JR高松駅に誕生を予定する新駅ビル🏫
日本でも珍しい頭端駅として有名なJR高松駅に降り立つ。ホームとフラットのまま改札を通り、コンコースを抜けると北側(正面左側)にあった、平屋建てのスーパーとドーナツ店や居酒屋などの専門店がすっかりなくなっていることに驚く。今は更地と化している。
国鉄宇高連絡線の廃止、瀬戸大橋への移行に伴い高松駅は単なる香川県の玄関口となった。しかし高松築港を埋め立ててできた21世紀初頭の「サンポート高松」開場以降、最も待ち望んだのは「高松駅ビル」の誕生。
高松商圏最後となるであろう大型の商業開発
であり、都心に誕生する商業施設としても正に締めくくりに相応しいものが誕生するはずである。
きっかけはなんと言っても近隣に中四国最大規模となる「新香川県立体育館」の立地が決まったこと。
サンポート北側街区を全て使った本格アリーナの誕生は、高松市のポジショニングを上げると同時に、新駅ビルの場所はこれまで、鉄道やバスを利用するために通る場所から、駅や中心部と体育館を結ぶ導線、高松の人の流れの中心となるはず。
香川県がここ20年ほど、郊外型の大型商業施設の乱開発が進んで、まちなかの商業は防戦一方に甘んじていた。全国的にも一時は雨後竹の子のごとく誕生した、イオンモール、アウトレットモールも出店が一服。今後、一部の人口増加を示す郊外エリアをのぞくと、全国を見通しても大型店の出店可能な場所は駅ビルしか残っていないのではと思ってしまう金城湯池の場所。
JR各社はまるで流通企業かとばかりに駅を金の成る木へ
四国の隣接地でも、例えば九州では鹿児島駅、大分駅が地域一番店となっており、今後も宮崎駅と熊本駅、長崎駅に誕生する計画が進む。
中国エリアでは広島駅が新しくなる。近畿でも三宮駅の開発など新設もあれば古くなったビルの建て替えもある。そのどれも旧来までの駅ビルとはひと味異なる味付けで勝負。
中でも筆者が気になるのが宮崎駅ビル。地元の宮崎交通とJR九周の共同開発がみそ。ここは実に興味深い新時代の駅ビルになる予感がする。
道路を挟んでの2館体制で、駅前広場に面した本館と言えるビルは、商業部分は4階まででシネコンが入り、上層階はオフィスや屋上庭園という。規模的にも高松に最もフィットする。
JR四国は四半世紀前に「徳島駅ビル・クレメントプラザ」
を華々しく開業している。JR四国を牽引する関連事業として、店舗面積は約七千㎡で西側には18階建てのJRホテルクレメント徳島が同居する複合商業施設。
地階の土産物売場や駅バル横丁街、上層階はレディスファッションからカルチャー、レストランフロアまでフル装備の徳島初となる大型専門店ビル。現在はハローワークやパスポートセンターの公的なテナントがインしているものの、これは入居テナント不足からだろう。
8月に閉店した駅前の再開発ビルに入るそごうデパートともども、徳島の顔となる中心商業施設として、隣接の大規模な立体駐車場と共に、ホテル併設の宴会場利用客を取り込む機能も備えている中心街の集客施設。
この駅ビルだが1995年度に70億円を売り上げたのをピークに、現在では約4割の売上まで縮小したとのこと。いくらバブル時の計画とは言え、当時の徳島駅前はそれだけの集客力が見込めたのに対して、現在の商圏ではこれだけ大きな箱を埋めるのに苦心の跡が伺える。
フードホールの登場が施設の魅力アップに
無風状態であった徳島市場もご多分に漏れず、郊外型の大型店の出店ラッシュにあい、フジグラン、ゆめタウンやイオンモールなどの大型量販店が2010年代にかけて相次いで出店したことでにわかに暗雲が立ちこめた。
駅ビル横に計画されていた徳島市の市民ホールも一転候補地からはずれ、自力で集客をせざるをえない状況下。そごうデパートもピーク時と比べると競争力がなくなったことで駅前の求心力低下に歯止めが掛からなくなった。その結果、そごうデパートの撤退へと至る。反対側にあった専門店ビルのとくしまシティは早くに撤退して、跡にはビジネスホテルができた。
新高松駅ビルでは、消費者の購買傾向が全く変わってしまった現代において、いかに人を集めるかの仕掛けやテナント構成の工夫が必要だ。
個人的な希望としては、せっかくのユニバーサルな平面構造の駅なので、建設費用が少なくて済むように、地階は設けず1階にはデパ地下レベルの多様な総菜から土産まで一部、イートインも含む食品売場と、スーパー形式のセルフ売り場のミックスで、鉄道利用者だけではなく、近隣や島嶼部住民のニーズを吸収する。これを最大限の集客に使い、3階・4階は雑貨・インテリアやファッション売り場、4階は書籍・サービスショップが相応しい。
上階には駅直結のシネコンの導入を検討して頂きたい
これは昨今の駅ビルにはマストのコンテンツとなっているからだ。
高松市には郊外の福岡町にあるイオン髙松東に一軒しかシネコンがない。ここは路線バスも一時間に一本程度しかなく誰もが気軽に行ける環境にはない。40万都市なら都心にも是非シネコンが欲しいところだ。
そして目玉として是非、導入を検討していただきたいのは、2階に「フードホール」を導入してみてはいかがだろうか。この「フードホール」の魅力。当地にはまだこの業態はないのだが、都会を中心に増えていて、営業時間中、集客ができて稼働率が高い。
このフロアを目的地にしてもらえる魅力ある空間。食のエンターテインメント化の代表と言ってよい業態であり、レストラン街とは違いランチとディナーの間のアイドルタイムでも、人が集う。そこで食事やお茶をしたり仕事をしたり打ち合わせやリモートワークにも使える多様な空間。
上の写真は大阪・梅田の阪急三番街の地下2階にある「うめだフードホール」。 全18店舗、席数約千席。駅階下の立地で夜遅くまで満席御礼。
全時間帯の集客に効果を発揮するのは何故か。進化形の「フードコート」として、より高級感があり何よりメニューがとても洗練されているので、デートにも会食にも使える。これから繰り出す前の集合場所に、もちろんここを目的に、または一杯呑んできた後の締めにも使える。ファミリー客だけではない、出張客から観光客、グループ客まで幅広いターゲットに訴求可能。
新県立体育館がオープンすると、イベントやスポーツ観戦後の飲食の場としても役割が期待される。ファッションブランドの元気がないなかで、飲食の集客力はあなどれない。1階の食品売り場で買った食材を2階で調理をしてくれるサービスなども面白いかもしれない。新駅ビルにはこれまで高松市になかった新感覚の商業施設としてデビューするのは何時のことだろう。
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