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投資信託業界歴30年の父親が娘とその夫に伝える資産形成の本音の話 (著・今福啓之さん)

もうすぐ4月24日に発売されるのですが、星海社さんから頂きました。かなり長いタイトルですね。

著者の今福さん。本のタイトルの通り、投資信託業界の「中の人」。その業界で30年のキャリアをお持ちの今福さんが、ご自身の娘さん夫婦に「本音」を伝える、というのがこの本のユニークなところです。

自分の大事な家族の資産形成のアドバイスにはタテマエではなく本音。そりゃ、そうですよね。

今福さんのプロフィールです。

日興アセットマネジメント シニアマネージングディレクター
1990年、野村證券入社。支店営業、研修部、金融法人部を経て2000年にフィデリティ投信入社。2007年に日興アセットマネジメント入社。ピクテ投信(現ピクテ・ジャパン)執行役員を経て、2016年より再び日興アセットマネジメント。日本証券アナリスト協会検定会員。日本人にとって投資信託が当たり前の、いわば「衣食住・投信」のような世界を夢見て、様々な企画や資料作成、自社運営の投資啓発サイト「20年後ラボ」の運営などのマーケティング活動をチームと共に行っている。

”日本人にとって投資信託が当たり前の、いわば「衣食住・投信」のような世界” を、という想いをお持ちの今福さんの「本音」が31、述べられています。

ざっと並べてみると、こんな感じです。

はじめに
1 最初に結論、言っておく
2 夫婦2人で「本気の積立」をオープンに
3 預金でもいいけど、僕の20年は参考になるはず(前編)
4 預金でもいいけど、僕の20年は参考になるはず(後編)
5 預金でもいいけど、僕の20年は参考になるはず(完結編)
6 告白:僕の積立20年で実は後悔していること
7 アセットアロケーション? ――うーん。知らなくていいかな
8 「途中のリスク」と「最後のリスク」
9 基準価額って何?
10 信託報酬というコストの意味
11 基準価額は単なるモノサシですから
12 「口数」だから難しいんだよね
13 ずっと使える株式の知識(前編)
14 ずっと使える株式の知識(中編)
15 ずっと使える株式の知識(後編)
16 企業を応援? いやいや、そうではなく……
17 悪いけど投資に「複利効果」なんてないから
18 長期投資は「複利効果」のためでなく……
19 将来いくらあれば正解なんだろう?
20 年金は大丈夫? はい、大丈夫
21 じゃあ、どう増やしたらいいわけ?
22 納得ずく? 怖いんですけど
23 「もし5%で運用できたら」――そんな無責任な!?
24 皆が株式インデックスファンドでなくていい
25 株式ファンドの選び方(インデックスファンド・前編)
26 株式ファンドの選び方(インデックスファンド・後編)
27 アクティブファンドを擁護しようと思う
28 NISAをどう考えるか
29 じゃあどうする? 投資信託選びの具体策
30 どんな投資信託が”積立最強ファンド”なのか?
31 父から(ようやく)最後のお話
おわりに

星海社さんの上のページにある「試し読み」では、「6 告白:僕の積立20年で実は後悔していること」まで読めちゃいます。2割弱が「試し読み」出来ます。

この本で最も重要なメッセージの一つ。それは

焦って簡単に始めないことが大事です。

NISAは無期限の制度なのですから、いつ始めてもいつまで持っててもいいのです。

地上波民放の日中のそこそこ良い時間帯にまでNISAの話題が取り上げられているので、「焦り」を感じる人もいらっしゃるかもしれないな、と感じています。

今福さんがご指摘の通り、NISAは無期限になったので慌てて始めなくても良いと思います。最も避けたいのは、慌ててご自身にとって大きなお金を動かすことだと思います。

慌てずに始めた方が長続きする、僕はそう思います。株式投資で成果を得るには時間が必要だから、です。自分の資産に長い時間を与えるためには、早く始めることは確かに大切です。しかし、急いで始めたが為に長く続かないのであれば、結局、与えた時間は短いものになってしまいます。

いつ始めてもいつまで持っててもいい” 焦る必要はない。そう思います。

個人的に印象に残ったのは

8 「途中のリスク」と「最後のリスク」

17 悪いけど投資に「複利効果」なんてないから

です。


「途中のリスク」と「最後のリスク」

これは資産形成におおよその目標額を設定する場合のお話(普通は、そうなんですかね:なお、僕自身は特に設けていません)。いわゆる”出口戦略”のようなところでしょうか。

別の箇所になりますが、こうも書かれています。

目標金額が達成できたら、さっさとやめればいい

僕の考えは違いますが、こういう考え方もアリといえばアリかも、です。

「途中のリスク」「最後のリスク」ですが:

リスクをコントロール、リスクに晒されている資産の量を抑えることで極端に大きな変動を避けることはある程度可能。これが「途中のリスク」と捉えました。

「途中のリスク」で手堅くいきすぎると、目標とした出口、目的地(金額)には到着できない可能性もありますよ。これが「最後のリスク」。

こうしたことを考えると、どれだけリスク資産を持つのか、持てるのか、が重要ですので、そもそも投資に充てる金額、「入金力」がポイントになってくるんでしょうね。

悪いけど投資に「複利効果」なんてないから

「複利効果」という言葉がそもそも問題、おかしな表現なのかな、と感じました。

投資信託の文脈で僕自身もかなり長い間、誤解していました。

この本の154ページに

分配金を再投資するかどうかは、投資における複利効果とは別次元の話

というフレーズがあります。「複利効果」を正しく捉えることの難しさを実感しました。

アクティブファンドを擁護しようと思う

アクティブファンドについて書かれた27個目のセクション。

一般的な指数(ベンチマーク)には縛られずに、ファンドごとに自ら定めた「コンセプトにだけ縛られる」ファンド

という定義で コンセプトファンド というコンセプト、概念が提示されています。今福さんの造語だそうです。

コンセプトファンドを

これこそが株式投資の本来の姿

と表現されていますが、僕もそう感じます。僕自身、なんでもかんでも「アクティブファンド」で一括りになっている現状を憂いているので、共感しました。

本の感想、ご紹介はここまで、です。

ご興味をお持ちになったら覗いてみてください。

最後に。今福さんの所属される日興アセットマネジメントさんのページを眺めていたところ、こんなメッセージがありました。

「儲ける」という言葉は、投信に馴染まない

株とか市場とかいうと、昔から「儲かる」「儲ける」という表現を使いますよね。でも私達はお客様に、投信やETFを使った運用に「儲かる」という言葉を使ってほしくないんです。だから私達社員がこうしてお客様にお話をする際にはその言葉を使わないぞ、と決めているわけです。
単なる言葉遊びと言われたらそれまでですが、「儲ける」って日本語には、やはり「あぶく銭」のニュアンスが漂いますよね。だとしたら、私達は儲けるための道具を作りたくはない。そうではなく、いつか「あぁ、あの時勇気を出して踏み出してよかった。そのきっかけをくれたのは日興アセットだったな」と思ってもらいたいんです。

今福さんのメッセージでした。「当たり前」になってこそ長く続けられる、長く持っていられる。そういうことなんだろう、と思います。

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