見出し画像

最近の金融経済動向(2024年1月)


日銀は昨年、売り手になっていた。

 2023年の資金流出入額で、日銀が流入よりも流出額の方が大きく、結果として売り手に転じていたことが明らかになった。

 とはいえ、リーマンショックの煽りを受けた際に、金融市場を安定化するために、銀行から買い取った株の売却を進め、買い入れが少なかったことから、結果的に売り手に転じた訳で、これまで異次元金融緩和もといETFを大量に買い付ける市場介入「買いオペ」の方針が売りに転じたと考えるのは時期尚早だろう。

 無論、総裁も「お金に色はない」とも説明していることから、意図的に行った訳ではない可能性が考えられるものの、日銀砲一辺倒で出口戦略が曖昧だった、これまでに散々臆されていた、日銀が売りに転じたら市場が大暴落する的な論調を覆すには十分な材料だと捉えても良いのではないだろうか。

 現状、主要株主が実質日銀みたいな銘柄が存在するため、市場の健全化を鑑みれば、徐々に保有比率を減らす方向に動かして、異次元金融緩和をあるべき姿に戻そうとしている姿勢は好感が持てる。

 そもそも、リーマンショックで1万円を割った日経平均株価が、アベノミクス以降の異次元金融緩和によって、3万円台を付けた現状に至っているのは、万が一下落しても日銀が買い支えてくれるから的な安心感が市場参加者のマインドとして存在していたからだろう。

 しかし、ETFの買い付けの原資は、中央銀行の役割の一つである、日銀券や預金残高の数字を増やす信用創造によって、日本円を刷りまくっているからに他ならない。

 副作用が全くないといえば嘘になるだろう。現に日本円の価値は対外的に見れば下落しており、それが円安へ誘導されている感は否めない。通貨価値の下落によってインフレが発生して、手持ちの日本円で買えるモノの総量は時間経過と共に減る一方である。

 それでも、資産の一部を株式で保有している金融リテラシーの高い層ほど、異次元金融緩和による株高の恩恵を多分に受けており、懐は痛んでいないのが現状だろう。

 逆に金融リテラシーが十分ではなく、預金一辺倒なパンピーは、物価が上がっているにも関わらず、賃金はそれに追従していないスタグフレーションが進行しており、生活が苦しくなっているのが多数派であり、国民感情として生活苦が形成されているのが実情だろう。

 日本国民の1割程度しか居ない投資人口だけが、日銀砲の恩恵を受け、残りの9割はスタグフレーションに苦しむ構図はどう考えても不健全であり、それを鑑みるとこれまでの株高の恩恵は幻想に過ぎない。

 短期的には痛みを伴う可能性はあるが、市場の健全化の観点から、引き続き売りの姿勢を崩さず、保有比率を減らしていくのが、今後の日銀のあるべき姿となるのだろう。

新NISA、投信はオルカン、個別はJT人気。

 24年から本家ISA並みに拡充されたNISAだが、信託報酬の安いインデックスファンドと、日本株は高配当銘柄に買いが集中している傾向にある。

 S&P500 vs オルカン論争に関しては、個人的にはオルカンの方が直近リターンが多少劣っても、時価総額加重平均により、時代の覇者が最もポートフォリオに多く組み込まれるうえ、米国株式よりも地域分散が効いている観点で、より長期投資に向いていると考えている。

 また、オルカンの中身もおよそ6割は米国株式であるため、おおよそ似たような値動きになっていることから、迷うくらいなら米国一強が続く裁量を排除したオルカンが無難だと考える。

 とはいえ、オルカンも全世界と言っておきながら、投資対象は50ヵ国程度だったり、最近では露の国が主要指数から除外されたことから、ファンドもそれに準じており、必ずしも万能とは限らず、マーケットリスクを丸呑みしているだけとも捉えられるため、その中身を理解し、納得した上でお金を出すのが投資の鉄則ではある。

 そして、個別株投資にも使える成長投資枠では、高配当銘柄に人気が集中しているらしく、ここ最近の日本株相場の底堅さに一役買っている感が出ているが、売買代金の6割が海外投資家であり、日本人の個人投資家は2割ほどと言われているため、個人マネーがどの程度マーケットに影響するのか未知数ではある。

 また、個別株投資はインデックスファンドと異なり、裁量しかないことから、優良銘柄を見極める金融リテラシーが必須となる分、リスクもリターンも大きい。

 無論、高配当銘柄の場合、配当が高いか、株価が下がっているかのグラデーションで、高配当株となっている。

 前者であれば、その配当水準が今後も維持し続けられるのか。後者であれば、業績悪化を市場が織り込んでいる懸念材料の正体は何か。自身の投資方針に影響しない。もしくは許容内なのかを見極められる、知識や経験が身についてから始めても遅くない。

 焦って高配当な銘柄に手を出すと、バリュートラップに引っ掛かる可能性もあり、高配当に飛びついた投資初心者が、数年後にNISAの損益通算できないデメリットを体感して、デメリットが浮き彫りになる未来を想像してしまう。

東京メトロ、24年度上場へ?

 そんな新NISAの滑り出しが好調なことから、政府と都が便乗して東京メトロの株式を上場する方向で調整が進んでいる。

 元業界人としては、東京地下鉄の営業路線はドル箱揃いで、稼ぐ力は山手線沿いから放射線上に路線を伸ばした民鉄の比ではなく、割安なら1単元持ってみても良いと考えているが、恐らく私が妥当だと考えるバリューよりも、市場の期待値の方が高く、割高だから結局要らないとなるのがオチだとは思うが。

 そもそもIPOの抽選に当たらないだろうが、私は長期投資を基本としているため、ポテンシャルがあると判断すれば、IPOセカンダリー投資をするクチである。


いいなと思ったら応援しよう!