本の感想19②『こころ』夏目漱石
※自分勝手な考察回。
Kは先生に対してどのような気持ちだったのだろうか。
彼は、「自分は薄志弱行でとうてい行先の望みがないから自殺するだけ」という簡素な内容の手紙だけ置き残した。お嬢さんの名前はもちろん、先生の裏切り行為?の内容も一切書いてない。先生に対して親切にすら見える。
しかし、俺は推理(というかこじつけ)する。
Kは、先生に復讐する意味も込めて自殺したのだと!
その証拠をこれからあげていきたいと思う。
※信じるか信じないかはあなた次第の考察回です
世間体での先生ではなく、先生の精神を殺そうとした
先生の性格について、人付き合いが苦手なKも少しは知っていただろう。悩んでしまうであろうところを見越して、世間体で殺すよりも、今後一生苦しむように、わざと今回のようなシチュエーションを選んだのではないか?これを前提として、肯定していく論を展開していく。
裏切りを知らせる手紙を書いても、「私」が真っ先に見つける可能性が高い
Kとの部屋は隣あっていた。何かが起これば真っ先に気づくのは先生だ。当然、遺書も真っ先に見つかってしまう。これまで卑怯な行為があり、かつ気持ち隠し通し、さらに自分の気持ちを弄んでいた(と思える)アイツが、そんな手紙を隠さないことがあるか?いや、隠すに決まっている。破られ、捨てられ、新しい遺書すら書きかねない。だったらそんなことをしても意味がない。
「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」
(↑先生がそのまま返した、Kの言葉)
これにより、手紙の内容はチャラ。裏切り行為の内容が書いてなかったからといって、先生を恨んでいなかった理由としては使えない。
お嬢さんを取られたと知った時、すぐ死んでもいいはず
自殺の理由を、本当に「自分自身の弱さ」としているのなら、知った当日中に死んでいてもおかしくはない。
Kは、お嬢さんが取られてしまったことを、実は奥さんから聞いていた。その後2日間、先生に会っても態度を変えず超然としていた。気づかれないようにできる彼は大したものだと先生も思っている描写がある。
そして死ぬのはその次の晩になるのだが、たまたま先生が西枕にしていた時だ。枕といい、この謎の数日間の空きといい、タイミングを伺っていたように取れないだろうか?
部屋の仕切りの隙間が、いつだかの晩と同じくらい空いていた
これも、Kから先生に対するメッセージのように思える。挑戦のように見える。「さあ、君が最初に見つけるんだ」と。
Kは、お嬢さんを心から愛していた
学問に取り憑かれるくらい精進していた、修行僧のようなKであったが、お嬢さんを好きになってから彼の価値観も変わってきたように思える。
覚悟、–––覚悟なら無いこともない
これは、先生に、お嬢さんに対して聞かれた時に独り言のように呟いたKの言葉だ。今までの全てを捨ててでも、お嬢さんを取りたいという気持ちがわかる。世界に対する考え方が変わったと。それを裏切りの形で取られたのだ!
これが何よりの理由になる。
まとめ
どうだったろう。こじつけすぎて全然分からんわと思う人が多いのは知ってる。結論、こういうのもおもしろいでしょ、という話。
「推理」とか「仮説から証明していく」行為って、こんなんで良い。こじつけから始まる発見や、面白い考えは本当に多くある。
例えば桃太郎の鬼は外人説。
・異国に対する攘夷思想の物語じゃないか?
・体が大きくて未知である外人に怯える話じゃないか?
・鬼ヶ島=海を挟んだ異国。
・鬼は顔が赤い。外人は肌の色が違う。(あるいは酒を飲むと日本人より顔が真っ赤になる。)
・退治=良いこと
みたいな。仮説し、それをこじつける作業や文献集め、というのは真実を見つけるものとして実は良かったりもする。想像力が働いておもしろくもある。フロイトが、モーセは実はエジプト人なんじゃないかということを説いてるのも、今回の俺がしたことと本質的に同じことだ。
(ジークムント・フロイト『モーセと一神教』)
最後にひとつ名言。
捜査というのは、決めつけてかかり、間違っていたらごめんなさいでいいんです。 ニア(デスノート)