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最近の金融経済動向(2024年9月)


日銀、利上げ見送り

 先月のしょぼい利上げを行ったタイミングで、日本株の市場が大荒れとなったことから、長期的には利上げをする方向性は踏襲しつつも、今はその時ではないと金利を据え置いた。

 とはいえ、米国が利下げ局面の中、日本だけが遅れに遅れて利上げすることで、市場経済にどのような影響を及ぼすのか、不確実な要素が多いからこそ、先月の利上げショックなのか、植田ショックなのか、ハリスショックなのか、円キャリーショックなのかよく分からない乱高下に至ったわけで、現状維持、様子見を選ぶのは実に日本らしい選択とも言える。

 以前から記しているように、アベノミクスで行ってきた異次元金融緩和のツケが今になって過度な円安とインフレを招いている訳で、日銀総裁が取れる選択肢としては、究極の二択となっている。

 これまで通りの異次元金融緩和路線を継続すると、日米の金利差により円安が加速し、輸入物価が高くなるコストプッシュ型のインフレに悩まされるここ2年間の状況が継続する。

 資産を外貨で持っている人は保全されるが、日本円でしか持っていない人は、実質的な購買力が低下し続け、気づいた人からNISAなどで米国株式や全世界株式を購入するが、これもまた毎月1兆円規模の円安圧力として、無視できない円売り要因となって円売りが円売りを呼ぶ展開の無限ループ。

 一方で、利上げして日米の金利差を抑えることで為替は一昔前の水準に落ち着き、輸入物価の上昇は抑えられるかもしれないが、短期プライムレートが上昇するということは、住宅ローンの変動金利が上昇することを意味する。

 悪徳不動産屋の常套手段としては、同じ住宅ローン総額なら、金利のヘッジがある固定金利で借りられるよりも、これまでほぼゼロ金利水準だった変動金利で目一杯借りて貰った方が、物件価格が上昇し、仲介手数料などの実入りが固定金利よりも多くなるため、変動金利でゴリ押しすることが多い。

 それにより、日銀がグローバルスタンダードに倣い、長期のインフレ率が年2%水準で推移するなら、金利も同程度であるべきだと利上げに踏み切ると、住宅ローンを変動金利で組んだ人の返済額が、家計上無視できないレベルで上昇し、住宅が売れなくなる形での不況により、内需が死ぬ路線となる可能性が高いと見ている。

 日銀総裁が金利を据えおこうが、利上げに踏み切ろうが、いずれにしてもハードランディングを覚悟しなければならない意味で、究極の二択となっている。

自民党総裁選、まさかのゲル

 派閥を解消したプレーンな自民党総裁選で選出されたのは、ネットミームでは魔人ブウこと石橋ゲルググでお馴染みの石破茂氏だった。

 金融市場は高市早苗氏が当選するものと織り込んでいたためか、日経平均先物の下落幅が2,000円を超え、早くも石破ショックと揶揄されかねない波乱の幕開け感が出ている。

 私のスタンスはあくまでも経済と言う切り口で世の中を見ているため、政治に関してはあまり詳しくないが、石橋茂氏の人物像としては、権力の腐敗を嫌う印象がある。

 このことから、既得権益層のタブーに切り込むであろう魔人ブウ石破氏は、派閥のロジックを優先すれば、本来であれば国会議員からの票が得られず、当選には至らない人物であり、政治資金問題に伴う派閥の解消が起きたことで当選するウルトラCを果たした意味では、純粋な民意が反映された結果とも捉えられる。

 これは派閥のロジックなしに、是々非々で誰が次期総裁にふさわしいか考えた国会議員が、これまでタブー視されていた政治の腐敗に切り込むであろう魔人ブウ石破氏を選んだ意味で、現状維持を望んでいない議員が多数派であることの裏返しとも取れる。

 また、各都道府県連票は都市部が高市氏(保守)、地方部が石破氏(リベラル)と、一般論では若者が集中する都市部ほどリベラルな候補者が選ばれそうなもので、反対に高齢者が集中する地方部ほど保守派の候補者が選ばれるものだと思っていたが、予想とは逆の結果となった。

 これを地方の若者が吸い寄せられる都市部でも、人口ピラミッドで見たら超マイノリティであり、実は人口のボリュームゾーンは高齢者であり、順張りで高市氏が選ばれたとも捉えられる。

 この理屈だと地方部の石破氏の説明が付かないが、保守リベラル云々よりも、農水省経験者という経歴上、これまでの東京一極集中ではなく、地方を慮った政策をしてくれるだろう的な期待感から地方の支持が厚かった可能性は否めない。

東京メトロ、10/23上場承認

 9/20、東京メトロの東証への上場が承認された。東京の大動脈であり、斜陽産業である鉄道業界にも関わらず、本業での圧倒的な黒字を叩き出しており、大型上場として期待されている。

 とはいえ、元業界人としては、これまで本業での圧倒的な黒字を設備投資に回すことで、冗長性のある設備で、安全な大量輸送ができていた側面もあるのではないかと考えており、それらが上場によって株主還元に舵を切る必要が出てくる。

 それにより、目先の利益を確保するためにコストカットせざるを得なくなり、JRのように長期目線で安全輸送に関わる設備投資がなおざりになった結果、上場から20年〜30年後たった今、そのツケが回ってきて、一昔前だったらあり得ない事故やインシデントが多発する状況に陥りかねない意味で、今回の上場で東京メトロがこれまでの安全輸送が長期に渡って維持できるのか?という観点で興味深い。

 元業界人として事ある毎に記しているが、そもそも鉄道やバスをはじめとする公共交通機関は、非効率な「公共性」を求められる一方で、会社である以上「営利性」も求められる構造上の矛盾がある。

 いわゆるダブルスタンダードというやつだが、減便や廃止することで、地域住民の足を奪うのかと公共性をダシに抗議される一方で、地域住民が殆ど使ってこなかったからこそ、運行しても走らせれば走らせるほど赤字となり、減便や廃止もやむなな状況となった資本主義のロジックで正当化しているのが現状である。

 つまり、東京メトロの「営利性」を強く求められる上場は、長期的に見れば「公共性」を蔑ろにしかねず、それにより「公共」交通としての使命が蔑ろになるという、どこかのJRのような本末転倒な状況になり、自分で自分の首を締めかねない意味で、個人的にはIPO投資としての売却益狙いならまだしも、長期投資には向かないと考えている。


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