「すごい。」 俺は目を疑った。これではまるで参加アーティストではないか。
今年、始まったもののすでに3月末でクローズされてしまったBiennale of Sydney。コッカトゥアイランドで行われるこの展覧会はサーキュラキーからフェリーで島に向かうことになる。なかなかおしゃれな時間だ。
個展でバタバタしていたので行けないままになっている。展覧会自体は6月までの予定だったのだが、それまで再開は無理だろうな。残念。
数年前のこと。
隔年で開催されるこの展覧会、思いもせぬ良いことがあったので聞いてほしい。
さて、この島には何度も来ているのだけども、なんというかザックリ感がいちいちカッコいい。スクールホリデー中とはいえ平日はまあまあ空いていて、ひとつひとつゆっくり観れていいかんじだった。土日ならごったがえしているはずだ。
でっかい空間にでっかい作品がゆうゆうと展示されている。それらをゆっくり観て回るのはなんとも気持ちいい。
できれば自分もやってみたいと、気持ちをかきたてられる。
日本人のアーティストの作品も毎年何人か入選しており、それを探してみるのも楽しみの一つだ。海外で生活していると、日本人の世界での活躍を肌で感じられるのはそれはそれは嬉しいものである。
と、その展示ルートに従ってある建物に入ると、見覚えのある、というか、確実に覚えている壁が目に入る。
アンジェリーナ・ジョリーが監督したUNBROKENという映画の仕事でこの島に来て、友人2人と一緒に、セットの一部となるこの壁を仕上げたのだ。それがまったく手を加えられないまま、そのまんま残っている。
アンジェリーナ・ジョリーのUNBROKENと言えば反日映画として公開前から大炎上した映画である。しかし実際に観てみると炎上内容ほどの酷い反日描写はなかったと思う。いい気分になることはないだろうが、炎上内容には事実と異なる部分が確かにあった。後味のよくない気分だったのを覚えている。
「すごい。」
壁を前にして声がこぼれた。
これではまるで参加アーティストではないか。
もちろん俺ら3人の名前はこのビエンナーレのカタログには載っていない。しかし他の作品たちと同じスペースで、観客が同じように作品?が閲覧できるのだ。議論の必要もない。
いやあ、まさか、20回目の記念すべきエクシビションに参加できるとは夢にも思っていなかった。それもこれも応援してくださっているみなさんのおかげである。有難い以外のなにものでもない。
毎日こつこつ頑張っていれば
神様もちょっといいいたずらをしてくれるのだ。