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【指揮者メモ#390】「指揮は教えられない」へ抗ったシェルヘン

【第390回:「指揮は教えられない」への抵抗】
 
20世紀には戦前生まれの世代を中心によく言われたのが、指揮は教えられないという言説。岩城宏之先生も「指揮は教えられないから見て覚えろ」と弟子に伝えると書いておられたし、たしか朝比奈先生も同じことをインタビューで仰っていた気がする。実際、朝比奈先生は公式には弟子を持たなかった。

20世紀の初頭までに、ピアノなど他の楽器の合理的なメソッドが確立して神秘的な部分が少なくなった結果、指揮法は神秘のヴェールに覆われた最後の砦のようなポジションだった。指揮者もわざと、そのように見られることを好んだと思う。

その風潮に対して戦前の段階で抵抗した代表格がシェルヘンだったと思う。「指揮者のハンドブック」は戦間期の出版だが、今でも最高の教科書の一つだ。彼が残したルガノ放送響とのベートーヴェン交響曲全集(唸り声付きでブッ飛んだ演奏で有名)に惑わされてはならない。彼は凄い知性の持ち主だった。豊富な譜例とともにバトンテクニックを見事に整理している。
 
指揮者メモ 伊藤玲阿奈・玲於奈・レオナ

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伊藤レオナ(在NY指揮者)
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