本の感想40『命売ります』三島由紀夫
一度何もかもを捨ててしまえれば、人生とてつもなく楽になるだろうなぁ。何事にも動じなくなるし、どんな行動だって悩むことなくすぐできる。
この小説の主人公は、一度自殺に失敗してから、自分の命を文字通り「売る」ようになった。新聞に広告を出し、自宅アパートに「命売り出し中」の看板をかけ依頼を募集するようになったのだ。いろいろな変わった依頼を受けるが、どれもこれも命を落としていてもおかしくない内容。にも関わらず、天命なのか毎度のように生き延びる。
彼に持ち込まれる相談は、吸血鬼の相手や大使館への乗り込みなど、どれも普通に生きていては体験できないようなもので、どれもがスリルや新鮮さに溢れている。「命が惜しくない何でも屋」というのは、たしかに強い。おかしな案件が集まるだろう。
全てを放り出してみると、面白い体験ができる。これは、けっこう真理かもしれない。常識に囚われていては経験できないこと、たどり着けないものがこの世には多すぎる。
全てを投げ出す意外にも非常識な体験ができる方法があって、それがメンタルを最強にすることだと思った。しばらくは後者をがんばってみたい。