見出し画像

「誰も見たことがないその先の世界へ」 コーポレートの存在証明


ごあいさつ

平素より格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。株式会社ダイニーのコーポレート本部の山田レオでございます。
創業期からこれまで、ダイニーのコーポレート業務全般を管理してまいりました。
このたび、アドベントカレンダーの一環として、普段あまり注目されることの少ない当社のコーポレートチームが、こうして世間の目に触れる機会をいただけたことに、心より感謝しております。
私の詳しいプロフィールについては、当社のブランディングチームが素敵な記事を作成してくださいましたので、ご興味のある方は、ぜひ添付の記事をご覧いただければ幸いです。

本記事では、当社の2024年におけるコーポレートチームのさまざまな取り組みの中から、FP&A(財務・経理)、リーガル、経営企画の領域の目線から、主要なハイライトを振り返ります。

2024年のコーポレートチームの取り組み

なお、人事領域の取り組みに関しては、ピープル&カルチャーの諏訪さんおよび宮田さんが、経営企画領域については、山本さんが執筆された素晴らしい記事もございます。併せてご覧いただけますと幸いです。

それでは、お楽しみください。


新規事業への挑戦

ダイニーキャッシュレス

2024年9月に正式リリースされたダイニーキャッシュレスですが、その前段階として、2023年秋にトライアル版をリリースし、仮説検証を実施していました。
しかし、 GTM(Go-to-Market)に際し、顧客に対してより提案力のあるプロダクトを提供するためには、「どのようにすれば決済手数料率を最低限まで下げ、加盟店の売上や利益率を最大化できるか」という課題が常に存在しました。
そのため、どのような PSP (決済代行会社)やアクワイアラー(加盟店契約会社)と協業し、どのような決済エコシステムを構築すれば実現可能かを検討し、さまざまな会社と情報収集や面談を重ねた結果、 Adyen さまと提携する方針を決定しました。

単なる SaaS 企業であった当社には、当時はまだ、金融業界で求められるような堅牢な体制が十分に整備されておらず、FinTech 企業への転換に伴い、名実ともに大きな変革が必要となりました。
2024年9月のリリースまでの限られた時間の中で、多くの点で全くのゼロからの体制構築が必要だったため、非常に苦労しましたが、 Adyen さまやリーガルチーム(顧問弁護士を含む)と連携し、Slack でのコミュニケーションや週次で定例会を行うなどし、協議を繰り返すことで、必要な体制を検討し、不足要件を洗い出した上で、慎重かつスピーディーに整備をすることができました。
プロダクトチームは、 PCI DSS への準拠、リーガルチームは、飲食店へのプロダクト提供に必要なポリシーやレギュレーションを策定し、リスクを抑えた運用体制を構築しました。
また、コンプライアンス強化のために TRUSTDOCK や World-Check などのスクリーニングツールを導入し、1ヶ月1,000件の受注にも対応可能な盤石な社内体制を整備しました。
これらの成果により、国際ブランドからの承認を得て、無事に日本初のスキームでの契約を Adyen さま と締結することができました。

グローバル投資家からの資金調達への挑戦

当社は、2024年9月に Bessemer Venture Partners さまとHillhouse Investment Management さまを Co-Lead として Flight Deck さま と Eclectic さまの4社を中心にシリーズBの資金調達の実施を発表しました。
資金調達の裏側の全容に関しては、代表の山田が素晴らしい記事を執筆しておりますので、ぜひご覧ください。

本記事では、主にファイナンスチームとしてのバックエンドの対応について、投資契約の交渉と DD 、海外送金にフォーカスを当ててご紹介ができればと思います。

契約交渉

契約交渉に関しては、ファイナンスチームが一同に口を揃えて言いますが、資金調達活動において最もエキサイティングでスリリングなプロセスでした。スタートアップドリームを身をもって感じられる貴重な瞬間です。
残念ながら今回ラウンドのバリュエーションや契約内容の詳細についてはお伝えできませんが、コーポレートファイナンス目線から可能な範囲でお話ができればと思います。

当社が前回ラウンドまでに締結した投資契約には、国内特有の慣習に基づいた内容が含まれており、これがグローバル投資家にとっては標準的でない状況でした。
そのため、文化や市場環境の違いが課題となり、調整が必要不可欠でした。この調整において、新規投資家と既存投資家の双方に対して、それぞれの立場や権利をめぐり、以下のような主要な条項について熱い議論と交渉が行われました。

国内VCと海外VCにおける一般的な契約条項の違い
※当社のラウンド前後での契約内容の違いではありません。

日中や深夜、土日祝日を問わず、投資家や彼らのカウンセルとの対話を繰り返し、その内容を即座にリーガルチームにフィードバックをすることを繰り返しました。また、必要に応じて双方のカウンセルが直接面談を行い、契約内容の精査やブラッシュアップを進める場面もありました。
国内外で異なる契約慣習の違いを埋める作業は骨の折れるものでしたが、粘り強い対話と交渉を通じて、適切な落とし所を見つけることができました。この過程で投資家との信頼関係を築き上げるとともに、契約内容は当初よりも大幅に向上し、双方にとってより良い形となりました。
関係者全員が協力し合い、一歩ずつ積み上げた結果として、信頼と成果の両方を得ることができたと確信しています。

DD

今回の DD における Q&A は非常にスムーズに対応できました。その背景には、過去のシード~シリーズAラウンドでの管理不備による失敗から得た教訓があります。現在、当社のコーポレートチームでは、日頃から DD や監査を想定したデータ管理を徹底しています。

  • 書類管理

    • ペーパレス化の徹底

    • スキャン保存・クラウド保存の徹底

    • バージョン管理の徹底

  • 会計・財務・税務記録

    • 帳簿と仕訳の正確性を高める

    • 銀行取引明細の整理

    • 資産台帳の整備

    • 税務書類の整理

  • コンプライアンスと規程の整備

    • 三六協定等の規程類や許認可や法令関係書類の整備

    • セキュリティやリスク管理体制の整備

また、インタビューでは、相手が英語ネイティブの場合には日本語で、相手が日本語ネイティブの場合には英語で答弁することや、投資家や専門家からの質疑応答に物怖じをすることなく、とにかく簡潔に伝える、余計なことは言わない、必要に応じて、プッシュバックをする等して、議論を当社に有利に展開できるよう工夫しながら進めました。
スタートアップの性質上、投資家が優位な立場に感じられることが多いかもしれません。しかし、忘れてはならないのは、企業は投資家に利益をもたらす存在であり、対等な関係であるという自信を持つことです。
決して驕ることなく、謙虚さを保ちながらも、自らのビジョンや価値を信じ、毅然とした態度で交渉や議論に臨むことが、結果的により良い関係構築と成功に繋がります。

海外送金

海外送金においては、 FEFTA(外為法) 、ドル預金口座の開設、リフティングチャージフィーの交渉、投資家からの KYC (本人確認)の準備を行いました。
至極当然ですが、まず、海外からのドル建て送金を受け取るためには、ドル建て口座の開設が必要になります。
投資家とのハードな交渉の最中では、事務手続きがどうしても後回しになりがちですが、クロージング日までに確実に口座開設を済ませる必要があるため、早いうちに取引銀行に相談をすることが大切です。
FEFTA に関しても、プロセスに4週間程の時間を要するため、 TS が固まり次第、申請を先に進めておくことをおすすめします。

また、海外からの被仕向送金においては、リフティングチャージが発生します。
日本のメガバンクでは平均的に送金額の0.05%が手数料として徴収されており、例えば $50MM USD を受け取る場合、現在の円安の市況下では約375万円の手数料が発生します。
こちらも詳細についてはお伝えできませんが、当社では、銀行との交渉の結果、リフティングチャージを大幅に引き下げることができました。
仮に、この375万円を CAC(顧客獲得コスト)に投資した場合、当社では数倍規模の ARR(年間経常収益)を創出することが可能なため、この交渉がもたらした効果は非常に大きいと実感しています。
このようなコスト削減は、目に見える損失だけでなく、潜在的なビジネスの機会損失を防ぐ上でも非常に重要なため、何事に対しても見過ごさず、必ず交渉を行うことが重要です。
特にビジネスの場では、小さな条件の差が将来的に大きな影響を及ぼすことがあります。
しかし、銀行という機関の性質上、柔軟な対応を引き出すことは一般的に難しい場合が多いです。そのため、日頃から融資やビジネスマッチングを通じて、銀行および渉外担当者との良好な関係を構築しておくことが必要です。これにより、交渉が必要な場面での対応力が向上します。

また、グローバル投資家からの海外送金に際し、今回ラウンドのステークホルダーに対して、 KYC のプロセスがありました。 KYC は電話で行われ、日中や深夜問わず、ランダムに英語で電話がかかってきました。
そのため、殆どの方は即座に電話に出ることができず、また一部の方は、英語を全く話すことができなかったため、本人確認がなかなか完了せず、スケジュール遅延が発生してしまいました。
非英語話者に対しては、グローバル投資家側のカウンセルに同席いただき、通訳をしてもらい、なんとか対応完了をすることができましたが、各所との非常に煩雑な調整が求められました。
私も KYC の対応をしましたが、各国の対応についても面白い差分があったのでご紹介します。

  • 北京からは時差がほとんどないため、日中にごく当たり前に電話がかかってきました。

  • ロンドンからは9時間の時差があるため、事前にメールで日程調整をした上で、 ZOOM を実施しました。

  • ニューヨークからは14時間の時差がありますが、事前通達など一切なく、週末の深夜に何度も何度も電話がかかってきました。

オペレーション構築と最適化

新規事業や資金調達への挑戦が注目を集める一方で、定常業務のオペレーション構築と最適化を着実かつ粛々と進めてまいりました。
事業拡大に伴い案件が急増し、従来の仕組みでは対応が困難になることが予測されたため、オペレーションの大幅な見直しと改善を実施しました。

主要な改善事項:

  • FP&A・経営企画チーム

    • 主に予実管理、決算の早期化、請求業務改善、債権管理の強化を行いました。

  • リーガルチーム

    • 主に契約管理体制の強化、契約書雛形の整備、コンプライアンス強化を実施しました。

具体的な成果:

  • 1月にリーガルチームを立ち上げ、5月に経理チームを再編成

    • チーム間で役割と機能を分担し、一丸となって協働する体制を構築しました。

  • 予実管理

    • 予実のトラッキングが正確にできておらず、正しい収益とコストの認識まで決算の締めまで時間を要していましたが、バクラク申請を活用し、予算のモニタリング体制を整備し、月次決算前に速報値を出す体制を確立しました。

  • 決算の早期化

    • これまで15営業日かかっていた月次決算の締めを、8営業日まで短縮しました。

  • 請求業務改善

    • 情報共有体制の不備、レビューの遅れやイレギュラーの発生による遅延を排除し、業務を正常化しました。

  • 債権管理

    • 以前は銀行の入出金明細をもとにスプレッドシートで管理しており、属人的でかつ不正確な状況でしたが、MFクラウド債権管理への移行により、属人化を排除し、正確性を担保し、業務量を約90%削減しました。

  • 契約管理体制

    • 電子帳簿保存法への対応として Google Drive での契約管理から Hubble への移行を実施しました。

  • 契約書雛形の整備

    • さまざまな契約書の自社雛形を用意し、柔軟に交渉を進められる体制を構築しました。

  • コンプライアンス強化

    • FinTech 企業への転換に伴い、社内教育や委員会を実施しました。

改善を通じて、特に、チーム間の協力体制や業務フローの最適化は、今後の事業拡大を支えるコーポレートのあるべき論を整理することにとても役立ちました。
一時的な業務効率の向上と組織全体の機能強化を実現することができましたものの、断続的な練度や強度の高さを担保できる状態ではございません。
仕組みは事業や組織の成長や変化に応じて、迅速に形骸化してしまうため、常にアジャストし、アップデートを続ける必要があります。
事業や組織が大きくなってから対応しようとすると、非常に大きなエネルギーを要するため、早い段階から将来を見据えて、少しずつ体制構築を進められる状態を整えておく必要があると強く実感しました。

ダイニーのコーポレートがめざす未来

2024年の振り返り

2024年は、挑戦と課題が交錯し、まさに揺れ動く一年でした。いくつかの取り組みにおいては確かな成功を掴み取ったものの、それと同時に解決すべき課題も深刻さを増し、それらにどう向き合うかを強く問われました。まだ誰も見たことのない世界への挑戦の中で、成功と救済を求めて前に進むべく、我々は苦しみ、葛藤しながらも着々と前に歩んできました。

来年は、事業拡大をさらに進める中で、グローバル化やオフィス移転、そして300人規模の組織を支えるための仕組み作り、さらには通過点である IPO に向けた準備など、避けては通れぬ大きな課題が控えています。それらを乗り越えなければ、会社の未来は築けないと感じています。この先に待ち受ける困難に対して、我々は決して逃げず、むしろその先にある成功という名の救済を信じて進み続けなければならないと考えています。

コーポレートの役割は、事業が健全に、そして持続可能に成長できるための仕組みを、常に時と場合に応じて作り続けることだと思います。しかし、その過程には必ず予期しない困難が訪れます。困難は我々の前に立ちふさがり、時にはそれに押し潰されそうになることもありますが、その度に立ち向かい、試行錯誤を繰り返しながら、仕組みを進化させていくことが求められます。挑戦や苦悩の先にこそ、成長があり、未来が見えてくると信じています。
2024年を振り返ると、数多くの困難が我々を苦しめ、その重みに何度も押し潰されそうになりました。しかし、その度に立ち止まり、もう一度自らの足元を見つめることで、新たな視点と気づきを得ることができました。これこそが、我々が進むべき道を見極めるための試練だったと感じています。そして、その過程で、基本的なことながらも、コーポレートの強固な体制、チーム間の協力や業務フローの最適化、学習とアウトプットの連続が事業拡大において不可欠な土台となることを確信しました。

2025年の挑戦

2025年に向けて、まずは足元の仕組みを改善し、さらに強化をすることで、未来に向けた準備をしていくことが必要です。事業や組織の成長には、その成長を支えるための仕組みを作り続けることが欠かせません。その一歩一歩が、確実に会社の未来を支える礎となると考えています。
そして、非連続的な事業成長と大きな成功のためには、まず何よりも優秀な人々を迎え入れることが不可欠です。これからのフェーズの事業拡大を支え、挑戦を乗り越えていくためには、一人一人の力が重要であり、優れたスキルと情熱を持った人々との協力が欠かせません。

さらに、我々が本当に目指すのは単なる事業の成長ではなく、日本とアジアの再興のために、外食産業に革命を起こし、"飲食"をもっと楽しくおもしろくし、すべての人の飲食のインフラとなることです。これまでの常識を打破し、新たな価値を生み出すために、一緒に挑戦し、共に成長できる仲間と力を合わせていきたいと強く思っています。

共に未来を創る意欲と情熱を持った人々と仕事をすることで、業界全体を変革し、成功を手に入れることができると確信しています。
志の高い憂国の士が、共に未来を創る仲間として加わることを心よりお待ちしております。

我々と共に、事業拡大と業界革命を成し遂げ、壮大な目標に向かって歩み、情熱を持った方々の応募を、全力で歓迎します。
誰も見たことがないその先の世界へ一緒に行きましょう。

いいなと思ったら応援しよう!