感情論vs勘定論
雪景色が好き…でも、定住は厳しい
コロナが5類に移行し、大手を振って旅行できるようなご時世に戻ってきたため、2019年以来、5年ぶりに愛しの札幌に出向いた。
私が早生まれということも相まって、冬の季節になるとクリスマス、年末年始、誕生日とイベントが続くため、四季の中では、冬が最も好きだ。おまけに北国で生まれ育ったわけでもないため、雪に対するネガティブなイメージがなく、雪景色には格別さを感じる。
だからこそ、街と自然のバランスが良く、公共交通機関が整備されていて、暮らしの観点でも利便性の高い札幌には魅力を感じるし、今は厳しくても、いつかは移住したいとコロナ前から考えていた。
早期リタイア&札幌移住を夢見て、5年前に数百万円だった資産を、倍々ゲームで文字通りの状態まで膨らませた。衣類も替え時になったものから順次、札幌移住を意識して、北国以外ではオーバースペックなウェアに更新していった。NBのスニーカーも、ゴアテックスを採用した冬靴仕様のものを揃えている。
そうした入念な準備の末、5年振りに北の大地へと降り立ち、やはり私はこの街(札幌)が好きだと、改めて感じるとともに、この間に患った病気で、死の恐怖をまざまざと味わい、もうダメかも知れないと思った時期があったからこそ、またこの地に戻ってくることができて良かったと、喜びも一入だった。
しかし、この5年間で移住の土台を固めてきた期待とは裏腹に、現地で定住は厳しいと考えてしまう私がいた。
この5年間で色々と変化しているからだ。特に大きく影響しているのは某国の軍事侵攻で、飲食店で地元民が、もし露が攻めてきたら…的な話題をする程度にまで、北海道の地政学リスクが浮き彫りになったこと。
原油価格が高騰し、円安が進行したことで、燃料代が上がり、生活する上でのランニングコストが5年前に私が試算した時よりも高騰していること。そして、この傾向は収まるどころか、今後も加速する線が濃厚だということ。
いくら雪景色が好きでも、1年間の半分が冬の札幌で、快適な居住空間を維持するためには、燃料を焚き続けなければならない。引きこもり陰キャの性質上、生活の大半を家で過ごすのがオチなのだから、燃料代という名のランニングコストが発生する北国は、そもそも相性が悪い。
生活コストを安く済ませる観点なら、温暖な気候の南国が理に適っており、いくら浪漫のためとはいえ、経済面のハードルを上げてまで、わざわざ北国を選ぶのはいかがなものかと、そろばん勘定に走る私がいた。
ご当地グルメは、その土地で味わうのが醍醐味
本当は札幌に帰りたい。でも、なぜかサイコロの目(数字)に翻弄されながら、九州や四国をいったりきたりしている。私の人生、某北海道ローカル移動番組の構図そのままではないか。
そんな札幌としばしば引き合いに出されるのは、同じ三大都市圏とは別枠の、地方のちょうど良い都市の代表格である博多だろう。
確かに札幌と博多は街の性質が似ている。本州と陸続きではない立地。交通の要衝に札幌・博多。そこから少し離れたところに大通・天神と繁華街があり、地下鉄で結ばれている。食いもん美味い。空港へのアクセスも良いが保安検査場は激混み…
そして、数字に翻弄されながら、九州や四国をいったりきたりしている私の居住地から物理的に近いのは紛れもなく博多。そこで金勘定に支配された蓮ほu悪魔が囁く。博多じゃダメなんですか?と。
札幌には市電が残ってる。でも博多にはいろんな意味で最強の西鉄バスがあるじゃないか。博多なら新幹線があって、東京から鹿児島まで行ける。札幌は当分先の話。それに九州は南国のイメージに反して雪は降る。博多で何が不満なんだい?僕と契約して魔法少(ry
歴史的背景やら、区画やら、気候とそれ伴う文化、県民性やら、違いを探せばいくらでもあるものの、類似している要素も多い。実際問題、現地に出向いた回数だけ考えれば、どう考えても札幌より博多が多い。それにも関わらず、なぜ博多ではなく札幌を望むのか、言語化できていない変数を探す旅でもあった。
結論としては、食文化の好みと非日常感がウェイトの大部分を占めている点に帰結し、それらは寒冷な気候から来るものという、単なる無いものねだり以上でも以下でもない、身も蓋もないものとなった。後は水曜日に地上波でどうでしょうが観れる程度で、結局のところ気分の問題なのである。
サッポロクラシックひとつ取っても、わざわざ現地に出向いて、ご当地ビールとしてその土地で味わうから美味いと感じるのであって、わざわざECサイトで取り寄せてまで、普段飲みしたいとは思わない。
海鮮は言わずもがな、きのとやのソフトクリーム、侍のスープカレー、だるまのジンギスカン、一幻のえびそば然り、これらはご当地グルメとして、その土地で味わうのが醍醐味であって、チェーン展開して道外で食べられる機会があったところで、恐らく利用しない。
実際問題、仮に移住してその地のグルメを普段から食べるかと問われれば、香川県民のうどんを除けば、観光客が有り難がっているだけで、地元民はそこまで食べない温度差があるのがオチだろう。
恐らく私が博多グルメに惹かれないのは、豚骨ラーメン、ごぼう天の軟いうどん、明太子、ごまさば、鍋料理全般は、一通り食べ尽くした感があり、相場が分かっているが故だろう。
鳥刺しも、私からすればスーパーで普通に買える、単なる酒のつまみ以上でも以下でもなく、そこにご当地グルメの醍醐味である非日常感はない。
そう考えると、日頃は生活コストが安上がりな南国に居住し、札幌に行きたくなったら行く程度の温度感が感情的にも、勘定的にもベストな落とし所なのかも知れない。
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