「I love you./only you」+「 I miss you./without you」
今回は以下の記事の続きです。
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私の大好きな「あなた」という言葉には、大雑把に言って二つの表記と語義があります。
・「あなた」:彼方・かなた・あなた。「あなた」=you。
・「あなた」:貴方・あなた。「あなた」=over there。
図式的に言うと、上のようにまとめることができます。
・近くにいる「あなた」
・遠くにいる「あなた」
というふうに、あっさりとも言えそうです。
・「I love you./only you(貴方)」+「I miss you./without you(彼方)」=「あなた」
今回は、上のような話をします。 いろいろなフレーズが出てきますが、以下の目次を見て全体をつかんでいただくと、わかりやすいと思います。
*三音節
you は I love you. という連なりの中でいちばん美しく、しかも情味あふれる音と旋律を醸しだすような気がします。
you だけじゃなくて、I love you. です。三音節であることに注目したいです。「あなた」と同じく、三音節なのです。だから、歌いやすい。
I love you. と口にしてみてください。
次に「あなた」と言ってみてください。
その両方に、相手へのいたわりを感じませんか? 「愛しいあなた」みたいに。
英語の歌で I love you. とあったら、そこだけ「あなた」と替え歌にするのも面白いかもしれません。あるいは、逆に日本語の歌で「あなた」と歌い上げている部分を I love you. とするとか――。
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*「あなた」=「I love you.(愛しいあなた・貴方)」――。
これでは「かなた・彼方」の意味がすくえません。
*「あなた」=「I miss you.(目の前にいないあなた・彼方)」「without you(目の前にいないあなた・彼方)」(いずれも三音節で歌いやすい)――。
これでは、「かなた・彼方」だけになってしまいますが、同じく三音節の「only you(あなた・貴方だけ)」があったのに気づきます。切なく、味のあるフレーズです。
まとめます。
*「あなた」=「I love you./only you(貴方)」+「I miss you./without you(彼方)」
いずれも三音節で歌いやすいので歌詞に多用されていますが、個人的には、やっぱり「あなた」が好きです。
*you
以下は、あくまでも個人的な印象です。
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*I love you.
三音節ですが、三単語なので各語の自己主張が強く、you だけが突出する感じはしません。むしろ love のほうが強い。はっきり、相手に「愛」を伝えるフレーズだという気がします。言わずもがなの you は、主役である love の陰に控えています。
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*I miss you.
これも三音節、三単語ですが、miss の「 i 」が哀しく響きます。ss と you がどうしてもつながって発音されるでしょう。you にすすり泣くような翳りがかかる感じ。このフレーズは、歌うよりもささやくとか、つぶやくためにあるような気がします。
I miss you. と口にするとき、相手は目の前にいないはずですから。もちろん、I'll miss you. (会えなくなりますね)、そして I missed you. (会いたかった)となると、相手は目の前にいるはずです。
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*without you
前置詞が you を際立てます。you を歌い上げる助走のようです。じょじょに高まる感じ。弱強強と盛り上げていきます。
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*only you
これも you が際立ちます。強弱強といいリズムです。切なく響いて捨てがたい味があります。
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このように見てくると、without you と only you における you の音としての存在感がくっきり立ちあらわれるようで興味深いです。その感じがよく出ている楽曲を紹介します。
*楽曲
I love you. の出てくる楽曲はきわめて多いので、without you と only you に的を絞ります。
なお、I miss you. の出てくる歌は頭に浮ばないので割愛します。
(ところで、ずばり You というタイトルの曲もありますが(カーペンターズ)、you を音として、あるいは旋律として歌っている感じではない気がします。)
まず、without you から見ていきましょう、というか聞いてみましょう。私は重度の中途難聴者なので、字幕を見ながら記憶をたどっての視聴になります。
*without you の出てくる歌
三音節の without you は「アウ」が you の直前にあるためか、音の響きが明るい感じがします。意味は寂しく悲しくても、音でメリハリが出ているかのようです。
without you をタイトルにしたり、このフレーズがサビとなっている英語の歌はきわめて多いです。
私はマライア・キャリー(Mariah Carey)の Without You しか知らなかったのですが、これはカバーなのですね。たくさんの人がカバーしているうちの一つなわけです。今回、動画の検索をしていて知りました。
*only you の出てくる歌
only you というフレーズのある歌詞もたくさんありそうなので調べてみると、あるわあるわ、その数の多さにびっくりしました。
you だけで旋律に乗せるのは難しいから、only をつけて on・ly you としてみる。すると、 with・out you と同じく三音節になり、リズミカルで語呂がいい。意味的には「あなただけよ」というふうに感情が高まる――。これは勝手な解釈ですけど、そうなら素晴らしいアイデアですね。
特に好きなのは、プラターズ(The Platters)の Only You です。曲が始まっていきなり高音のサビで Only you と来るのですから、ドレミファドンでは、瞬間的に分かる人が続出するのではないでしょうか。印象的な出だしです。
歌詞と旋律の乗り具合が絶妙で聴いていてうっとりします。補聴器をした耳で、記憶を頼りに聞いているのですけど、出だしのあたりは記憶の音なのか、聞いている音なのか、わからなくなるほど鮮明に頭の中で鳴っています。
歌詞がいいですね。泣けてきてたまりません。
ゆっくりと進む各音節と各音階が見事に一致していて、音節と音階とが擬態しあっているかのようです。文字として見ると、意味の作りがよくわかります。韻も踏んでいます。
歌詞全体では、A⇒B⇒Bと、大きなブロックが二回くり返されますが、単調な印象はありません。説得力のある歌唱に、ただただ圧倒されます。
*「サン・トワ・マミ」
「サン・トワ・マミ」、sans toi ma mie 「私の恋人よ、あなたなしでは……」(四音節)という意味のフランス語の歌も取り上げたいです。
ちなみに、この ma mie は女性です。もとは男性の歌う楽曲なのです。
サン・トワ(=without you)だけでは二音節で間が抜けて聞こえませんか? マ・ミ(私の恋人よ)という二音節をくっつけたところが、実にうまい、なんて勝手に思っています。
上で述べたように、これはもとは女性に振られた男性が嘆いている歌なのですが、日本では岩谷時子訳の歌詞を越路吹雪が歌って大ヒットしました。名曲「サン・トワ・マミー」です。
元歌の Sans toi ma mie はアダモ(Salvatore Adamo)が19歳のときに作詞作曲をして歌った曲だそうです。当時の動画を見ると、淡々とした歌い方ながら説得力を感じます。「僕、泣かないよ」という感じの表情がいい味を出していますね。
*I love you.
記事が長くなってきたので、体調を考慮して、この曲で締めくくりたいと思います。
I love you. が出てくる歌で、私がいちばん好きなのは、ビートルズ(The Beatles)の Michelle です。
以上の三箇所がサビだと思うのですけど、 真ん中のサビで I need to と変化を持たせているところがうまいと感じます。I need you だと必死すぎて、ややみっともない気がしないでもありません。
I love you は定番ですし、I want you はストレートで、ポール・マッカートニーの声で歌われるとぜんぜん強引でも、いやらしくも響かない気がします。
いい曲ですね。大好きです。
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