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太魯閣で出会った人々(2) それでも気持ちは通じた
純朴さに心打たれる
ここまでしてもらったらコーヒーだけでは申し訳ない。それで、彼女たちが着ていた赤い民族衣装を買った。合わせて帽子も買うことにした。上着と違って帽子には色んなタイプがあったが現代的なCapが中心だった。
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あなた達民族の伝統的なデザインが欲しいと伝えた。この質問がトリガーとなって、在庫のダンボールを引張出してきて、何かの雑誌の写真と見比べながらあれだこれだと、ちょっとした作業が始まった。ひとしきりの時間をつかって選び出してくれたのが黒いやつだった。後日得た知識と経験とを総合すると、この店で買った赤い衣装は原住民風にデザインされた観光客用のものだった。確かに彼女たちはそれを着て店に立っていたが民族の伝統衣装ではなかった。帽子についても同じで、できるだけ近いものを真剣に探していてくれたということだった。効率の点で言えば「無いよ」と一言で済むところ、彼女達はそうはしなかった。一観光客の無知から発するロマンに一々付き合ってくれたのだった。段ボール箱の前にしゃがみ込み真摯に検討してくれていた彼女たちの姿を見ていて、その純朴さに心打たれてしまった。
心理戦
この若い女性店員は歌が好きなようで、私が店に滞在している間中、ずうっと歌っていた。決してハミングなどではなく大きな声で歌い上げている。それがまた綺麗な声で聞き惚れてしまう。
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ついに我慢しきれなくなって「写真を取らせて下さいっ!」と申し込む。ここは英語とジェスチャーでアタックした。すると彼女もジェスチャーで返答してきた。指で口から頬に向かって帯の形を示し店内を指さす。つまり「私を撮るな、店内にもっと良い被写体がある」と言う意味らしい。
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彼女の後について店内に入って行くとおばあさんのポスター写真が貼ってあった。口から耳に向かって頬に入れ墨がある。さっきの彼女のポーズはこれだったのか。まさしく、私が要求していた「あなた達民族の伝統」がそこに有った。
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このようにして撮影の被写体候補が若い女性店員さんからポスターのおばあさんにかわった。
大げさにお辞儀
私はそのポスターを指差し、「この人はあなた達の大切なリーダーなんですね」と質問をした。
「シーダ(そうよっ)」
との返答を聞き取った。それならばと、深々と腰を折って5秒ぐらいかけて頭を下げてゆっくりと大げさにお辞儀をしてみせた。それからポスターの写真をとった。彼女たちは何事かと目を丸くして驚いていた。
「してやったり」。
被写体変更への私なりの返礼だった。
その後しばらく土産物見学をしてから店を立ち去ろうとした。その時、テラスの反対側、遠い方の縁から若い女性店員が大きな声で呼びかけてくれた。
とっさに習ったばかりのモホワイッスバーライ(ありがとう)と言いたかったが、その言葉が出なかった。
「モ、モ、モ、、、」
とどもりながら立ち去った。しかし、一連のやりとりを経て、短い滞在時間の中でも互いを大切に思う気持ちは通じ合っていたと感じた。(つづく)
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