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中堅企業の定義とは?注目される理由や、国の重点支援領域を解説

中堅企業は大企業の影に隠れがちで、国内経済への貢献度が見落とされ、国からの支援も十分に得られないことは少なくありませんでした。

  • 中堅企業の定義は?

  • どうして中堅企業が注目されているの?

結論から言うと、中堅企業は今後法令にて明確に定義され、従業員数が2000名以下で中小企業に該当しない企業を指すようになります。
国内経済の影響力は大企業より中堅企業が優位な点に国が注目し、中堅企業を的確に支援して経済活性化を促す政策に舵が切られたためです。

この記事では、中堅企業の概要や注目されている理由とともに、国が表明している中堅企業向け支援内容を順にお伝えします。
今後の国の取り組みや経済動向に影響を及ぼすことになる、中堅企業について理解を深めておきましょう。

1.中堅企業の概要

中堅企業の名称は従前からあったものの定義はバラバラでしたが、2024年の関連法令改正で中堅企業が明確に定義されました。
中堅企業の中には市場における競争優位性の高い企業も多く、日本経済を支える重要な企業群です。

今後、一般的に用いられる中堅企業の基礎情報として把握しておきたいポイントは3つに整理できます。

  • 中堅企業とは?

  • 企業の規模分類

  • 中堅企業の代表例

日本経済の成長に欠かせない中堅企業を正しく理解し、今度のニュースや経済動向に乗り遅れないようにしましょう。

1.1 中堅企業とは?

中堅企業は、従業員が2000名以下で中小企業の定義に該当しない企業を指します。

従前、法令では中小企業に関する定義はありましたが、規模の大きな企業は大企業として一括して取り扱われるケースが多く見られました。
しかし、2024年に産業競争力強化法の一部改正に伴い、法律上で中堅企業の定義が明確にされました。

法令における中堅企業の定義は以下のとおりです。

常時使用する従業員の数が2,000人以下の会社等(中小企業者を除く)

内閣府「成長力が高く地域経済を牽引する 中堅企業の成長を促進する政策について」

従業員数が基準の定義ですが、中小企業は定義の対象外のため、今後の企業分類は大企業・中堅企業・中小企業の3つに分かれます。

1.2 企業の規模分類

今後、日本における企業規模を示す分類方法は3つに変わります。
いままで大企業に分類されていた中堅企業が法令により、具体的に定義されたためです。

今後の企業規模を分類する際の基準は、法令に基づき以下のように整理されます。
政府や自治体による各種支援策などによって、追加の基準が設けられる場合がありますが、原則の基準として用いられます。

経済活動の実態を加味した企業分類に改定され、超大規模な企業の影に隠れがちだった中堅企業への注目度が高まる新分類です。

1.3 中堅企業の代表例

法令により規定された中堅企業の定義に該当する企業の中には、社会への影響力が大きい企業も含まれています。

東京商工リサーチの調査結果では、2024年3月時点で中堅企業に該当する企業は9,229社で、そのうち東京に本社がある企業は約49%です。
東京以外の道府県にある中堅企業には、地域経済への貢献度が高い企業や、日本全体での認知度の高い企業も含まれています。

中堅企業は売上や従業員数では大企業に劣りますが、存在感や市場でのシェアでは互角に戦っていたり、上回っていたりする企業もあります。

2.中堅企業が注目されている理由3つ

中堅企業を国が支援しようとしているのは、中堅企業の経済への影響力やパフォーマンスが大企業に見劣りしないためです。

大企業と比較して、中堅企業の特徴が顕著に示されるポイントとして3つ挙げられます。

  1. 地域経済への大きな影響力

  2. 国内経済への高い貢献度

  3. 大企業と肩を並べる収益性や生産性

中堅企業は名称以上に日本経済において、重要度の高い企業群である理由を正しく押さえておきましょう。

2.1 理由1:地域経済への大きな影響力

中堅企業は大企業と比較し、地域経済に対する影響力が大きいのが特徴です。理由としては、中堅企業は大企業よりも大都市圏以外に立地する比率が高く、給与の伸び率も上回っているからです。

例えば、大都市圏以外に進出する大企業が31%に対し、中堅企業は41%と報告されています。
大企業数(1300社)と中堅企業数(9000社)に進出比率を掛け合わせると、地方への進出社数は中堅企業が3200社ほど多いと見込まれます。
参考:内閣府「成長力が高く地域経済を牽引する中堅企業の成長を促進する政策について」

中堅企業の過去10年間の給与の伸び率は大企業より約6%高く、地方進出数と合わせると中堅企業が地方経済の活性化の肝なのは明確です。

2.2 理由2:国内経済への高い貢献度

国内経済への貢献度に着目すると、中堅企業こそ国内経済を支えている企業群と言えます。
内閣府の報告によると、過去10年間の国内経済に影響を及ぼす指標を比較した場合、いずれも中堅企業が大企業よりも優位です。

参考:内閣府「成長力が高く地域経済を牽引する中堅企業の成長を促進する政策について」

上記内容から、国内経済への貢献度は大企業よりも中堅企業の方が高いと言えます。

2.3 理由3:大企業と肩を並べる収益性や生産性

中堅企業は大企業と比較しても生産性や収益性は大きく劣らず、成長性も考慮すると同程度のビジネス成果を発揮できています。

1人当たりの売上高を2021年から2023年までで比較すると、いずれの年も大企業が中堅企業を上回っていますが、その差は5%程度です。
利益率も同様に大企業が中堅企業を上回っていますが、伸び率は中堅企業が同程度またはそれ以上です。

参照:東京商工リサーチ「2024年 「中堅企業」動向調査」
参照:東京商工リサーチ「2024年 「中堅企業」動向調査」

2023年度の中小企業白書では、2009年を基準にした売上高伸び率(=成長性)では、中堅企業が大企業を上回っていると報告されています。つまり、大企業と比較して、ビジネスの生産性・収益性・成長性で劣らず、指標によっては上回るビジネス力を有しているのが中堅企業です。
参照:経済産業省「2023年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要」

3.国が進める中堅企業の重点支援領域4つ

国が中堅企業を法令で規定するのに合わせて、中堅企業への支援を強化しようとしています。
これまで国の支援施策では大企業の分類になり、中小企業向けと比べて支援内容が限られて活用しづらいケースが多かったためです。

中堅企業向けに国が準備を進めている支援領域は4つに整理されています。

  1. 国内投資拡大・イノベーションの促進

  2. 良質な雇用の実現

  3. 外需獲得の支援

  4. 経営基盤の強化・整備

地域経済を含む日本経済の成長エンジンとして、中堅企業のさらなる活性化への期待値が高まっています。

3.1 重点支援領域1:国内投資拡大・イノベーションの促進

国は中堅企業が地域ビジネスの活性化や生産性向上に資する取り組みに対して、支援する制度を拡充しようとしています。
中堅企業は地方を含めた地域経済への影響力が大きく、大企業よりも国内経済におけるビジネス成長の可能性が大きいためです。

国が中小企業向けに検討している具体的な支援施策と支援制度は、以下の4つの組み合わせです。

参照:内閣府「中堅企業成長促進パッケージ」

経済的な負担を軽減する取り組みを通じて、国は中堅企業の売上成長性・収益性・生産性の向上を促進する方針を明確に打ち出しています。

3.2 重点支援領域2:良質な雇用の実現

雇用状況の改善や雇用促進を進め、中堅企業が継続的にビジネスを成長させられる環境の整備も国は進めようとしています。
大企業と比較して、雇用に対する中小・中堅企業の貢献度が大きく、特に地方ではその貢献度がさらに高まるためです。

従来からの雇用確保や人材育成に加えて、賃上げ促進税制での専用枠が創設され、中堅企業は大企業よりも今後は優遇されやすくなります。

参照:内閣府「中堅企業成長促進パッケージ」

ビジネスの根幹であるヒトに関する支援内容を、中堅企業向けに厚くし、人材不足や賃上げに耐えうる環境整備が進んでいます。

3.3 重点支援領域3:外需獲得の支援

中堅企業のさらなるビジネス拡大を見据え、海外市場での売上拡大に向けた支援の取り組みも広がっています。
中堅企業における海外ビジネスの成長率は大企業と比較して低い傾向にあるためです。

従来の輸出モデルと現地進出モデルに加え、インバウンド需要も取り込めるよう、国は支援範囲を拡大しています。

参照:内閣府「中堅企業成長促進パッケージ」

国内ビジネスだけでは中長期的なビジネス成長が困難になるリスクも想定し、海外事業の立ち上げや拡大が中堅企業に求められています。

3.4 重点支援領域4:経営基盤の強化・整備

中堅企業が継続的に成長するためには、経営基盤の強化が重要です。
特に企業規模が大きくなると、活用できる経営資源が増えたり、規模の経済が働いたりとメリットが多くなります。

国が中堅企業の経営基盤強化を支援する取り組みは、以下の2点です。

参照:内閣府「中堅企業成長促進パッケージ」

事業規模の拡大と雇用確保を同時に進める方法として、経営者の高齢化が問題となっている中小企業を中堅企業が統合するケースもあります。
成長意欲の高い中堅企業の拡大を財務負担の軽減により後押ししようと、国は制度設計を進めています。

まとめ:中堅企業の後押しで日本経済の活性化へ

この記事では、国が後押ししようとしている中堅企業の概要や注目されている理由とともに、中堅企業向けの支援施策について紹介しました。

中堅企業は法令により新たに定義される、従業員数が2000名以上で中小企業に該当しない企業群の位置付けです。
中堅企業は大企業と比べて生産性・収益性はほぼ互角であり、国内での成長性だけ見ると大企業に優っています。
そのため、国は日本経済の活性化に中堅企業の成長が重要であると捉え、経済政策も中堅企業が大企業よりも有利になるよう見直しています。

人口減で経済規模の縮小が見込まれる中、今後の日本経済を下支えする役割を期待される中堅企業に注目しましょう。

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