ESG投資にはダマされないぞ!
#ESG投資 についてSNSで色々見かけたので、私の考えていることを書いておきます。
ESG投資とは
ESGについての説明を幾つか拾ってみました。
ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。投資するために企業の価値を測る材料として、これまではキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報が主に使われてきました。それに加え、非財務情報であるESG要素を考慮する投資を「ESG投資」といいます。ESGに関する要素はさまざまですが、例えば「E」は地球温暖化対策、「S」は女性従業員の活躍、「G」は取締役の構成などが挙げられます。
(GPIFのWebサイト)
財務情報に加え、E・S・Gの要素を考慮して投資判断する、としています。
ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のことです。
ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと言えます。
(大和証券のWebサイト)
随分と違った説明のように感じます。この種の理解がヘンテコな議論を引き起こしているのだと思います。つまり、
E・S・Gの要素で優れている→持続的に好業績を生み出す
こういう図式を念頭に置いているようですが、これがおかしい。
逆ではないでしょうか。持続的に好業績を生み出していくためには、E・S・Gに配慮した企業活動をしていくことが求められる、ということです。そういう意味で、投資判断において、企業の価値創造(主として財務情報になるでしょう)と企業活動(主として非財務情報になるでしょう)との評価のウエイトをどうするか、がESG投資の本質だと思います。
ESGに絡めて「論語と算盤」を挙げていらっしゃるのを見つけました。まさに「論語と算盤」だと思います。上で挙げた「環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資」は、「論語」の度合いが高すぎて「算盤」が伴っていないように感じられるのです。株式投資において、これまでも「論語」(道徳)の要素はいくらか加味されていたでしょうけれど、このウエイトを上げるのが「ESG投資」だと思います。「算盤」が強すぎるのはアカンでしょ、って。同時に、ESG情報やそれから弾き出されるスコアをメインに投資対象を選別するのは「論語」が強すぎてこれも違和感があります。
ESGの考慮が好リターンにつながるためには
ここでも「論語と算盤」だと思います。「算盤」の部分をしっかり見ているからこそ「論語」の部分を調査、検討する意味が出てくるものと考えます。事業がきちんと価値創造ができているか、株主他から調達している資本コストを満たす業績が出ているか、今はちょっとしんどいけど将来の見通しはどうか、という面でスクリーニングを行う。その上でESG要素で問題がないか、問題があれば改善の可能性があるか、それを目的とした対話の機会があるか、という検討プロセスがあるべき姿ではないでしょうか。ESGに問題があっても可能性があれば、まずは少額でポートフォリオに加えるということも一つの選択肢でしょう。
こうしたプロセスは非常に大事です。なぜなら、株式投資は資本配分だからです。自分のお金、資本をどんな事業に投じるか。それを考えれば、儲かるならなんでもいいや、ではダメでしょう。株式投資することでごく少額でもオーナーになるのです。オーナーになった以上はちっぽけでもその投資先の企業活動に責任があると思います、全くのゼロではありません。ESGの面では無茶苦茶だけど儲かるならそれでいい、は無責任ではないでしょうか。投資の成果は社会から頂くのですから。
ESG投資とインデックス運用は最悪の相性
ESG投資が好リターンにつながるためには「算盤」の評価が非常に大事です。投資先の「価値」をしっかりと見極めてこそ、ESG要素の検討、評価を付加する意味が出てくると思います。したがい、投資先が生み出す「価値」には無頓着で、どれだけ投資するかを市場の値付けに任せきりにしてしまうインデックス運用と相性は最悪だと思います。ESGインデックスが存在することは別に問題ないと思うのですが、これに連動する投資成果を求めるインデックス運用で好リターンがえられるとは思えません。対TOPIXであれば大負けすることはないでしょうけれど、際立った違いが出ないでしょう。「算盤」を主体的に評価しないのがインデックス運用なのですから。GPIFは2019年3月末時点で1兆6,900億円を、そのESGインデックスに連動するポートフォリオに投じているようですが、これには首を傾げてしまいます。
ESG投信に期待すること
「論語と算盤」がちょうどいい具合に、投資先の選定、評価に組み込まれたESG投資は必要だと思いますし、その投資が実践されたポートフォリオが持続的に好リターンを残すものと私は想像しています。その意味で、ESG投信を設定する際には、「論語と算盤」をどのように組み合わせて投資先の選別を行うのか、ポートフォリオをつくるのか、具体的に、丁寧に説明する必要があると思います。そんなESG投信の登場に期待します。