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◆アダムの時間

流れる時間は少しお休み

その仮面は外しましょうか。
名前も素性も聞きませんが、その背中にいっぱいの想いを少し話しませんか。ちょっと重たそうですね。ええ。良ければの話です。

もう何年もの昔から人からどう見られてるかってオドオドして隠れて隠して騙して泣いて。素直を見せないよう生きてきたけど不器用でどうにも何無くて、そんなとき。悪魔の取引で、心を無くしたピエロのピノキオの仮面を被ってしまった。どうせ普通には見せられない素の顔を無くしたからって、誰も悲しまないし、知る由もない。知らない顔は無いのと同じ、その仮面が新しい自分だと思えばいいし思いたいし、そうしたい。そんな藁を掴むかの自分に逃避なんて思いもしない。そうしたい。そうするしかなかった。

僕はどう見えますか。教室の真ん中で大声で笑っておちゃらけてる奴に見えますか。いつも笑うようにしてるのは、そうすれば片隅にいた筈の僕を偽れるから、本当は人と関わりたくないのに怯えて生きるのは辛いから、ピエロを演じれば怯えずに済むんだけど、本当はイヤでイヤでたまらない。隅っこで穏やかに過ごしたい。けど無理なのかな。知ってるさ。ピエロなんかじゃ普通には過ごせないってことも。笑わいものにされるだけってことも。家に帰る頃には一人ぼっちに戻ることも、この仮面しか付けられない事も。明日も明後日も、繰り返すしか無いってことも。しょうが無い。

毎日毎日遅くまで働いているのは、本当はちょっと辛いんだ。歳を重ねてきたからかな、そろそろ身体の動きも若いからのようには行かないのは知ってるさ。身に染みてる。なんでこんな事になったんだろ。なんて考えたって何か対応が出来たわけでも無いし、そんな勇気も有るわけでもないし。本当は人より働いてるだけなのか、誰かに渡せないのか良く分かんないけど、この仮面が嫌がるんだ。苦を顔を出すことを。そんなに出来る奴じゃないのに仮面が顔色を変えて、要らぬ風呂敷を広げだしては身体を蝕む。もう、こんな風にしか、もう生きられない。

素顔はたいした能力が有るわけだもなく、ただただひ静かに過ごしたいだけの小さい奴なんだ。恐れているのは仮面を見破る人はたまに居るけど、そっと優しく言葉をかけてくれるけど、知ってて利用する人が怖い。逃げれないんだ。働く事から逃げれない仮面を付けてるなら仮面を利用したらいいと考えてる人。知ってることを、さり気なく伝えてるから更に怖い。背筋が凍るとはこのこと。睨まれたカエルはもう動けない。仮面を取れば済む話なのにね。取れない自分に涙する。本当はそんなに出来ないよ。本当は使えない奴だよ。もう許してくれないかな。なんて自分が巻いたことなのに。

本当はね。冴えないお腹が出たオジサンなのね。人と話すのが怖いんです。何を話したら良いのか分からないので、色々と考えておかないとあたふたしてしまうんです。つまんないんです。ただ、仮面が人を変えてしまってる。そうだイケてるサラリーマンを演じよう。ドラマの役者のようにさぞ高学歴で頭がキレるリーマンのように振る舞い出す。そんなスキル無いのに有るかのように振るまう。もちろん結果を出すのに後追いで調べて動き取り繕っては出来た顔をする。嫌なやつだ体ガタガタなのに。そうだチャラい男を演じよう。頭の中でこれまでの知識と記憶を元に作り上げた架空の人物を作り上げては、身体を合わせて自分と化して話し出す。たいしてモテやしないのに。

仮面の時間は俺なのか。他人なのか。誰の中なのか。これじゃ仮面の中も変わりやしない。仮面という名の言い訳なのか逃げ道なのか、何か縋りたいのか。こんな顔じゃ誰も心から話してもらえないし、気付けば周りは誰もこっちを見ていない。ただの石ころが転がっているだけの風景。

少し話しすぎたかな。そろそろ終わりにしようと思う。穏やかに生きるには無理しすぎたのかもしれません。きっと何かの罰かもしれませんね。

そろそろ時間をまた進めようか。

己を知り己に問い己が担う
その啓示は
黙示録

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