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閉じられた空間の中で

朝8時ちょっと前。アナログ時計の文字盤の中に書いてあるデジタルの気温計には29℃の表示。なんだ30℃もないのかと拍子抜けする。それならば短時間でやってしまえば大丈夫だろうと思っていた。

粉が舞うのを防ぐため扉を閉める。近くに置いてあった業務用の大きな扇風機のスイッチも切る。粉を体に付けないようにするための準備に入る。まず、使い捨て用の手袋をはめる。その上からは肘までくるビニル手袋を付ける。さらに、脇までくるようにこれまたビニル製のアームカバーをする。極めつけはビニル製のエプロンである。これで装備は完璧だ。汚れが付くことはほとんどないだろう。そして、完璧に暑い。

スコップで粉の山からひとすくいして、測りにセットしたビニル袋付きの缶に入れていく。ひとすくいの重さはだいたい1.5kg。だが、片手で持つには重いようで、時々、うまくコントロールできずに粉がこぼれてしまう。そのうちに持ち手の人差し指に痛みが走る。そうか、片手で1.5kgを支えるのは無理があったんだな・・・。スコップを移動させるときには両手を使うことにしたのは、そのことに気づいてからだった。

15kg、16.5kg、徐々に目標の重さに近づいてゆく量りの数字。一方で、目の前に滴るものが。汗だ。いつの間にか髪の毛にびっしょりと汗をかいていた。こんなに濡れていることに今まで気が付かなかったなんて・・・と思うくらい一気に噴き出してきた。粉に付くのもよくないし、早いところ切り上げないと。20kgを詰め終えて袋にひとまず封をする。残りは3缶。これは休み休みやるしかない。


最後のひと缶が終わる。いよいよこの瞬間がやってきた。身に纏った装備品をすべて取り去るのだ。勢いよく手袋をはぎ取ると、そこから出てきたのは水だった。いや、汗に間違いないのだが、これは水道から水を入れたのかと思うほどの水が出てきた。こんなことを続けていたらすぐに脱水症状になるに違いないなと、滴る水を見てひとり笑う。

気が付けば気温計は35℃。閉じた扉を開かれた時、暑いはずの外の世界は爽快だった。

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Re:TOHMIN
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