"社会の問題解決こそ、企業価値創造の源である"を読みました。とても楽しかった。
京都大学の経営学講義シリーズと題されてから第4弾です。本の編著を手掛けられた農林中金バリューインベストメンツ #NVIC さんのご厚意で頂戴しました。
このシリーズは京都大学で開講されている講座にゲストとして登壇された企業経営者のお話の講義録です。
2019年の講座から、今回は
スリーエム ジャパン、コルク、三菱UFJフィナンシャル・グループ、東京エレクトロン、日本植物燃料、浜松ホトニクス
の経営者の皆さんの講義録が収録されています。加えて、NVICの奥野さんの講義、京都大学の川北先生の論考もあって、非常に読み応えがありました。
コルクの佐渡島さんのご講演、奥野さんの講義は、NVICさんのnoteでも読めます。
前回の第3弾もそうだったのですが、本の冒頭の奥野さんの「はじめに」がとても印象的でした。
「自社製品(原価は50ドル)によって、顧客の利益を1000ドル拡大するような提案ができた場合、その製品をいくらの価格に設定するか?」
本の一番最初に投げかけられる質問です。「企業の利益とは何か」というテーマです。利益は企業活動によってつくり出される価値を示しています。この後、奥野さんがこう断言されています。
先進国企業にとって「利益を上げる」という行為は、「モノを安く作った」結果ではなく、「顧客の問題を解決した」結果であり、顧客をより広く捉えるならば、「社会の問題を解決した」結果なのです。
この視点から、ご登壇の経営者の皆さんの講義録を読むと、東京エレクトロン、浜松ホトニクス、日本植物燃料のお話は強く印象に残りました。
営業利益率、スゴいですね。2019/3期は24%。
こちらも営業利益率(2019/9期)は17%。非常に高い数字です。
つくりだした価値がしっかりと認められているからこその数字ではないでしょうか。
東京エレクトロンの講義で出てくる公式です。
利益=自己実現(自分自身の仕事) x お客様からの評価(顧客満足度)
「利益=売価ー原価」という考え方と対比されています。
伊藤レポートのこのチャートを思い出しました。(下記のpdfの37ページ)
欧米企業とは利益率に大きな差があることを知って驚いた記憶がよみがえりました。この数字は2012年のもの。伊藤レポートが出たのは2014年。それから5年以上が経ちました。果たして、今どうなっているか、気になるところです。
非常に楽しい読書になりました。
最後の川北先生の一節がとても痛快でした。
投資理論は正しいし、切れ味も鋭い。でもすべての投資理論には前提がある。その前提を正しく理解して使わないことには、「何やらに刃物」になりかねない。
どの投資理論のことが俎上にあるのかはご想像できると思いますが、「えっ、何?」とお感じになったら、ぜひ本を手にとってみてください。
企業の価値をつくりだすのは人であること、それをどのようにつくりだすかという経営者の皆さんのお話は、毎回、たくさんの学び、気づきの機会になっています。
一度、ナマの講義を聴講したいな、と強く感じました。