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自然災害「100年に一度」の語弊。


直感に反する確率論。

 中国地方や九州地方では、梅雨というよりもスコールと表現した方が適切なように思える、先日の大雨の影響で、サムネイルのような被害が出ている。これはウェザーニュースでも報道されていた、九州某所にある河川の定点カメラの画像を、アプリからスクショしたものである。

 特に九州地方は2017年にも九州北部豪雨と、100年に1度と言われるレベルの猛威が起きたばかりである。

 被災地の方からすれば、100年に一度と言われていた自然災害が、まさか生きている間にもう一度経験するとは思わなかった。といった感想になるだろう。

 これにはマスメディア側が、1%の確率で起きる異常気象や自然災害を、「100年に一度」と噛み砕いたことで、大衆に誤解を招いた側面もあるのでは無いかと思う節はある。

 株式投資の世界で凌ぎを削っている身として、期待値ほど重要なものはなく、恐らくはパンピーよりも確率を意識する機会が多いからこそ、この言い換えに違和感を覚えるのだろう。

 パンピーの直感では、100年に一度級の自然災害が起きたと報道されると、一度災害が起きたのだから、その年から100年くらいは大丈夫だろうと思いがちである。

 しかし、あくまでも統計学的に1%の確率で発生すると予測されている規模の異常気象が発生したに過ぎず、母数が100に近づくに連れて、発生する可能性は大きくなるのは事実だが、立て続けに、不吉だが極端に記せば2年連続で起きる確率も、数理上0.01%となりゼロではない。

 だからこそ個人的には報道でも、統計上、発生確率1%の異常気象が起きたと表現すべきだと思うが、そう思うのは偏差値50以上の、大学に行ける人種側のロジックであって、マスメディアである以上、下位半数を切り捨てることができないジレンマがある。

 むしろ、スポンサーが意図した広告効果を発揮してくれるのが、そういった層である限り、「今のままずーっと愚かでいてくれればいいの。世の中の仕組みや不公平なんかに気づかず、テレビや漫画でもぼーっと見て何も考えず、会社に入ったら上司の言うことをおとなしく聞いて、戦争が始まったら、真っ先に危険なところへ行って戦ってくればいいの。」と黒服の悪魔のような教師の台詞が脳裏に過ぎる。ボーっと生きてんじゃねーよ。

 個人投資家の9割が負ける類の格言も、真相は定かではないが、思いつきによる投資は非合理的な判断に繋がり、負けるように出来ている意味では、それくらい、確率論は直感に反する側面があることを示唆しているようにも捉えられる。

不確実性への対応は災害も投資も同じ。

 先日、某SNSでレコメンドされた投稿で、100回コイントスして、50回表が出る確率は?が出てきた。直感で50%よりも少なくなると思う人は、あまり多くないだろう。

 わざわざ問題にするのだから、50%ではないと勘繰る方も一定数居ると思われるが、具体的な確率が何%かを、即算することはできないだろう。

 理系大学を出ていないと、ワケガワカラナイ数式で解くと約8%になるらしい。思ったよりも低い。

 確率というのは、試行回数を増やせば増やすほど収束する性質があるものの、裏を返せばバラツキが付き物と言える。

 つまり、100回コイントスをしても50回ピッタリ表が出る確率よりも、49回とか51回のような、いわゆるニアピンとなる確率の方が高いとイメージすれば、ピタリ賞はそれなりに難しいことが、少し考えれば想像できなくはないが、直感には反する。

 この人間が思考プロセスを省力化する癖を、行動経済学の世界で「知的ショートカット」と表現される。

 有名なのは、「バットとボールはセットで1ドル10セントします。バットはボールより1ドル高いです。ボールはいくらですか?」で、バットが1ドル、ボールが10セントと答えがちだが、仮にボールが10セントなら、バットは1ドル10セントとなるため、セットで1ドル20セントになってしまう。

 これは判断ミスが生死に直結する狩猟時代に、認知資源を温存するための名残のようなもので、脳が疲れている就寝前や、不確かな状況に直面した時に敢えて思考停止して、反射的にパッと思い付いた、全く合理的ではない誤った判断を下すように出来ていて、これを後天的に直すことができない難しさがある。

 だから人間の脳の構造上、不確かな状況に直面すると判断を誤る前提の元、平時にケース別の異常事態を想定して、どう対処するのが合理的か。事前に対応できることは何かを、よく考えておくのが大切なのだろう。

 これはユダヤの教典でもあるタルムードが示唆する、どんな災難や危機も人生には起こり得るものとして備え、吾輩の辞書に「想定外」の言葉はないとでも言わんばかりの用意周到さが、不確実な現代における唯一の対処法なのかも知れない。

 集中豪雨で下水のキャパシティを超えて、床上浸水したら?河川が氾濫したら?津波が起きたら?土砂崩れが起きたら?地震が起きたら?インフラが止まったら?火山が噴火したら?

 これらの対処法を地道に考える習慣を投資で活かせると、実利という名の成果が得られるかも知れない。


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