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Early evidence on how Industry 4.0 reshapes MNEs’ global value chains: The role of value creation versus value capturing by headquarters and foreign subsidiaries

Lee, Jeoung Yul ; Kim, Daekwan ; Choi, Byungchul ; Jiménez, Alfredo
Journal of international business studies, 2023-06, Vol.54 (4), p.599-630

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要約

本研究では、インダストリー4.0の導入が多国籍企業(MNE)のグローバルバリューチェーン(GVC)に与える影響を検証しました。特に、本社と海外子会社による「価値創造」と「価値捕捉」の活動がGVCの再構築に与える役割を比較しました。この研究は、韓国の358の多国籍企業を対象にしたパネルデータ(2011~2019年)を基に行われました。

主な発見

  1. インダストリー4.0とネットワーク拡大:

    • インダストリー4.0を導入した企業は、サプライヤーネットワークよりも流通ネットワークをより急速に拡大する傾向があります。

  2. 価値創造と価値捕捉の役割:

    • 本社による価値創造は、流通ネットワークの拡大に大きく寄与。

    • 子会社による価値創造は、サプライヤーネットワークの拡大に影響を与えます。

    • 価値捕捉活動は、どちらのレベルでも流通ネットワークのグローバル化に強く貢献します。

  3. 新しい市場機会:

    • インダストリー4.0によるデジタル接続は、企業が新しい市場を効率的に開拓する手助けをします。

    • 本社主導の基礎研究がグローバルに通用する知識を提供し、子会社はローカル市場に適応した応用研究を行います。

要約のまとめ

インダストリー4.0の導入は、企業のグローバルバリューチェーンを再構築し、市場拡大を効率化します。特に、流通ネットワークの強化や価値創造・価値捕捉の活動が重要です。人事担当者にとっては、組織内のリソース配分やリーダーシップ開発、特にデジタルスキル強化が、今後の戦略において重要な役割を果たします。

大事なポイント

  1. デジタルスキルの強化: インダストリー4.0の成功には、本社と子会社双方の高度なデジタルスキルと連携が不可欠です。

  2. リソース配分の最適化: 本社は基礎研究に、子会社は市場に適応した応用研究に集中することで、全体的な効率が向上します。

  3. グローバルネットワークの拡大: 流通ネットワークを中心に、企業が新たな市場を迅速に開拓できる体制を整えることが重要です。

ちょっと深掘り。。
インダストリー4.0は、「第4次産業革命」とも呼ばれ、デジタル技術を活用して製造業や産業全体の生産性と効率を大幅に向上させることを目指したコンセプトです。ドイツを発祥とし、グローバルに広がったこの概念は、以下のような特徴と技術によって成り立っています。


1. インダストリー4.0の特徴

  • スマートファクトリー: 製造プロセス全体がデジタル化され、IoT(モノのインターネット)で接続されることで、リアルタイムでデータ収集や分析が可能になります。

  • 自律的な意思決定: 機械やシステムが相互に通信し、人間の介入を最小限に抑えて意思決定を行う「サイバーフィジカルシステム(CPS)」が実現します。

  • カスタマイズと柔軟性: 顧客のニーズに応じた製品の個別対応が容易になり、「マスカスタマイゼーション」(大量個別生産)を可能にします。

  • 全体最適化: サプライチェーン全体が統合され、効率とコスト削減を最大化します。


2. 主要な技術

  • IoT(モノのインターネット): 機械やデバイスをインターネットに接続し、相互通信を可能にします。

  • 人工知能(AI): ビッグデータ分析や予測、プロセス最適化に活用されます。

  • ビッグデータ: 生産プロセスから得られる膨大なデータをリアルタイムで分析し、迅速な意思決定を支援します。

  • クラウドコンピューティング: データの保存や処理能力をクラウド上で拡張し、柔軟なシステムを実現します。

  • ロボティクス: 生産ラインの自動化を支える主要技術であり、高精度・高効率な作業を可能にします。

  • ブロックチェーン: サプライチェーンの透明性を向上させ、信頼性の高い取引を可能にします。


3. ビジネスへの影響

  • 効率化とコスト削減: 自動化とプロセス最適化により、製造コストが低下し、稼働時間が短縮されます。

  • 新市場の開拓: デジタル技術を活用して、グローバルな顧客基盤を広げることができます。

  • 付加価値の創出: IoTやAIを通じて、従来の商品やサービスに新しい価値を付け加えられます。

  • 競争優位性の強化: 技術革新により、他社との差別化が図られ、業界内でのリーダーシップを確立できます。


4. 課題とリスク

  • 技術への投資負担: インフラやスキル開発に多額の投資が必要です。

  • セキュリティの問題: サイバーフィジカルシステムの導入に伴い、サイバー攻撃のリスクが増大します。

  • 人材不足: 高度なデジタルスキルを持つ人材の確保が困難です。


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