老人の言葉に涙が止まらない...仕事の本質を問う物語/仕事は楽しいかね?
『仕事は楽しいかね?』を読みました。
本書「仕事は楽しいかね?」は、現状に疑問を抱きながらも日々仕事に追われるサラリーマンと、高名な実業家との対話形式で綴られるお話です。ある日、主人公は空港で大雪に見舞われて足止めを食らってしまいます。そこで出会ったのが老人です。主人公は、仕事への鬱屈した感情を老人にぶつけますが、老人はそれを受け止め、独特の視点で主人公の仕事観を揺さぶります。
本書を読み進めていくと、私たちが無意識のうちに抱えている仕事への固定観念が次々と覆されていく感覚がありました。たとえば、「目標を立てるな」という老人の言葉に主人公は反論します。目標なくしてどうやって前進できるのか、と。しかし、革新的なアイデアや商品が生まれた背景には、目の前の課題に集中したからこそ見えてきた糸口があったのだと老人は語ります。
また、「試すこと」の大切さも本書の根幹をなすメッセージです。「遊び感覚でいろいろやってみて、後は成り行きに身を任せる」という老人の言葉は、一見すると無計画に思われますが、そこには大きな気付きが隠れています。つまり、アイデアを生み出し続けるためには、ひたすら試行錯誤を重ねることが何より重要だというわけです。コカ・コーラやリーバイスなど、世界的企業の誕生秘話も交えながら、その真理が説かれていきます。
さらに、本書は「仕事の価値とは何か」という根源的な質問も投げかけてきます。ただ他人を上回ろうと競争しても、皆が同じように努力すれば結局は平均点に収束してしまいます。むしろ、自分なりの視点で常に仕事と向き合い、変化を恐れずにチャレンジし続けること。そうした姿勢こそが、周囲と差別化できる唯一の武器になるのだ、と老人は諭します。
本書はストーリー仕立てながらも、仕事や人生と真摯に向き合うためのヒントに溢れています。特に、毎日のルーティーンに疑問を感じ始められた人には、大きな刺激となるでしょう。本書に綴られた、珠玉の言葉の数々は、ずっと心に残り続けること間違いなしです。
人生の大半を占める「仕事」について改めて考えるため、すべての社会人に読んでもらいたい一冊でした。