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【提言】「自治体の求人は『副業歓迎』で」

 各地の自治体では採用難・人材不足が深刻さを増している。募集しても満足な量と質の人材が得られない。待遇や労働環境、将来性などの面で民間に競り負けているのだ。
 この期に及んでは、「奇策」を採って人材獲得競争に挑むしかない。私が提案するのは、「わが自治体は副業を歓迎します」と打ち出して職員を募集することだ。

 どういうことか。地方公務員の副業は「原則禁止」ではあるが、首長などの任命権者から許可を得れば可能だ。家業の農業や不動産業を行う場合が古くからみられる。近年では、社会貢献となる副業を積極的に許可する制度を設ける自治体が現れた。また、果樹栽培が盛んな地域の自治体では、職員が収穫のアルバイトをすることを認める制度も広がっている。
 今のところ、促進されるのは社会貢献や農作業などに限られているが、自治体職員としての本業に支障がなければ、首長等の許可によって多様な副業が可能なはずである。

 そして世の中には、安定した本業を持ちながら副業で自己実現したい人は少なくない。特にデジタルネイティブ世代は、デジタル技術で音楽や映像作品、マンガなどを創作することが特別でない時代に育ち、クリエイター人口が多い。勤務先に伏せて活動している人もいることだろう。

 そこで、有為の人材を採りたい自治体は、「副業したい人を歓迎します」として採用募集をかけるのだ。そして、希望する者には業務に差支えない範囲で多様な副業を許可することとする。これにより、自らのライフワークを副業として続けたい逸材を全国から得られるだろう。

 もちろん、自治体は副業希望者に対し本業が第一であることをはじめ各種のルールを指導する必要がある。本人の希望に沿う働き方ができるよう調整や配慮も求められる。一方で、それで得られた人材には、副業の時間を確保するために本業を効率的にこなしたり、あるいは役所の論理にとらわれない発想を持ち込んだりと、自治体組織に足りない創造性の発揮が期待される。やがては創造的人材が集まるユニークなまちとして評価されるだろう。

 繰り返すが、人材獲得は競争である。横並びを脱し、この策を採用する自治体が現れることを期待する。

〔2024-10-09〕

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