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本の感想55『サピエンス全史(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ

義務教育の一環としてユヴァル・ノア・ハラリの本を読み込むようにしてほしい。と、思うくらい、彼の本は目を開かせてくれる。

家畜化は惨めか、成功か?

人間によって家畜化された動物として、羊や豚や牛や鳥などがいる。1万年前には、大陸上にはせいぜい数百万頭の羊やニワトリや牛しかいなかったが、今日の世界には羊が10億、豚が10億、ニワトリは250億羽以上いる。より広い範囲に分布した大型哺乳動物の順位としては、

一位 ホモサピエンス
二位 家畜化された牛
三位 家畜化された豚
四位 家畜化された羊

となる。こうみると、農業革命というのはこれらの種からしたら素晴らしいことのように思える。しかし、種の「成功としての視点」はどうだろう?

例えば牛は生まれてからすぐに親と離され、自分の体と対して変わらない大きさの檻に収納され、そこで一生を送る。他の子供と遊ぶことや、歩くことも許されない。初めてたくさん歩けるのは、食肉処理場に向かう時だ。彼らは種の繁栄と継続という意味では成功したかもしれないが、地球上で一番残酷で惨めな生活を送らされている。

過去には攻撃的な個体や好奇心旺盛な個体もいたかもしれないが、人間はそういった個体を許さない。家畜化する上で、不都合だからだ。だからそういった言うことを聞きづらい遺伝子はだんだんと消滅していった。

穀物に家畜化される人間

人類は進化の過程で、米や小麦などを管理するのに成功したように見える。実際に、今日の世界の人々はそれがために飢える人が少なくなった。生物学的貧困線は乗り越えたともいわれている。

さて、「種」の成功とは、(狭い視点で見ると)この私たちホモサピエンスのように繁栄することにありそうだ。地球が生まれ、生命が誕生してから、いかにDNAを複製できたか?が種の成功の一つの視点だ。

そう考えると、小麦や米は種として、この地球上で、大成功を収めている。人間の手によって大繁栄をもたらし、健康を管理してもらい、一定の数以上が育成され、彼らのための(農)薬や栽培法が数多く見出されている。何という大サービスだ!人間が時間と人数と技術を惜しみなくつぎ込んでくれる幸運な種といってもいい。そのおかげで、彼ら小麦や米という種はこの地球上に一定の個体数や彼らのための面積を確保するのに成功している。

彼らが、人間を家畜化したといってもいいんじゃないか。




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