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マジックパフォーマンスに制約理論(TOC)

色んなメディアで書いている事なのですが
マジシャンだからこそ、マジック以外の事柄をしっかり
学んでおくことが大事になります。

純粋に物に向き合う職人さんなら、その分野だけでも
いいのかもしれませんが、人前でパフォーマンスをする
しかもクロースアップなら言葉のコミュニケーションをしつつ
その中で色々と見えない攻防を仕掛ける以上、マジックだけしか
話すことが無いのは、マイナスにしかなりません。

かつてプロレスラーのザ・デストロイヤー氏が
「プロレスラーにとって一番重要なものは?」と質問され
「インテリジェンス」
と答えていたとか。

これはマジシャンにも大切になってくる事柄だと思っておりまして
僕が「一番重要なものは?」と聞かれたら「知性と品性」
と答える気がします。

これ、間違っちゃいけないのは、プロフェッショナルとして
マジック近辺の事柄に関して常日頃から勉強しているのは
当たり前だからこそ、正反対の位置にあるようなことを意識している
という事になるから・・かな。

言語としてなしているものが先にあるのではなくって
感じたことを言葉にすると、そうなるって感じなので。

ほら、タダでさえ人をだますことをするのですから
仕事ではないときに軽薄だったり、嘘をついたり、お金にだらしなかったり
連絡対応が遅かったり、あまりにも無知を露呈するような人なら
ホントに信用・信頼してもらえなくなりますからね。

これが、純粋に物を作る職人さんなら、まだ出来上がった物を
介してのお付き合いとして許容される部分も生まれますが
人と人との肉弾戦をしなきゃいけないですからね
ある種の「人格」を見られるわけで、どんなに隠しても
伝わってしまう部分がある以上、大事になってきます。

「そんなのかんけーねー!」と海パンいっちょで言ってくる
マジシャンもいるかもしれません。
マジックパワーでごり押しすれば大丈夫!的な考えの人が。

もちろん、それも止めないのですが
ちょっとだけ知性を働かせてみましょうか。

世界的に有名な本である「The Goal」ですが

この中で触れられている、制約理論(TOC)というものがあります。
今ではメジャーになっている概念である「ボトルネック」
というものが、ビジネスではキーになることを教えてくれます。

シンプルなイメージとしては、チェーンがつながって
長い鎖になっているとして、左右を強い力で引っ張ったら
弱い部分から切れるから、そこから修正していくわけです。

これはマジックの演技にも当てはまることで
マジックのパワーを上げたり、トリックの改善をするのは
いいのですが、切れるパーツはそこではないことが多いってことです。

「マジックが面白くない」と、正面切って言われることは少ないでしょうが
僕自身は「君には、華がない」と言われたことはあります。
このあたりがボトルネックになっているマジシャンって、実は
想像以上に多いのでは?と思っているわけです。

もっと言えば、気づいていない人も多いのでは?
だから弱い部分ではなく、既に十分になっている部分を
さらに強くして、むしろその対比のせいでチェーンが切れやすく
なっているかもしれません。

お笑いの方でも、ネタはいいけど、平場が弱いとか
言われる方いるでしょ?
そういった所で戦う以上、優先的に修正すべきはボトルネックなのです。

さて、では、マジシャンのボトルネックは・・・・
「知性と品性」になってきません?

昔、テレビで「やってTry」というコーナーがあって
町中の人に料理をしてもらう、というのがありました。
コーナーの意図はよく分かりませんが、出来ないことを笑う
というものかと・・

僕も料理はできませんので、じゃあ酢豚作って
と言われてもできないわけです。
そこは知性の不足だと思うのですが、だったら参加しなきゃ
いいわけで、しかも番組に出たら笑いものになるんだから
それを避ければいいわけで、その辺は品性になってくるわけです。

という事を思いながら、それを笑っていた僕が
一番底意地が悪いのかもしれませんが(汗)。

知らないことを知らないとか、それを抵抗もなく
露呈できるとか、その辺の事柄に対して
意識を払った方が良くなるわけです。

一般教養に関しての知性を持ち合わせてないのは
100歩譲られる事もあると思いますが
(僕は四書五経をそらんじられる位が教養だと思っております)
専門分野のマジックの事にさえ、知識を持ち合わせてなかったら
もう目も当てられない状態になるのは
想像に難くないと思います。

自分の演技をより良くするため、というよりも
お客さんとの共有時間をより楽しいものにするために
制約理論的にどこがボトルネックになるのか
考えてみてもいいんじゃないでしょうか?

さて、ちょっと視点を変えてみて
お客さんにもこの制約理論を使ってみたらどうなるか?
制約理論のボトルネックの考え方ですが
どこかで処理が遅くなる、考えることも可能です。
(非常にざっくりと、ですが、的は外してないかと)

ただでさえ、マジックの情報量は多いわけですから
それがきちんと処理されて行かないと
ウケるものもウケません。

さらに、これが1人ではなくグループになると
その中でボトルネックになる人が
生まれてくるはずです。

となると、その人の処理速度が非常に重要になりますし
その上で手順を進めて行かないといけなくなります。

時にトリックを変えたり、時にトリック数を減らしたり
演じる場の変更などもあるかもしれません。

1人の人の中のボトルネックにしても、グループのボトルネックにしても
そこに何かが滞留してしまったら、そこから生まれるものは
マイナスの感情以外にはないでしょう。

これがヘックラーになる原因の1つだと思っています。
相手の処理速度・処理容量を考えてあげる事
これが全体最適として、キーの1つとなることは
これまた想像に難くないでしょう。

マジシャンの動き全体を見ていない人が
部分を見て、なんやかんや言う事もありますが
この制約理論的な視点を持ち合わせてない人からの
アドバイスは、大抵部分最適であり
結果的には効果を生まないことも多いわけです。

平たく言ったら、おいしいものをかけ合わせたら
美味しくなるじゃん!って言っているみたいで。

美味しいカレーと、おいしいウナギと、おいしいショートケーキがあって
全部混ぜたらおいしくなるでしょ?みたいな。
(考えただけで、気持ち悪くなりそう(笑))

だから分かっている人って、アドバイスは小さなことから
1つずつ言ったりするんですよ。

さてさて、僕も制約理論は本を読んで学んだだけなので
実際に学んできたり、活用してきた人からしたら
骨身にしみては無いのですが、とはいえ
自分のマジックをより良くするためのツールとして
持ち合わせている事で、強力な武器になると思っております。

知性と品性、そしてTOC
等々マジックとは関連の無いと思われるものも
ちょっとくらい興味を持ってみるのは
損のないことだと思いますよ。

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