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【指揮者メモ】クラシックにおける有名な偽書

【クラシックにおける有名な偽書】

「ショスタコーヴィッチの証言」はもともと公開されているインタビューからも採られていたと思うので、内容すべてが嘘ではない。加筆によって史料価値が下がった文章くらいに思っている。戦国時代の「武功夜話」みたいなものか。

バッハの後妻が書いたとされる「バッハの思い出」(講談社学術文庫)は完全に偽書。というより、元はフィクションだったのにドイツの出版社が本当の作者を隠したせいで「偽書」になった。

5年ほど前に邦訳が出たリストによるショパンの伝記。私はあれも偽書に近いと判断している。執筆は十中八九リストではなくカロリーネ(離婚後のパートナー)。興味深い記述もあるが、全体的にショパンの実像が見えない曖昧な美文調で、あの大げさな修辞がカロリーネ文学の特徴。ショパンを知りたければ本当に近かった友人たちの証言を追うことだ。

それでも翻訳を手掛けた八隅裕樹さんは信念をもって素晴らしい訳を付けていて驚く。そしてロマン主義文学の一側面を見事に伝えてくれた!私はそこに多大な価値を見い出していて、彼をとても尊敬し、感謝している。

指揮者メモ 伊藤玲阿奈・玲於奈・レオナ

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伊藤レオナ(在NY指揮者)
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