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【#読物語:本】米澤穂信『氷菓』
平成の少年が読み解く昭和からのメッセージ
推理作家《米澤穂信》のデビュー作となった学園ストーリー。
「やらなくていいことはやらない。やらなければならないことは手短に」をポリシーとする主人公《奉太郎》は、部活仲間《える》の懇願を受け、「柄にもなく」数十年前に自分たちの高校で起きた歴史事件の謎解きに挑む。その事件により彼女の伯父《純》は退学処分とされ、「氷菓」という謎の言葉を部の文集のタイトルに残す。後年、純は幼い頃のえるにそれについて謎の態度を残し、失踪していた。
主人公らは、もはや古典と化した過去の出来事を探索し、文化祭をめぐる生徒たちと学校当局との「学園紛争」に行き当たる。一方的に文化祭を縮小しようとする当局と、自治を守ろうと抵抗する生徒とが争った当時の学校で、純に何が起きたのか。学校史の記述、ガリ版ビラに書かれた文言、事件後の文集に書かれた言葉を拾い集め、奉太郎はついに、数十年の時を隔てた真相を探り当てる。
原作小説、アニメ版(表題作は1~5話)、マンガ版(同1~3巻)がある。歴史の探求や人間の心理をテーマとした本作だが、以後の続編はいわば「日常系謎解きもの」が続き、ヒョウカが分かれるところ。
(2019-10-17 組合機関紙)