「めざせ! ムショラン三ツ星 刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります」(黒柳桂子/著)

タイトル通り、刑務所に勤務する管理栄養士さんのエッセイ。…エッセイだと思うんだが、図書館の分類コードは326、今検索したら「刑法・刑事法」だって。そうか? まあ、法律にも触れてなくはないんだけど。難しいことはナシです。
「何も知らず刑務所の炊場(すいじょう)に飛び込んだ栄養士と、料理初心者の男士受刑者の給食作り奮闘記」というキャプションです。炊場ってのは刑務所の調理場所のこと。いろんな刑務作業するところを「工場」というそうで、炊事をする工場で炊場だって。
一般市民のほとんどの人はきっと一生縁のない刑務所のごはん。「臭い飯」と言われてますよね。これがタイトルのもと。
刑務所内では「給食」と言われて、受刑者たちの中で頭がよくて体力があって素行も問題ない「エリート」受刑者が、栄養士さんの指示のもと給食作りを担当するそうです。火や刃物を扱うんだから、確かに問題ありな受刑者は入れられないですね。
さてその給食ですが、まあ制約の多いこと! 予算はもちろんのこと、道具や食材もダメなもの多くて、同じ低予算でも学校給食とは献立作りに次元の違う難しさがあると思いました。
バナナで煙草が作れるって初めて知りましたよ。みりんも「甘いお酒」という認識で、盗み飲みされることがあるから置かないんだって。
そして絶対の鉄則、「等分に分ける」。とにかく食事くらいしか楽しみがないから、「あいつの麦飯(刑務所のごはんは麦飯だけだそう)が少し多い」とか、「オレの肉が少し小さい」とかで、トラブルのもとになるとか。
そんな約束事がてんこ盛りで低予算の中で、少しでも美味しくて心躍るものを提供しようと知恵を絞る栄養士さん。「食事は楽しくなければならない。楽しくなければ、それは食事ではなくエサだと思う」という言葉に、職人的信念とプライドを感じました。
きっと見る機会なんてない「塀の中」の様子を垣間見て興味深かったし、絶対犯罪は犯すまいと思いましたよ。お菓子も食べられない生活なんて!(笑)


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