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器用貧乏だと消費しない'e


お金の不安は器用貧乏で解消

 昨今の疫病や戦争に伴う業績悪化によって収入が減ったり、インフレで生活が不安定になった方は相当数居ることだろう。私も収入が減ったうちのひとりである。しかし私は、インカムが減少しても不安にはならなかった。

 そんなことは資産所得があるから言えることだと思うかも知れないが、疫病での暴落によって短期的ではあったものの、保有資産の時価が手取り年収相当は減少していた。

 取り崩すには最悪の状況下での収入減だったので、世間一般の感覚では、むしろ泣きっ面に蜂状態だと思われる。それでも不安にならなかったのは、自身が他人よりもお金を消費せず、生活費用が引き締まっていたからだろう。

 お金と言うのは、誰かに働いて貰う権利を便宜上、数値で可視化しているある種の情報に過ぎず、使う相手が居なければいくらお金持ちであっても意味がないのは、無人島生活を思い浮かべれば想像に難くない。

 つまり、私たちが普段何気なくお金を使っている時には、自分の代わりに誰かが働いている。

 着ている服は、誰かが原材料を調達して、工場で加工して、各店舗に搬送されたことで、売り場で値札を付けて並べられている。食べ物も、誰かが作ったり、採ったり、加工したりしたものが物流を介して売り場に並べられている。住居だって、誰かが設計して、大工などが施工して、不動産屋が販売している。

 裏を返せば、自分で服を作ったり、家庭菜園や家畜を飼育して食料を調達したり、住居をセルフビルドする場合、必要なお金は原材料費だけであり、一般的な相場よりも安く、その差額が人件費や付加価値への対価と捉えられる。

 お金を消費しない観点では自給自足が究極だが、それではあまりにも効率が悪過ぎるため、衣食住に関してはある程度金銭消費して、貨幣経済の恩恵を享受した方が近代的な生活が営める。

 しかし、それ以上の贅沢な出費に関しては、他人に頼らずに何事も自力で解決していく器用貧乏スタイルになることで、お金を消費しない習慣が身につき、大量消費社会へのアンチテーゼであり、不安から脱却する手段でもある。少ない金融資産でも経済的に独立することができるLeanFIREへの一歩だと考えている。

知恵と創意工夫で何でも自力で出来る自信

 私は社畜時代、高卒で電鉄会社に就職したため、社会的立場は底辺だと自覚していた。実際、大手企業で正規雇用であっても中身はルーチンで、スキルの溜まらない作業をして、年齢だけ重ねているからだ。

 故に転職市場では職務経験の中身がない割に社会的地位と年齢だけは無駄に高く、いわゆる扱いづらい人と敬遠されるため、まともな事業会社からは全く相手にされず、ドロップアウト前の待遇より良い条件で雇われることは恐らくない。

 同僚の多くはその現実すら知らなかったし、泥舟に乗っている事を自覚して行動に移している同志は、似たり寄ったりな状況で仕方なく現職にぶら下がり、愚痴をこぼし続けているのが常である。

 現職以上の待遇で雇ってくれる所がどこにもなければ、キャッシュフロークワドラント的には起業するか、利子や配当所得で食べていくかの2択になるが、何せ鉄道事業の参入障壁の高さと、スキルの溜まらない単純作業故に、経営者目線で学べることは皆無で、金融資産で食べていくには所得レンジが低過ぎて時間がかかると、控えめに記しても詰みに近い状態だ。

 そんな見た目は勝ち組、実態は底辺な一介の鉄道員が、20代での経済的独立(FIRE)に現実味を帯びて来たのは、工業学科出身で大抵のことがひとりで出来てしまう器用貧乏さに寄る、生活コストの低廉さだと推察している。

 第二種電気工事士の有資格者だから、コンセントやスイッチ、エアコンの工事は出来るし、大型家電の設置工事も独力で済ませてきたから、製品価格に店舗の人件費が上乗せされている家電量販店で買う必要がない。

 自転車も消耗品の交換やパンク修理は自分で出来るし、ミニベロだった頃に、輪行袋の持ち手が千切れた際は、学生時代に支給された裁縫セットで修理して最後まで使えていた。

 食事も駅員時代に、賄い飯を作ると言う嘘みたいな作業があり、安く済ませるために合わせ調味料やルウは買わず、備蓄されている粉や調味料を調合する必要があったことから自炊スキルは無駄に高く、500円もあればコンビニ弁当や惣菜より栄養バランスの良いメシを2〜3人前作るのは大した作業ではない。

 上記のように、知恵と創意工夫で何でも自力で出来る自信から、自分で出来ることは外注しないことを徹底した結果、東京23区に居住しながら、生活費用が家賃込みで月6万円で生活できる領域に達した。

 浮いた生活費をガンガン投資元本に注ぎ込んだ結果、平均的な所得レンジでありながらも、金融広報中央委員会の統計で、20代単身者の上位0.8%に位置する金融資産を保有するに至っている。

不便を楽しむ

 同級生と資産運用の話題となった時に、保有資産額をカミングアウトした時は衝撃的だったみたいだが、同時に、基本的に他人をアテにせず、日常付帯の雑用の殆どを自分で行う器用貧乏な生き様は「真似できない」と言われた。

 人生の悩みや困難の9割はお金で解決できると言われているが、文明が発達して快適そのものな現代人は、例え自分で解決できるものであっても、便利だからとやたらお金を使う嫌いがあると私は思っている。

 電気や水道などのライフラインは必要経費だとしても、時間を買っていると言い聞かせて便利を買っていないだろうか。労働者の場合、そのお金は賃金から得ている。

 仮に時給1,200円の人が10分カットの理髪店を利用した場合、人生の1時間を切り売りして散髪して貰っているに等しい。

 私は初めてセルフカットに挑戦した際に1時間要し、時給換算したら良い勝負となったが、自分で挑戦した場合はスキルが溜まり、継続していると自分でやったほうが効率が良くなる可能性がある。しかし、便利だからと外注していては何も残らない。

 今の20代が人生100年時代と聞くと、先が長いように感じるが、既に5分の1は消化しており、残り時間も3分の1は睡眠時間で好きには使えない。

 更に踏み込むと、賃金を得られる期間が50年、年間2,000時間と仮定しても、時間の切り売りが出来る上限は100,000時間程度しかない。平均時給が1,500円なら、生涯所得の天井は1.5億円だ。

 便利で時間を買っていると言い聞かせて、人生の10万分の1を切り売りするのは勝手だが、その時間を切り売りせず、不便を楽しみながら、何事も自身で出来ることの幅を増やしていき、スキルを身に付けた方が、本当にお金でしか解決できない問題に直面した際に惜しみなく使える上、その方がお金を使う局面はそう多くないため、不安は和らぐのではないだろうか。

 そうして消費せずに済んだ賃金を金融資本に変え、不労所得を生み出す積み重ねが、将来、時間とお金の双方を手にする一歩となることだろう。

[増補]天邪鬼流、ニーズとウォンツ

 しばしば、節約系ライフハックでニーズとウォンツに分けよ的な文言を目にする。ニーズは必要なもの。ウォンツは欲しいもの。優先順位としては、必要なもの、つまりニーズを揃えるのが先で、欲しいものであるウォンツは後回しにするべきだと言うのが通説だ。

 私は逆のように思う。そもそも常識に囚われて、別になくても生活に支障がないものをニーズと勘違いして、必要ないのに惰性で継続的に購入しては、心の底から欲しいと思うウォンツに使えるお金を残せていないのだとすれば、これほど虚しいことはない。

 欲しい物は欲しいから買う。必要なものは、本当に必要か吟味して買う。このルールに当てはめれば、ウォンツ>ニーズと、通説とは逆の構図となる格好だ。

 ここでようやく伏線回収となるが、見出し画像のキーボードに貼り付けているのは、ただのマスキングテープだ。

 ラップトップは持ち運べる性質上、生活傷がつきやすく、買い替える際に下取りに出すことを考えると、できるだけ綺麗に使ったほうが買取価格が高くなるため、リセールバリューの良い製品ほど、保護フィルムや、カバー、ケースを使うのがマストだ。

 これが私が考えるニーズの呪いだ。買取価格を最大化するために、保護フィルムや、カバー、ケースが”必要”だと、先入観を持っては、さも当たり前のように買っていないだろうか。

 かつてはシリコン素材のキーボードカバーを買っていたが、閉じるとキートップの皮脂が画面に付いたり、経年劣化で黄ばむ、伸びると定期的な買い替えが必須でバカらしくなり、買うのをやめた。

 スキンシールを試しても、結局よく使うキーから皮脂で汚れ、スペアがないことから、個別で貼り替えることが出来ず、ランニングコストは需要のあるシリコンカバーよりも高く付くため、これも却下となった。

 では、それなりの粘着力があり、かつ剥がすのが容易で、低コストなものは何か?と自問自答した末に、たどり着いた答えがマスキングテープだった。見出し画像を見てお洒落だと思うか、見窄らしいと思うかは人それぞれだが、このマスキングテープ自体は株主優待で贈呈されたものであって原価はゼロ。

 ついでに底面のスキンシールも著しく劣化していたため、これもマスキングテープで保護しており、今の所不自由していない。

 元々クラムシェルに保護フィルムは不要だと思っているため、これで”欲しい”から買ったラップトップ本体を保護するために、”必要”な装飾品購入に付き合わされることも、そこにお金を支払う必要もなくなった。

 ニーズだからと無条件でお金を出すのではなく、勝手に必要だと思い込んでいないか。知恵と創意工夫で買わなくても済む方法はないかと、常に自問自答すると、必要なものがそう多くないことに気付くはずだ。日本円にして8桁の資産を有していても、手出しゼロでニーズが満たせる快感は何にも変え難い。


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