会社という迷宮 (著・石井光太郎さん)、これから何度も読み直すことになりそうな重厚感の塊みたいな本でした
NVIC 奥野一成さんがインタビュー記事で紹介されていた1冊です。
奥野さんを何度も涙させる本とは、一体、、、
実は、この本、以前からとても気になっていた一冊です。
「読み終わった本のほとんどを手放す」という楠木さんが処分できなかった本として記憶に留めていました。
でも、これまで手に取りませんでした。奥野さんのインタビュー記事を読んで「これは読んどけ!」と背中を押されたように感じたのです。
読み終えての最初の感想。
重い、確かにめちゃくちゃ重い。
率直にそう思いました。また読み直すべき本だとも感じました。
僕自身、会社の経営者ではありません。でも、自分の家族を「会社」と見立てれば”(共同)経営者”っぽい面はあります。
家族、家計をどのように築いていくか、を考え、実行する立場であるのは、確かですから。
バフェットさんの言葉にも確かあったような記憶があります。よい経営者だからよい投資ができる、よい投資家ならよい経営ができる。そんな言葉。
経営者は投資家と言い換えることができる面がたくさんある、この本を読んでいる途中に何度も感じたことでした。
この本からスゴみのある重さを感じた箇所を書き残しておきます。
「会社」と「ビッグバン」
本のタイトルに「企業」ではなく「会社」という言葉を選ばれています。「会社」という言葉への著者・石井さんの強くて熱い、重い想いを感じ取ることができます。
そして、その「会社」が生まれることを「ビッグバン」と表現されています。僕も二十数年前になりますが「会社」の「ビッグバン」に立ち会ったことがあります。確かにあれは「ビッグバン」だったのかもしれないな、と当時を思い返しました。
actuality
acutuality という言葉も非常に強く印象に残りました。
と表現されています。似た概念としてrealityも挙げられています。
actuality と reality とを分つのは「主観」の有無。realityは客観に拠る一方、actuality には「主観」「主体性」が必ずある。
対象に触れようとする意志がそれにはあります。
この記事でご紹介した、エディンバラのベイリー・ギフォードさんのコラムで示されていた言葉 ”Actual Investor"。
この言葉のベース、根底にも”acutality"があるのだ、記憶とこの本の読書からのインプットが即座にリンク、関連づけられました。
常識的感覚 common sense
投資家としてここ最近ぼんやりと考えていることをズバッと提示された感じでした。
「会社とは」という問いへの答えとして、めちゃくちゃシビれました。
「会社ってこうだよ、こうじゃなきゃ」というのが、常識的感覚 common sense であるべき、そう強く思いました。
市場 「しじょう」ではない、「いちば」
市場規模と書けば、誰しも”しじょうきぼ”と読むことでしょう。そこには、一つ一つの売り手、買い手との関係はなく、夥しい数の取引、数だけの蓄積が想起されます。
そうではなくて、一つ一つの出会い、ミクロを見つめることの大切さを再認識させられます。そこから「会社」は始まるのですから。
価値
数字に逃げ込むな。大事なのは主観、それを忘れるな。
この箇所を読んで、これは自分の家族経営にも関わってくると強く感じました。
自分の息子に伝えるべき「価値観」はどうあるべきか、そんな問いを授けられました。
「社格」「記憶」
ろくすけさんのこの記事が即座に思い起こされました。
ちょうど、そのろくすけさんがこんなポストを。
"actuality" を生み、育てるのは、こうした経験、実体験なんですよね。
こうしたプロセスから、会社の創っている「価値」を実感し、その存在意義、将来への可能性への妄想力が高まっていくのだろう。そう思います。
M&A戦略
僕たち投資家が株式や投資信託を買い付けるのも、一種のM&Aだと考えています。
「M&A戦略」という言葉には、損得勘定というか、数字になれば「買っとこ」というか、逆にいうと数字にならないものは「買う価値がない」という構えに思えるのです。
とりあえず数値さえ良ければ、よく見えれば、何を持つか、買うか、そんなことはどうでもいい、的な。
開発
株式投資、投資家という観点でいくと、どんな「価値」を自分の中に取り込みたいのか、関係者に加わりたいのか、参画したいのか、それを考えることが”開発”だと感じました。
そこにこそ投資家の役割というか責任というか存在意義というか、醍醐味があるのではないか、と感じながら、この「開発」のパートを読み進めました。
人材
子育てにも通じるように思いました。息子たちはどこで輝けるのか、輝きたいのか、それを考えるのが家族の経営者たる親のとても大事な務めだと感じました。
「価値」軸だけは、他人に預けるな
会社の経営者に限定されることではありませんね。本の終章を読みながら深く、しっかりと頷いていました。
「価値」軸、自分だけのものを持ってしっかりと「メンテナンス」せねば、とあらためて心に刻みました。
信義
冒頭、こう説かれています。
自分の家族を「会社」と見立てれば”(共同)経営者”っぽい面はあります、と述べました。僕がどんな投資判断するか、どんな資産を持つのか、それは「企業活動」に近いものがあります。その土壌となるのが「信義」。
長い時間軸で考えると、どんな資産を持つことが、誰に託すのかが「社会的に善いか」、それを意識していくことが「信義」なのでしょう。
今の自分は「信義」を、いくらか多少は意識できているようにも思っていますが、この意識を保ち、磨くことが大事ですね。
Kindleのマーカーの箇所はまだまだたくさん
この本、Kindleで読みました。そのため、本のページを実際にめくる、重みを感じる、そんなactualityの無いまま読み進めました。actualityがあれば、さらに多くの付箋でいっぱいになっていたかもしれません。
たくさんの数のブックマークがあるだけに、また読み直すことでしょう。
読み応えたっぷり、重厚感あふれる、重厚感の塊みたいな一冊でした。
この本と出会うきっかけをくださった楠木さん、奥野さん、著者の石井さんに深く感謝です。ありがとうございます。
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