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日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか (著・岩尾俊兵さん)
読み終えました。
本の構成です。
はじめに 日本が失った経営
序 章 日本の経営をめぐる悲観論は正しいのか
第1章 逆輸入される日本の経営
第2章 実践一辺倒の日本、コンセプト化のアメリカ
第3章 経営技術をめぐるグローバル競争時代を生き抜くために
第4章 長年にわたる日本企業の強みもメイド・イン・アメリカに?
第5章 最新シミュレーションで日本の経営技術をよみがえらせる
第6章 コンセプト化とグローバル競争の先にある未来
本文の一部が以下の記事で紹介されています。
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結構な数の付箋を付けましたが、思わずページそのものに折り目を付けたのがこの箇所です。
このとき、大規模なイノベーションかどうかは結果に関する判断であり、一方でカイゼンはプロセスに関する概念である。だとすれば、カイゼンというプロセスを踏んでいても、ひょんなことから大規模なイノベーションが起こることも論理的にはありうる。
236頁
第2章で紹介されるホンダさんの原付のエピソードは興味深いものでした。
ホンダさんがほんの数年で米国のバイク市場で60%のシェアを獲得したというお話し。1960年代のことです。
ホンダの戦略はBCGの分析のように、事前合理的に緻密に組み立てられたものではなかった。しかし、一度小型バイク市場というニッチを発見してからは、ホンダはこのニッチ市場でのシェア獲得と市場そのものの拡大のために、次々と合理的な施策を打ち出したのである。
102-103頁
どんな施策が講じられたのか、ぜひ本で確かめてみてください。
ホンダさんのこのお話について、 #ハナウタカジツ さんが教えてくださったポッドキャストです。オススメです。
デンソーの技術者たちは、このニ次元コードにクイック・レスポンスというコンセプトから頭文字をとって「QR」コードと名前をつけたといわれる。
いまでは、世界中の人たちがQRコードを使って商取引をおこなっている。
日本の生産管理コスト削減のための経営技術が、最終的に世界を変えた
122頁
「資源は有限でも価値創造は無限だ」
131頁
この点はスゴく大事です。知恵やアイデア、その実践で生産性をどう高めるか、それを追求し続ければ、価値が創造される可能性は高まると思います。
思考の抽象度が高まれば高まるほど、経営理念や経営哲学となり、
抽象化・コンセプト化が日本で進まなかった理由として、日本の経営技術は、
国内の文脈や特定企業内・産業内の文脈に依存したものが多かった
とされています。結果、文脈依存度を低めて、より多様な場面で通用する抽象化、コンセプト化が進まなかった。一方で、海外、特に米国の、抽象化を研ぎ澄ませた経営技術が有り難がられるようになってしまった、と。そうした技術の多くのルーツは日本企業に求めることができる、、、一体、何をやっとんねん!と。
コンセプト化はそれ自体が経済的価値をもたらし、企業にとって新たな収益源になるかもしれないものだ。
152頁
グローバル化が加速する昨今において、コンセプト化の力、文脈に依存しない論理モデルと作って他言語でも図でも数式でもアイデアを表現できる力は、企業にとってますます必要になってきている
159頁
コンセプト化、抽象化が足りない。これはあまり「思考していない」ことを示している可能性があります。
第4章 長年にわたる日本企業の強みもメイド・イン・アメリカに? の一節で、日本は「何に」負けたのか? という問いが立てられています。
もっとも単純な答えはコンセプト化の力で負けた
と、繰り返し、コンセプト化、抽象化の拙さが指摘されています。
第5章のこの指摘も大変興味深いものがありました。
既存研究の多くはカイゼンを「いわゆるイノベーション」「大規模イノベーション」とは別のものであると考えてきた。
むしろ、イノベーションとカイゼンを対置して、「技術者主導のイノベーション一辺倒ではなく、従業員全員参加型のカイゼンも大事だ」といった主張をおこなう点に独自性を見出してきた
229頁
そして、これです。
カイゼンには大きなイノベーションになる可能性があるが、それをどこまで実現させるかは全社レベルのマネジメントの問題である
240頁
カイゼンの持つ可能性を、マネジメントがどれだけ信じられるか、ということと理解しました。
イノベーション発生の条件
「新しいアイデアと、そのアイデアを実現するのに十分な資源が出会い、結合すること」
274頁
この本が訴える、岩尾さんのメッセージは熱い、とても熱い。
あとがき のメッセージからです。
「人間こそが価値創造の主役であり、価値創造の障害となる対立を解消し続けるのが経営だ」
どうやったら新しい価値が生みだせるか、実現しうるか、それを追求し続けること。それが考えること、働くこと。
僕自身にしかわかり得ないメモ書きのような記事になってしまいました。申し訳ありません。
抽象と具体の往復運動を増やすぞ、そうあらためて感じた読書体験となりました。