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本の感想7『明治の人物像』星新一

本の紹介

本を読み始めたきっかけは何か?と問われると、小学校の時に出会った星新一のショートショートだと言える。本を読む習慣を作ってくれた星さんには本当に感謝しかないと思う。

さて、今でも星さんのファンであり、ショートショートが好きで定期的に読んでいるが、それに劣らず星さんの長編も好きだ。『声の網』『人民は弱し 官吏は強し』など名作が多く、今後紹介すると思う。

今回の『明治の人物像』は、星新一版の「自助論」だ。自助論とは、スマイルズという人が書いたもので、人生の成功への心構えや科学の発達史などを膨大な具体例を用いて説いていく本。啓発書というものの最初期のものにして、至高のものであると思う。

ちなみにこれを日本で初めて訳したのは中村正直という人。

さて、この『明治の人物像』の中では野口英世や伊藤博文、エジソンなどそうそうたるメンバーが紹介されている。その中において、自助論を約した中村正直を第一番目に置いてあることからも現代日本版の「自助論」的な一冊を書こうとしたであろうことがわかる。

星さんは、日本の明治に活躍した日本人たち(エジソンは例外)がどのようなことを行い、またどういう心持ちでいたのかということを書くことで、日本の人々に向上心や勉学への意欲といった「自助の精神」を植え付けようとしていたのだ。

また、政府などから不当な扱いを受けてきた父、星一への慰みの気持ちも伝わってくる。星一はさまざまな苦難に陥りながらも、めげることなく事業に取り組み人々の役に立とうとした。そんな星一の精神を支え続けたのも、自助論なのである。

さて、『明治の人物像』は各々楽しんでいただくとして、ここからは本家『自助論』の中の名文を紹介していきたい。あなたの人生の支えや励まし、モチベとなるとともに、具体例を用いて文を書くことの大事さを教えてくれる。

自助論

「一国の価値は、つまるところ、それを構成している個人の価値に他ならない。」
「政治は国民の個性の反映。人民の水準が高まらない限り、国は良くならない。また、社会悪と呼ばれるものの大部分は、人々の堕落した生活が生み出したものである。」

政治の腐敗も、個人個人の無関心や教養のなさが生み出してるといえる。

「歴史上、人類の進歩に尽くした人物は数多くいる。しかし、それは特殊な人たちではない。貴族や金持ちの家に生まれた人たちが、それを成し遂げたのではない。低い身分、貧しい家から優れた人材のであることが多い。」
「生まれながらの富は、人に向上心を生み出さない。」
「地動説を唱えた天文学者コペルニクスは、ポーランドのパン屋の息子だった。地動説に感動し、それをさらに研究し惑星の運動法則を発見したケプラーは、ドイツの貧しい居酒屋の子に生まれた。それに触発され、万有引力を発見したニュートンはイギリスの農民の子だった。」

偉大な人々の多くは、貧困から身を起こしている。貧乏やお金がない、は言い訳にならない。あるいは、「何を始めるにもいつからでも遅くない」「出身がどこだろうが関係ない」と勇気づけてくれる。

ちなみにシェイクスピアも、確かなことは分かってないけど馬を扱う仕事をしてたんじゃないかとか、船乗りだったとか言われてる。

「医師のジェンナーは、ヒントを得てから20年以上友人たちにバカにされながら観察と実験を重ね、種痘を確立した。」
「音楽家のハイドンは「問題を取り上げて追及することが大事だ」といい、モーツァルトは「仕事が最大の楽しみだ」としばしば他人に語り、ベートーベンは「力行と勤勉なる才能にとって、ゆきどまりはない」との言葉を好んだ。」
「不運を嘆く人は、自己の怠慢、不始末、不用意、不勉強の結果に他ならない。」

天才は、努力を努力と思わないと言われるが、まさにそれを肯定してる。楽しいこと、やりたいことを時間や費用を惜しまず続けられる人が最強であり、その分野で秀でることができる。自分にとっては習慣で当たり前のことを、周りが見ると努力しているというのは良くある。

継続し続けるところに、停滞はない。


さいごに

努力なしに何かを成し遂げられるものはほとんどいない。しかし、逆に言えばどんな生まれだろうが努力次第で自分をどんなところへも導いていくことができる。

いま、好きで何かを続けている人は、世間体などを気にせず走り続ければいい。また、失敗しても工夫に工夫を重ねればいいのだ。というふうに、励まされる一冊だ。

神は、自ら助くるものを助く。








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