本の感想52『ご依頼の件』星新一
本から派生していくつか。
出現は人間の思念から
UFO、幽霊、神などは、人間の思念が出現させたのではないか?
どこかで空飛ぶ円盤が目撃される。見たいという欲求、需要があちこちに生まれる。すると偽物を作り出す人や、飛行機を見て勘違いしたり、存在を信じすぎて脳内で作り出すなどなど、あちこちに出現していく。
それからは、いくつか共通点が語られ特徴も形作っていく。具体性や真実性が増してくる。こうなると、実際に存在しているかどうかはもう問題では無い。少なくともUFOなるものはこの世に生まれてきてしまっているのだ。
たしかに飛行機も、人が空を飛びたいという思いから誕生した。人語を話すロボットもいる。これらは霊的なものでは無いのでちょいズレたが、ある言語の本では、モノはことばや需要、人々の思いから生まれると書いてあったのを思いだした。
妖怪や幽霊、UFOは、人間の思念から生まれる。
需要があれば「それ」は供給されるのだ。
偶然を装った事件
世間の至るところで、悲惨な事故が起こる。不注意から起こる事故は多いし、それらが大半を占めているだろうけど、偶然を装った故意的な事件の存在はどれくらいの割合なんだろう。もし仮にあるとして。
仮にそういったことを裏で操る組織や、そういったことを専門とする集団がいるのであれば、結構頻繁に行われてるんじゃないだろうか。そのような組織が金と技術と脳味噌を使って用意周到に計画し実行すれば、100%疑いようの無いくらい自然な事故と思わせるのは難しくなさそうだ。
「自然な事故として誰かを傷つける、あるいは殺す」ことの需要は大いにありそうな世の中だもの。
存在意義
この本の中に、「出現したやつ」というショートショートがある。ある男のところに、幽霊みたいなのが出現する。目撃した男は、出てきたからには何か意味があるのだろうと一生懸命考える。
消え際に、そいつが「意義があって存在してるばかりとは限りませんよ。わたしとか、あなたとか、」と捨て台詞を吐いて消えていく。幽霊は「存在意義が無い存在」であったのだ。
存在意義のない幽霊というのもあって良いだろう。まず、これがユニークでおもしろい。男は、何か意味があると決め込んで疑わない。疑えない。
そもそも、「存在意義」なんてのもまやかしだ。地球上に生命が生まれて以来、長い年月をかけて偶然にもみんな生まれてきてるだけなんだから、そこに本来意味は無い。「存在意義」という、本来無いものを見つけようとするから人は苦しむ。存在意義があるものなんてない。
例えばある社長がいるとする。彼は今この瞬間会社や社員や家族の世話をしていて、そこに「存在意義的なもの」があるように見える。しかし、その社長は生前からそれを背負って生まれてきたのでは無い。
あるいは、仕事を投げ出してしまえば、周りから思われているであろう「存在意義」らしきものは、ほら、簡単に消えた。そこからパチンコにはまれば、その店の経済を回すのが彼の新しい「存在意義」とでもいうのか?「存在意義」なんてこんなもんだ。
悪魔
悪魔や死神の類がいるとしたら、よくある黒マントに鎌みたいないかにもってやつではない気がする。だって一目で存在を教えてくれて親切だもの。鎌で一思いに殺されるとか、どっかに連れて行かれるとか、分かりやすい。やつらがそんなに気の利く存在であるはずがない。
だから、本当に存在してるとすればもっと身近で偶然的で巧妙なはずだ。例えば、金持ちの老人を装う。財布を落としたフリをして拾わせ、お礼をするといって生活に困らない金を送る。一生暮らせる分だと。
実はそれが命のタイムリミット。一生暮らせる分=使い果たした時が一生の終わりだぞ、的な。
この方が死神たちは楽しめるし、人間からしたらタチが悪い。