Peatix)へ移動します。
広報サポーター 星有希
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