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過去最長の実質賃金25ヶ月連続マイナス


内需が死ぬのは時間の問題

 春闘の賃上げを反映した4月の給与を元に集計した実質賃金が、マイナスであり、過去最長となった。実質賃金とは、賃上げ率から物価上昇率を差し引いた値であり、これがマイナスということは、パンピーもとい賃金労働者が、毎月の手取りの中から自由に使えるお金(可処分所得)が、事実上減っていることを意味する。

 これはインフレというよりも、スタグフレーションと表現する方が性格であり、25ヶ月連続マイナスは過去最長と、リーマンショックを超えてしまった。無論、世界的な金融危機が起きている状況でもない。

 助け舟を出すとするなら、リーマンショックが市場経済がクラッシュして、その影響が実体経済にまで及んだのに対して、昨今のスタグフレーションは、数年前の疫病と戦争の影響によるもので、実体経済に直撃しているため、金融市場でうまいこと舵取りをすれば、どうこうなるレベルの問題ではない根深さがあることだ。

 戦争+副産物的にサプライチェーンが崩壊し、ブロック経済化したことで、グローバル経済全盛期ほどの供給力がなくなり、半導体のように、いくらお金を積んだところで、手に入らないものは手に入らなかったり、買えたとしても値上がりしていることが常態化している。

 日本には資源が乏しい構造上、輸入に頼らざるを得ず、原材料が値上げされている以上、消費者に価格転嫁する他なく、原価が上がった分、売価を上げているだけでは、売上高が増えても、その分は外貨に消えていくだけで利益は変わらず、賃上げには繋がりにくい。

 そうして輸入品は舶来品に逆戻りし、大企業の平均ですら、物価高に賃上げが追いつかない体たらくとなっている状況が、かれこれ2年以上続いているわけで、内需が死ぬのは時間の問題であり、メディアはインバウンド消費やオーバーツーリズムばかり取り上げている場合ではない。

若者が自分ひとり生きるのに精一杯な現状

 内需が死ぬことが何を意味するのか。それは国内の消費者に依存している(=海外比率が低い)企業の業績が、半年〜数年スパンで少なくとも伸び悩む。悲観するなら悪化すると捉えるべきだろう。

 昨今、新NISAや証券取引所の改革により、再び株主優待投資が脚光を浴びているように感じるが、最も分かりやすい優待銘柄の多くは小売業と思われる。

 このセクターは国内に依存していないとか、インバウンドを取り込めるとか、ブランドそのもので絶対的な地位があるとかでもない限り、内需が萎むと共に株価も下落する可能性が高いと個人的には見ており、一回の個人投資家として何をすべきかは明白だろう。

 ドロップアウト組は、賃金労働をしていないことから、実質賃金の低下は直接的には関係しないと思われるが、それでも私が深刻だと、事態を重く見ているのは、今後の日本社会の展望が変わりかねないからだ。

 大衆の可処分所得が減ることで、日に日に生活が苦しくなり、余裕がなくなると自分ひとりが生きていくので精一杯となる。それにより、私のような極端な生き方を選んでいない、普通寄りの同世代が、結婚して子どもを…という発想に至らなくなるのが自然だろう。

 その結果が、東京都の出生率が1を割る事態となっているように思えてならない。日本全体の人口は、戦時中以上のペースで減少しているにも関わらず、都内のマンション価格は高騰している。

 もはや東京(特に特別区)は、パンピーが普通に労働するだけでは暮らせない街となりつつあり、それでいて地方からブラックホールの如く若者を吸い取っては、経済的に消耗させているのだから、これで少子化が改善する訳
がない。

「若者の日本離れ」待ったなし?

 そもそも、シルバー民主主義である日本は、若者の時点で社会のマイノリティ。それでいて国民負担率が50%近く、普通に労働するだけで、対価の半分は税金や社会保険料の形で国に召し上げられ、そのお金は高齢者が豊かに暮らすために消費される。

 若いパンピーが、普通に労働するだけで幸せに暮らす難易度が、極めて高い無理ゲー社会化しているのが今の日本社会であり、それに気付いた優秀な人から順に、海外に出ている印象すらある。

 それくらい、日本は若者に冷酷な社会であり、マスメディアもジリ貧となっている若者を取り上げては、若者の〇〇離れと特集を組む体たらくで、そろそろ「若者の日本離れ」みたいな状況になってもおかしくない程度に、虐げられている気がしてならない。

 親ガチャの言葉にもあるように、裕福な家庭に生まれないと、高校生の段階で、貸与型奨学金という名の教育ローンを組んで大学へ行くか、無借金だが非大卒で社会に出るかという、究極の二択を迫られる。

 前者を選べば、借金を背負った状態で新社会人がスタートし、国民負担率50%近い状況下で、奨学金の返済が30代まで続き、晩婚化待ったなし。

 毎月借金を返さなければならない手前、毎月収入を得られないような暮らしを選ぶ余地はなく、例えブラックであっても、働き続けなければならない。病気やメンタルダウンなど、何かの拍子で就労不能になれば、借金で首がまわらないため詰む。

 後者は、無借金ではあるものの、最初の会社に定年まで勤めるような時代でもなく、経団連とトヨタが終身雇用を維持するのは難しいと、先行きは怪しく、いざ転職しようと思っても、非大卒の学歴が仇となり書類選考で弾かれる。

 では、後から大卒資格を取れば問題ないかと問われれば否で、新卒一括採用が前提の日本社会では、一度社会に出てから大学に入り直し、リスキリングしてから再度、労働市場に参入することを想定していない。

 学歴の壁をクリアしたところで、職務経歴やら何やらで嫌忌されるのがオチで、どこまで行ってもメンバーシップ型雇用という名の村社会の域を出ないのが実情で、最初に就いた職種(多くはブルーカラー)のキャリアで、定年までの働き方がアンカーのように固定される残酷さがあり、何かの拍子に身体を壊すと勤める選択肢が無くなり詰む。

 こんな泥舟状態だと思うと、ワーホリで出稼ぎに行きたくなる気持ちも理解できる。若者が声を上げたところで、何も変わらないことが、失われた30年の就職氷河期世代で証明されている以上、逃げる選択肢があるうちに、逃げてしまうのは、案外合理的かもしれないと思ってしまう今日この頃である。



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