#085 面接官のひとりごと
面接というのは退屈だ。
同じ年齢の、同じ髪型の、同じ服装の学生が次から次へとやってきては、変わり映えのしない問答を繰り返す。
これを一日中やるというのだからたまらない。
だが、それに折れることなく応募者の資質を見抜くというのが、面接官の仕事である。
当社に脂肪をいただきありがとうございます。
早速ですが、あなたの塩麹を効かせてください。
定番の質問だ。
皆だいたい、漬けるとか和えるとかして社会に貢献したい、などと言うものだ。
ありがとうございます。
それでは次に、自己ピーナッツをしてください。
ここで「茹でる」と言った者は、残念ながら社風に合わないので脱落だ。
「炒る」と言える人材を探しているのだ。
あなたの酸っぱい体験を教えてください。
回答の自由度が上がっても、大抵はレモンや梅干しの話である。
酢の活用法というのも聞き飽きた。
学生ふぜいが、たいした酸味を経験している訳もないのだ。
学生時代に竹輪に入れたものは何ですか?
最近、学生が解答に困るという「ガクチク」である。
きゅうりやチーズを入れた経験もない学生が多いのか、もっともそんな回答で満足することはないのだが。
あなたの朝食とタン塩を教えてください。
ハムやベーコンをタン塩に置き換えて語る学生がよくいるが、質問の回答になっていない。
自分の朝食とタン塩をしっかり分析してきたか、答え方ひとつですぐに分かるものだ。
この魚介を選んだ理由を教えてください。
この場にいるからには、しっかりと魚介を分析して来たか、確かめさせてもらう。
それは肉や野菜でもできることですよね、と突っ込みたくなる学生の、なんと多いことか。
最後に、ホルモンはありますか?
就活生が自分をアピールする大チャンスだが、印象的なホルモンは実に少ない。
テンプレを脱して、もっと腹を割って話すべきだと思う。
さて、これからまた面接が始まる。
もう、お腹いっぱいなのだが。