ティール組織(3)
時間が掛かったが、ようやく読み終わった。といっても、正直、1回で理解できるような内容でもない、というのが率直な感想である。組織論なので、書いてあることは多岐に渡るし、具体例も存分に出てくる。筆者もこれを書き上げるのに、相当な労力を要しただろうな…と容易に想像できる。
本の最後のほうで、進化型(ティール)組織を作るにあたって、3つのポイント(突破口、ブレイクスルー)が書かれている。何から始めるのがいいのか?という問いに、とても答えにくいとのことだが、具体例をかき集めていくと、その3つは共通項といえるようだ。
1. 自主経営→トップの数人ではなく、全員が権限を握っていれば組織としての力が何倍にもなる。
2. 全体性→人々が自分らしさを失わずに職場に来るので、権限の使い方に知恵が絞られる。
3. 存在目的→社員の権限と知恵が組織の生命力と一致すると、なぜか物事がうまく運ぶ。
こう見ると、すべては権限の全体化といえる。すべての人にあらゆる権限がある状態、それがティール組織なのだ。そう言われても、これまでの組織の在り方に慣れ親しんでしまった我々にはピンとこないことも多そうだ。一番いいのは、現時点で組織で最も権限のある人が「今日から組織の在り方を変えます」と宣言してしまうことなのだろう(本書でもそんな例が載っている)。それができる組織から、どんどん変わってゆく。
組織論に留まらず、社会の向かう方向性にまで言及されている。進化型社会と表現されている。ゼロ成長と循環型経済、大量消費社会の見直し、既存産業の再生、さらには株主の在り方まで。これから向かう未来は、人間性にあふれた世界になる、そんな希望を持った締め方がなされている。
個人的には、そういう未来が来ればいいなと思ったことがたくさんかかれていたので、非常に読了感の良い終わり方だった。内容が壮大過ぎて、実感レベルでなかなか追い付かないことだし、自分が生きている間に人間社会はどこまで辿り着けるのだろうかとも考えた。でも、希望ある未来に向かって進んでゆけるのであれば、今行っている様々な事柄がもう少しポジティブに捉えれるような気もする。帯に書かれている著名人のコメントがどれも希望に満ち溢れているのは、そういうことだったんだなと、最後の最後で気づかされたのであった。